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ハスキル(Clara_Haskil)|ショパン:ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 作品21
ショパン:ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 作品21
(P)クララ・ハスキル:イーゴリ・マルケヴィッチ指揮 コンセール・ラムルー管弦楽団 1960年10月3日~4日録音
Chopin:Piano Concerto No.2 in F minor, Op.21 [1.Maestoso]
Chopin:Piano Concerto No.2 in F minor, Op.21 [2.Larghetto]
Chopin:Piano Concerto No.2 in F minor, Op.21 [3.Allegro vivace]
僕は悲しいかな、僕の理想を発見したようだ
![](../Jacket_record/Clara_Haskil/Haskil_Chopin_Piano_Concerto_No2_Markevitch_60.jpg)
ナンバーリングは第2番となっていますが、ショパンにとって最初の協奏曲はこちらの方です。
1829年にウィーンにおいてピアニストデビューをはたしたショパンは、その大成功をうけてこの協奏曲の作曲に着手します。そして、よく知られているようにこの創作の原動力となったのは、ショパンにとっては初恋の女性であったコンスタンティア・グワドコフスカです。
第1番の協奏曲が彼女への追憶の音楽だとすれば、これはまさに彼女への憧れの音楽となっています。
とりわけ第2楽章のラルゲットは若きショパン以外の誰も書き得なかった瑞々しくも純真な憧れに満ちた音楽となっています。
「僕は悲しいかな、僕の理想を発見したようだ。この半年というもの、毎晩彼女を夢見るがまだ彼女とは一言も口をきいていない。あの人のことを想っているあいだに僕は僕の協奏曲のアダージョを書いた」
友人にこう書き送ったおくように、まさにこれこそが青年の初恋の音楽です。
- 第1楽章 Maestoso
- 第2楽章 Larghetto
ショパンが恋心を抱いていた、コンスタンツィヤ・グワトコフスカへの想いを表現されている。まさに「初恋」の音楽です。
- 第3楽章 Allegro vivace
ときには情熱的であり、時にはファンタスティック
この録音と初めてであったのはつい最近のことで、それも中古レコード店をまわっていて偶々であったのでした。ハスキルと言えばモーツァルトというイメージがあまりにも強くて、ショパンなんて録音していたんだ!という物珍しさですぐに買い込んできました。
確か500円か600円くらいだったと思いますから大した買い物でもありませんでした。
ところがかえってから入念にクリーニングをして再生してみると、音質、そして言うまでもなく演奏の方も素晴らしくて実にいい買い物でした。
ちなみに、レコードのクリーニングは私の知り合いが開発したクリーニング駅を使っています。これが実に優れもので、皆様にもお薦めです。
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レコードのために生まれたクリーニング剤 OYAGシリーズ
そして、もう一つ驚いたのが、
このショパンの録音が結果としてハスキルのLast Recordingになってしまったと言うことです。(そうか、同じ年の11月14日と18日にモーツァルトのコンチェルトを録音していたか・・・。まさになくなる直前の録音だったのですね)
何故ならば、同じ年の12月6日にブリュッセルの駅の階段で転倒した際に頭を強く打った事が原因で急死してしまったからです
ですから、ハスキル本人もこれがラストになるなどとは夢にも思っていなかったでしょう
12月1日にはパリのシャンゼリゼ劇場でアルトゥール・グリュミオーとヴァイオリン・ソナタのリサイタルを開いていますし、その次のリサイタルはブリュッセルで予定されていて、そこに向かうための移動中での事故だったのです。
まだ60代半ばのころでしたから、まさに、現役のピアニストとして十分に活躍しているさなかでの急死でした。
ですから、この演奏からは「衰え」のようなものはほとんど感じません。
何よりも素晴らしいのは、その滑らかな運指によって紡ぎ出されるファンタスティックな世界です。聞くところによると、ショパンはピアノ譜にのあちこちに自分なりのフィンガリングを指定していて、ハスキルはその特殊なフィンガリングにかなり忠実に従っているらしいのです。ただし、これは他人からの受け売りなので、自分の耳ではフィンガリングがどうなっているのかを聞き取れるほどの能力はありません。
しかし、第2楽章のファンタジーは、コルトーの古い録音以外でもそれに十分匹敵しうる演奏があるんだと言うことを教えられました。
また、ハスキルというと、控えめな打鍵で繊細に音楽を紡ぎ出していくという勝手なイメージを持っていたのですが、このショパンではかなり強烈な打鍵を繰り出している宇分もあって、かなり情熱的とさえいえる場面が多々表れます。
ついでながら、ハスキルは協奏曲を演奏するときは、あらかじめピアノの独奏部だけを指揮者に聞いてもらい、自らの意図を十分に理解してもらえることを前提として演奏会や録音にのぞんだそうです。
ですから、ここでもマルケヴィッチはそう言う時には情熱的であり、時にはファンタスティックであるハスキルのピアノのサポートに徹底しています。もっとも、この協奏曲でオケが目立とうとしても出来ることはほとんどないのですから「オレが、オレが!!」という場面は作りたくても作れません。
しかし、そう言うレベルの話ではなくて、明らかにマルケヴィッチはこの偉大なピニストへの深い敬意を持って完璧なサポートを行っています。
どうやら、ハスキルと言えばモーツァルト等という狭い先入観は捨てて、彼女の持つ広いレパートリーにももう少し目を向ける必要があるようです。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
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よせられたコメント
2020-06-20:yk
- ハスキルのLast Recordingは、同年11月に行われた同じくマルケビッチとのモーツアルトの協奏曲(20,24番)ですね(・・・yungさんも同録音の紹介でソウ記載されています)。
ダイナミックで少々荒々しいマルケビッチとの共演は優しく繊細なハスキルには似つかわしくない・・・・と言う意見が、昔一部にはありましたが、私はこれら最晩年の演奏も大好きです。モーツアルトでも、ハスキルはマルケビッチとの共演では、それ以前の録音ではあまり聴きなれなかった強い打鍵の表情を見せることが有りますが、それがダイナミックなマルケビッチに誘発されたものなのか、或いはハスキルの新境地なのか、は判りません。しかし、いずれにしても彼女が晩年のこれら一連の"Last Recording"においても、繊細なだけの小さな世界に閉じこもっていた訳ではなく、なお力強く自己を外の世界に向けて表現できるヴィルトォーゾ・ピアニストと言う巨人族に属していたことがよく分かる記録だと思います。
ハスキルの写真の中に、彼女の手の写真があります(https://1.bp.blogspot.com/_63ubahGk99A/TBszby3A0bI/AAAAAAAACHQ/j6m7x_F-Tf8/s400/ClaraHaskilshands.jpg)。大きくて如何にもしなやかそうな手は、ピアニストには理想的に見えます。リパッティが彼女の練習に立ち会ったとき、普通のピアニストは両手に分けて弾く幅広い打鍵を要するところを彼女がやすやすと片手で弾いたのを見て感嘆、「クララ、そこを片手で弾けるなんてすごい、普通は両手に分けてしか弾けない・・・」と褒めたら、ハスキルが二度とソコを片手では弾かなくなった・・・・と言う逸話を聴いたことが有ります・・・・如何にも、そんなこともありそうな手ではあります。
2021-07-01:ほんのむし
- 畠山陸雄さんによるハスキルの伝記を読んでいます。4歳のとき、ブカレスト音楽院の教授のところへ連れて行かれて、モーツァルトのソナチネを聴かされて、初めて聞いたその曲をただちに再現した、しかも転調して、とか、8歳のときにウィーンで初の協奏曲公演としてモーツアルトの23番を弾いて高い評価を受けたとか出ています。が、本格的にモーツアルトに取り組んだのは40代になってから、といった表現も出ています。また、キャリアの中でも、ステージ恐怖症をかかえながら、協奏曲には多く取り組んでいますが、ベートーヴェンの3番と4番、シューマンのもの、ショパンの2番、モーツアルトの9番、13番、19番、20番、23番、24番、27番ばかりが繰り返し、取り上げられています。22番は2回、15番、25番は1回きりか。バッハの幾つかの協奏曲、そしてラフマニノフの2番もわずか。他方、ベートーベンの5番は一度も出ず、ショパンの1番も2回ほど、ブラームスの2番も1回きり。パリで学んだことから、サンサーンスの4番、5番とかファリャとかもありますが、今のようにメディアも少なく、録音が盛んでなかった時代の特徴なのか、彼女が圧倒的評価を受けたのが遅れたせいもあるもしれません。シューベルトの2曲のソナタがレパートリーに入ったのも、50代になってからのようです。
テクニックとかミスタッチとか問題となると、現代の演奏家のほうが決まっていると思いますが、ピアノを聴きたいとなると、とりあえずハスキル、となってしまいます。刷り込みのせいもあるんでしょう。何十年の前の録音を30数年にわたって、百回以上聞いてきましたが、たとえミスがあっても、彼女の思いが万全に表現できますように、と思ったり、うまく行った、すばらしいと思いながら聞くなんて、まあ、好きなんでしょうね。
その伝記を読むことで、病気がちで、貧しい生活を強いられながら、それを何も感じさせないピアノへの献身、支援者の輪、リパッティとの尊敬や愛情に基づく交友、共演した指導者、演奏家、指揮者たち、コルトー、カザルス、マガロフ、バックハウス、グリュミュオー、アンセルメ、フリッチャイ、マルケヴィッチ、シェルヘン、モントゥー、カラヤン、クーベリックなどの横顔なども垣間見られて、演奏家の人生というものについて、いろいろ考えさせられました。(クララより2歳下で同門で小学校も同じだったセルの腕白ぶりというも、わずかですが、出ていました)
あと、もしよろしければ、モーツアルトのヘ長調のソナタもアップしていただければ幸いです。タッチの柔らかさ、しなやかさと深さが、よく聞き取れる演奏です。
2021-07-06:ほんのむし
- 先日投稿したうち、不正確な部分がありました。ハスキルが、モーツアルトに本格的に取り組んだのは、40代でなく30代からであり、若い頃は、リスト、ショパン、シューマンなどロマン派や、バッハやスカルラッティなどバロックにも興味をもち、モーツアルトの演奏を頼まれても、断ったことすらあったようです。(もっとも、リパッティとの間では、互いのモーツアルトを聴いてから、自分の演奏を躊躇う、断るなんてことも、双方にあったようですが。)
また、モーツアルトの協奏曲では、10番(2台のための)も、幾度も演奏しています。アンダとの共演です。こうして見ると、彼女の遺した録音の曲目(一つの曲に複数の録音があったりする)とすっかり一致していています。
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