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Home|フラグスタート(Kirsten Flagstad)|ブラームス:4つの厳粛な歌 Op.121

ブラームス:4つの厳粛な歌 Op.121

(S)キルステン・フラグスタート (P)エドウィン・マッカーサー 1956年11月22日,23日,26日&27日録音



Brahms:Vier ernste Gesande, Op121 [1.Denn es gehet dem Menschen]

Brahms:Vier ernste Gesande, Op121 [2.Ich wandte michund sah an alle]

Brahms:Vier ernste Gesande, Op121 [3.O Tod, o Tod, wie bitter bist du]

Brahms:Vier ernste Gesande, Op121 [4.Wenn ich mit Menschen - und mit Engelszungen redete]


間近に迫りつつあるクララの死と、自らの老いと死を予感して書かれた作品

この作品はブラームスが書いた最後の歌曲であり、それはクララ・シューマンの間近に迫りつつある死と、さらには自らの老いと死をも予感して書かれた作品でした。
それ故に、それまでの歌曲とは違ってロマン主義的な甘さは姿を消しています。

確かに、ブラームスの歌曲というのはニコリともしないというのが通り相場で、彼に最も相応しいのは「墓場こそ我が憩い」だなどと影口を叩かれたものでした。しかし、そう言う歌曲であっても、この最後の「4つの厳粛な歌」と較べてみれば、はるかにロマン主義的な感性に溢れていたことに気づかされるのです。

ただし、その事を持ってこの作品を荘厳な傑作とし、さらには歌曲の歴史における最高の傑作の一つだと言われると、いささか戸惑いは覚えます。
憎まれ口を許してもらえるならば、歌曲の世界にはこういうしんねりむっつりした、面白くもおかしくもないものほど優れたものだという「コンセンサス」があるようです。

だいたいが、「皆塵から出て、塵に帰る(第1曲:人の子らに臨むところは)」とか「私はなお生きているものよりも、すでに死んだものを幸いと思った(第2曲:私はまた)」とか、「おお、死よ、お前の宣告がいかに喜ばしいことか(第3曲:おお、死よ)」などと歌われて心躍る人はいないでしょう。

しかし、その様に渋くて晦渋なものほど「価値」があると思う人もいるのであって、それはそれで否定するものではありませんが、それは私が素直に受け入れられる世界ではありません。
私がどうしても「歌曲」という分野に親和性を見いだせないのは、その辺りにおける「至らなさ」があるのでしょう。


  1. 第1曲:人の子らに臨むところは獣にも臨むからである(Denn es gehet dem Menschen)
    「伝道の書」第3章第19節より

  2. 第2曲:わたしはまた、日の下に行われるすべてのしえたげを見た(Ich wandte mich, und sahe an)
    「ソロモン伝道の書」第4章第1節より

  3. 第3曲:ああ死よ、おまえを思い出すのはなんとつらいことか(O Tod, wie bitter bist du)
    「イエス・シラク書」第41章、および「旧約聖書続編」の「ベンシラの知恵」より

  4. 第4曲:たといわたしが、人々の言葉や御使たちの言葉を語っても(Wenn ich mit Menschen)
    「コリント人への手紙」第13章より




ブラームスの音楽に秘められているロマン主義的な感性のようなものを実に上手く引き出してる


フラグスタートが「Decca」からのオファーで「引退」を撤回してスタジオに戻ってきたのが1956年の3月でした。そこでは、得意とするワーグナーから始めて、グリーグの連作歌曲などを録音しています。
カルショーはワーグナーは別格として、一連の歌曲に関してはそれほど上手くいってはいないと述べています。しかし、自分に残された力と作品との間の距離感を慎重に計りながら録音をすすめていくフラグスタートの姿勢は極めてクレバーだとも感じていたようです。

フラグスタートの魅力は、まずは「最高級の真珠」とたたえられたほどの美声にありました。そして、その様な「美声」でもって覆い被さってくるオーケストラの響きを突き抜けていくだけの強靱さと、この上もなくドラマティックな表現力を持っていたことでした。
そう言うことを考えると、このブラームスという男の「歌曲」はそれほど相性がいいとは思えません。

私の偏見かと思うのですが、ブラームスの歌曲と言えば渋くて晦渋というイメージがあります。そのような音楽に対して、「美声」や「ドラマティックな表現力」はそれほど役に立つとも思えないのです。
ところが、実際に聞いてみると、ブラームスの音楽に秘められているロマン主義的な感性のようなものを実に上手く引き出していて、「歌曲」というものにそれほど強いシンパシーを感じない人にも面白く聞かせてしまうのです。
と言うことは、もしかしたら、歌曲というものにシンパシーを感じる人にとっては大仰に過ぎるのかもしれません。

私はまだ聞いてはいないのですが、1953年にパリのシャンゼリゼ劇場で行われた「歌曲リサイタル」のライブ録音というものが残っているそうです。
そこでは、ブラームスの歌曲を中心とした渋いプログラムだったにも関わらず、最初から聴衆はフラグスタートの歌声に酔いしれて大変な興奮状態に陥っているそうなのです。

ブラームスの歌曲を歌って聴衆を熱狂させるとは、さすがは「神のごとき」と言われた歌い手だけのことはあります。

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