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Home|ライナー(Fritz Reiner)|ムソルグスキー:交響詩「はげ山の一夜」(R=コルサコフ編)

ムソルグスキー:交響詩「はげ山の一夜」(R=コルサコフ編)

フリッツ・ライナー指揮 シカゴ交響楽団 1958年12月28日~29日録音



Mussorgsky:A Night on Bald Mountain


これもまたリムスキー=コルサコフによって世に出た作品

この作品はムソルグスキーの代表作となっているのですが、そして、それはその通りなのですが、細かく見ていくと幾つかのエクスキューズがつかざるを得ません。
まずは、この作品は合唱と管弦楽のための作品として構想されたものなのですが、残されたのはピアノ譜だけでした。もとはオペラ「ソロチンツィの定期市」の中の間奏曲として構想されたものなのですが、ムソルグスキーにはよくある話の「未完のままの放置」によって、そうなった次第です。
ただし、そこで構想された「間奏曲」は物語とは直接関係のない「悪魔の饗宴」を描いたものだったので、それならば、放置されたオペラとは関係無しに管弦楽曲として完成させたのがリムスキー=コルサコフだったのです。タイトルも、この作品の遠い原型となった「兀山のヨハネ祭の夜」にちなんで交響詩「兀山の一夜」となった次第です。

その意味では、音楽の骨格部分は紛れもなくムソルグスキーのものなのですから、これを彼の代表作に数え上げることになんの不都合もありません。しかしながら、そう言う骨格部分を一つにまとめ上げ華麗なオーケストレーションを施した功績は疑いもなくリムスキー=コルサコフにあります。ですから、これを交響詩「兀山の一夜」(リムスキー=コルサコフ版)と呼ぶのは実に正しい表記の仕方だと言えるのです。

なお、この楽譜の冒頭には次のような説明が付けられています。

「治下から響いてくる不気味な声。闇の精たちの登場。続いて闇の王チェルノボグの出現。チェルノボグに対する賛美と暗黒ミサ。魔女たちのサバドの饗宴。この狂乱が絶頂に達したとき、遠く野村の教会の鐘が鳴り始め闇の精たちは退散する。そして夜明け。」


一糸乱れぬアンサンブルと強靱なオケの響きは、「鶏頭を裂くに牛刀を用いん」の風情があるかもしれません

こういう録音を聞くとライナーというのは不思議な指揮者だったと思ってしまいます。

ライナーと言えば「強面」の指揮者でした。
それはオーケストラのプレーヤーに対してだけでなく録音スタッフに対しても同様でした。

「君と仕事をするのは始めてだ。このホールで指揮をするのも初めてだ。最初のテイクのバランスが完璧でなかったら、私は帰らせてもらうよ。」

これがDeccaの音楽プロデューサーだったジョン・カルショーがライナーと始めて出会ったときに交わされた言葉だったそうです。
それは、全てのことに関して完璧を求め、どれほど些細なことであっても手抜きは許さないという強い姿勢を示したものでした。

その様な指揮者が、おそらくはレーベルからの強い要請だとは思うのですが、「Festival Of Russian Music」というタイトルの、それこそ玩具箱をぶちまけたようなアルバムを作っているのです。
クラシック音楽の録音というものは、レーベルにとっては「短期的」には大きな収益を見込むことが難しいものです。しかし、流行の波間に消え去っていくポップス・ミュージックと違って、優れた録音であれば著作隣接権が消滅するまでの長きにわたって一定の収益をもたらし続けます。
つまりは、「長期的」に見ればレーベルに大きな利益をもたらすのです。

しかしながら、多くの経営者がその様な「長期的な視野」を持っているわけではないので、短期的にある程度の利益を上げることを現場は要求される事があります。そう言う「困ったとき」によく使われる企画が「Festival Of Russian Music」のようなアルバムだったのです。


  1. チャイコフスキー:小行進曲[組曲第1番ニ短調 Op.43より]

  2. ムソルグスキー:交響詩「はげ山の一夜」(R=コルサコフ編)

  3. ボロディン:ダッタン人の行進[歌劇「イーゴリ公」より]

  4. チャイコフスキー:スラヴ行進曲Op.31

  5. カバレフスキー:歌劇「コラ・ブレニョン」

  6. グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲



こういうアルバムは長期的に売れ続ける事はないのですが、クリスマス商戦の前などにリリースをすればある程度の売り上げは期待できたからです。

しかしながら、ライナーのような大物指揮者にとってはどう考えても有り難い企画ではないのですが、レーベルからすればライナーのような大物がその様なアルバムを手がけるからこそ話題になるのです。
そこで、現場レベルにしてみれば「無理なお願い」となるのですが、結局はそう言う無理を聞いてしまうところがライナーという人なのです。

そのあたりが、同じ「笑わん殿下」でも、セルとは異なるところでしょうか。
セルの場合はどれほど譲歩しても、ワーグナーの管弦楽曲集かベートーベンの序曲集あたりが限界だったようです。・・・と思って調べてみたら「Szell Conducts Russian Music(1958年リリース)」なんて言うアルバムがありました。(^^;

そうしてみると、外見は恐くても、意外と現場の苦境に対しては二人ともに協力的だったのかもしれません。

ただし、そうやって引き受けた仕事であっても一切の手抜きがないのは当然と言えば当然、さすがと言えばさすがと言うべきでしょう。
まさに一糸乱れぬアンサンブルと強靱なオケの響きは、「鶏頭を裂くに牛刀を用いん」の風情かもしれませんが、それがライナーという人の本質なのです。

ですから、やるからには徹底的にやってやろうという姿勢は明らかで、音楽が盛り上がっていく場面では一気にテンポもあげていってシカゴ響の持てる力を存分に発揮させています。もともとが早めのテンポでオケを煽っているのですから、けっこう凄いことになっていくのです。
しかしながら、最後につまらぬ妄想を言わせてもらえば、あのムラヴィンスキーの「ルスランとリュドミラ序曲」の様な演奏を知った上でライナーが録音をしていればどれほど凄まじいことになっただろうという思いはします。

時間系列で言えばそう言うことはあり得ないのですが、それでもそう言う演奏が可能だと言うことを知っていれば、おそらくは、負けてなるものかとさらに凄いことになったのではないかと妄想するのです。
そして、このコンビならば、それは決して不可能ではなかったと思うのです。

この演奏を評価してください。

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2019-06-14:マルメ





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