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チャイコフスキー:交響曲第5番

メンゲルベルク指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1928年5月録音



Tchaikovsky:交響曲第5番「第1楽章」

Tchaikovsky:交響曲第5番「第2楽章」

Tchaikovsky:交響曲第5番「第3楽章」

Tchaikovsky:交響曲第5番「第4楽章」


何故か今ひとつ評価が低いのですが・・・

チャイコフスキーの後期交響曲というと4・5・6番になるのですが、なぜかこの5番は評価が今ひとつ高くないようです。

 4番が持っているある種の激情と6番が持つ深い憂愁。その中間にたつ5番がどこか「中途半端」というわけでしょうか。それから、この最終楽章を表面的効果に終始した音楽、「虚構に続く虚構。すべては虚構」と一部の識者に評されたことも無視できない影響力を持ったのかもしれません。また、作者自身も自分の指揮による初演のあとに「この作品にはこしらえものの不誠実さがある」と語るなど、どうも風向きがよくありません。
 ただ、作曲者自身の思いとは別に一般的には大変好意的に受け入れられ、その様子を見てチャイコフスキー自身も自信を取り戻したことは事実のようです。

 さてユング君はそれではどう思っているの?と聞かれれば「結構好きな作品です!」と明るく答えてしまいます。チャイコフスキーの「聞かせる技術」はやはり大したものです。確かに最終楽章は金管パートの人には重労働かもしれませんが、聞いている方にとっては実に爽快です。第2楽章のメランコリックな雰囲気も程良くスパイスが利いているし、第3楽章にワルツ形式を持ってきたのも面白い試みです。
 そして第1楽章はソナタ形式の音楽としては実に立派な音楽として響きます。
 確かに4番と比べるとある種の弱さというか、説得力のなさみたいなものも感じますが、同時代の民族主義的的な作曲家たちと比べると、そういう聞かせ上手な点については頭一つ抜けていると言わざるを得ません。
 いかがなものでしょうか?


実演で聞けば面白いのでしょうが・・・

 私たちがメンゲルベルグという指揮者にたいして持っているイメージにもっとも近いのがこの一連のチャイコフスキーの録音です。それこそ、徹底的に細部にこだわっています。恣意的というか、主観的というか、自分が気に入ったフレーズがあると「見て、見て、ここにこんなに素敵な歌があるわよ!」という感じで歌いまくります。
 おかげで、チャイコフスキーの交響曲が内包している西欧指向のスタイリッシュな側面が跡形もなく木っ端みじんに砕け散っています。有名なムラヴィンスキーによる録音と比べてみれば、同じ作品を演奏したとは思えないほどです。

 この録音には次のようなエピソードが伝えられています。
 それは、ロシアのペテルスブルグでメンゲルベルグがチャイコフスキーの交響曲を演奏したときのことです。そのコンサート会場にはチャイコフスキーの弟がきていて、その演奏に感動した彼はメンゲルベルグを自宅に招いたというのです。そして、その時にチャイコフスキーが残した自筆のスコアをじっくりと見る機会を彼は得たというのです。
 そのスコアにはチャイコフスキーによる加筆や訂正がなされており、その時に得た知見がこの録音にいかされているというのです。ですから、メンゲルベルグはこの録音こそがチャイコフスキーの真の意志を忠実に反映したものだと主張していたそうです。

 しかし、チャイコフスキーの交響曲というのは、古典派以降の交響曲の系譜の中では、とびきりと言っていいほどの強固な構造を持った作品です。一般に言われているような、甘いメロディが連続する雰囲気優先の音楽などではありません。チャイコフスキーの真の意志を反映してこんなにもグズグズになるなどとは考えられないことです。
 おそらく、チャイコフスキーの弟に招かれたことは事実だったのでしょうが、それ以後のことは眉に唾をつけたくなります。

 ただし、このような演奏は録音という形で固定されてしまい、何度も繰り返して聞くとなると次第に白けてしまいますが、一度や二度聞く分にはなかなか面白い演奏であることは事実です。ましてや実際のコンサートで聞けばかなりの感動ものだったと思います。さらに言えば、トスカニーニ以後の世代が強力に押しすすめた即物主義の芸術が徹底的に排除した「ロマン主義的歪曲」というものがいかなるものであったかの一端を教えてくれると言う意味でも貴重な録音だといえます。
 ただし、能力のない指揮者たちがその後星の屑ほど量産した無味乾燥な即物的演奏と比べれば何倍も面白かったことは正直に告白しなければなりません。

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