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ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 作品73

ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮 北ドイツ放送交響楽団 1955年4月13-20日録音を再生する



Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73 [1.Allegro non troppo]

Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73 [2.Adagio non troppo]

Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73 [3.Allegretto grazioso (quasi andantino)]

Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73 [4.Allegro con spirito]


ブラームスの「田園交響曲」

ブラームスが最初の交響曲を作曲するのに20年以上も時間を費やしたのは有名な話ですが、それに続く第2番の交響曲はその一年後、実質的には3ヶ月あまりで完成したと言われています。ブラームスにとってベートーベンの影がいかに大きかったかをこれまた物語るエピソードです。

第2番はブラームスの「田園交響曲」と呼ばれることもあります。それは明るいのびやかな雰囲気がベートーベンの6番を思わせるものがあるかです。

ただ、この作品はこれ単独で聞くとあまり違和感を感じないでのですが、同時代の他の作品と聞き比べるとかなり古めかしい装いをまとっています。この10年後にはマーラーが登場して第1番の交響曲を発表することを考えると、ブラームスの古典派回帰の思いが伝わってきます。
オケの編成を見ても昔ながらの二管編成ですから、マーラーとの隔絶ぶりはハッキリしています。
とは言え、最終楽章の圧倒的なフィナーレを聞くと、ちらりと後期ロマン派の顔がのぞいているように思うのは私だけでしょうか。



  1. 第1楽章 Allegro non troppo
    冒頭に低弦が奏する音型が全曲を統一する基本動機となっている。静かに消えゆくコーダは「沈みゆく太陽が崇高でしかも真剣な光を投げかける楽しい風景」と表現されることもあります。

  2. 第2楽章 Adagio non troppo - L'istesso tempo,ma grazioso
    冒頭の物憂げなチェロの歌がこの楽章を特徴づけています。

  3. 第3楽章 Allegretto grazioso (Quasi andantino) - Presto ma non assai - Tempo I
    間奏曲とスケルツォが合体したような構成になっています。

  4. 第4楽章 Allegro con spirito
    驀進するコーダに向けて音楽が盛り上がっていきます。もうブラームスを退屈男とは言わせない!と言う雰囲気です。




決められた台詞を淡々と語っているだけのように見えながら、聞き手をいつの間にかドラマの世界に引きずり込む

イッセルシュテットが心血を注いで作りあげた北ドイツ放送交響楽団の本拠地はハンブルクです。そして、ブラームスの生まれ故郷もハンブルクです。
だからどうなんだという話ではあるのですが(^^;、それでも両者の間には素晴らしい親和性がありますし、少なくとも「我が街の音楽家」という誇りがあるのは確かです。

実際、イッセルシュテットと北ドイツ放送交響楽団とのブラームスはどれをとっても素晴らしい仕上がりです。
にも関わらず、残されたブラームスの録音があまり多くないというのが実に残念です。

そう書くと、いや、60年代後半に交響曲の全集を残しているではないかと言われそうなのですが、あれは3番を除けば全てライブ録音です。そして、スタジオ録音とされている3番も放送局による放送録音だったようで、いわゆるレコード制作のためのスタジオ録音とは異なるようなのです。
それだけに、モノラルではあるのですが「Capitol」によって第2番の交響曲が残されたことは貴重だと言わなければなりません。

この「Capitol」はアメリカのレーベルだったのですがDeccaと結びつきがあり、その縁で一時「Decca」のカルショーが移籍をしていました。このイッセルシュテットによる一連の「Capitol」への録音は全てカルショーが取り仕切っていました。

しかしながら、録音環境は人的にも機材的にも「EMI」や「Decca」の水準には遠く及ばないものだったとカルショーはこぼしています。
さらに不幸だったのは、カルショーは「Capitol」における「クラシック音楽のスタンダードなレパートリー」を作りあげるための指揮者としてイッセルシュテットと契約をかわしていたのですが、その矢先に「Capitol」は「EMI」に身売りをしてしまったのです。
当然の事ながら、「EMI」が「もう一つ新しいクラシック音楽のレパートリー」を作りあげる必要は全くないので、イッセルシュテットとの契約は1955年の録音だけで打ち切られます。

イッセルシュテットという人はよくよく録音運のない人でした。
そうであっても、1955年に以下のような形でまとまったスタジオ録音が残ったというのは、録音に恵まれなかったイッセルシュテットにとっては貴重なものだったのです。

1955年4月13-20日録音

  1. ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第3番 Op.37 (P)ヴェンチスラウ・ヤンコフ

  2. ブラームス:交響曲 第2番 Op.73


1955年12月7-15日録音

  1. モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク KV525

  2. ハイドン:交響曲 第94番「驚愕」

  3. シューベルト:交響曲 第5番 D485

  4. シューベルト:ロザムンデより

  5. ワーグナー:「ニーベルングの指環」より



イッセルシュテットのブラームスは言葉で表現するのは難しいと言われます。「中庸」「穏健」などと言う言葉をいくら連ねても、それは何もいっていないのと同じです。
しかし、イッセルシュテットは「少ない身振り」でブラームスの音楽に内包されているドラマを描き出していることは間違いありません。そして、そのドラマは疑いもなく最後のクライマックスに焦点を定めて綿密に計算されて積み上げられています。

そう言う意味では、方法論としては奇矯としか言いようのないクナパーツブッシュのやり方とは正反対かもしれません。
イッセルシュテットの指揮というのは、決められた台詞を淡々と語っているだけのように見えながら聞き手をいつの間にかドラマの世界に引きずり込み、さらには張り巡らされた伏線が最後の「ああ、そうだったのか」という解決へと集約していくという、王道とも言うべき「Dramaturgie(ドラマトゥルギー)」によって成り立っています。

奇矯な方法論というのは「言語」で説明するのはそれほど難しくはないのですが、そう言う王道的な方法論というのは言語化が難しいのです。
そして、そう言う王道的な方法論を持った指揮者であったが故に、カルショーは「クラシック音楽のスタンダードなレパートリー」を作りあげるための指揮者として抜擢したのでしょう。

そう考えれば、「Capitol」が「ENI」に身売りしたというのは、イッセルシュテットと北ドイツ放送交響楽団だけでなく、私たち聞き手にとっても計り知れない損失だったと言えます。

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