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マーラー:大地の歌

ワルター指揮 ウィーンフィル S:Kerstin Therberg T:Charles Kullann 1936年録音



Mahler:大地の歌「第1楽章」

Mahler:大地の歌「第2楽章」

Mahler:大地の歌「第3楽章」

Mahler:大地の歌「第4楽章」

Mahler:大地の歌「第5楽章」

Mahler:大地の歌「第6楽章」


生は暗く、死も亦暗し!

この作品にまつわる「9番のジンクス」に関してはいろんな方が語っていますし、ユング君も別のところでふれていますからあえてここでは取り上げません。
それよりも、始めてこの作品を聴いた方は「これは果たして交響曲なのだろうか?」という疑問をもたれると思います。どう聴いたってこれはオーケストラ伴奏付きの歌曲集のように聞こえる方もおられると思いますし、それは決して誤りではないと思います。

交響曲の起源はおそらくバッハの息子たちにまで遡ることができるのでしょうが、とりあえずはハイドンが橋頭堡を築き、モーツァルトが育て上げ、最終的にベートーベンが完成させた管弦楽の形式だと言っていいと思います。そして、それ以降の音楽家たちは縦への掘り下げが行き着くところまで行ってしまったためでしょうか、今度は横への広がりを模索していきます。

声楽の導入は言うまでもなく、ソナタ形式に変わる新たな方法論が模索されたり、響きの充実を求めて管弦楽がどんどん肥大化していったりします。マーラーの前作である第8番においてはその肥大化は頂点に達しますし、方法論においてもこの大地の歌によって行き着くところまで行ったと言えます。

つまり、交響曲という形式が多様化と肥大化の果てに明確なフレームを失ってしまって、作曲家が「これは交響曲だ」と言えば、何でも交響曲になってしまうような時代に突入したと言えます。しかし、それは交響曲という形式の終焉を意味しました。
もちろん、マーラー以降も数多くの交響曲は創作されましたが、しかしそれらはハイドン、モーツァルト、ベートーベンと受け継がれてきたクラシック音楽の玉座をしめる音楽形式としての交響曲ではなく、どこか傍流の匂いを漂わせます。ユング君は、クラシック音楽の玉座としての交響曲はマーラーのこの作品と続く第9番によって終焉したと思うのですが、いかがなものでしょうか。

なお、大地の歌の楽章構成は以下の通りです。奇数楽章はテノール、偶数楽章はアルトが歌うようになっています。

?.大地の悠久を歌う酒の歌(Das Trinklied vom Jammer der Erde)
?.秋に寂しきもの(Der Einsame im Herbst)
?.青春について(Von der Jugend)
?.美について(Von der Schoenheit)
?.春に酔えるもの(Der Trunkene im Fruehling)
?.告別(Der Abschied)

原詩は唐の詩人、李白、孟浩然、王維、銭起のもので、それをドイツ語訳したハンス・ベートゲの「シナの笛」がベースになってます。この作品を貫くトーンは冒頭の李白の詩においても何度も繰り返される「生は暗く、死も亦暗し!」です。


大地の歌の初演者、ワルター

この作品はマーラーの死後約一年後に初演されますが、その時の指揮者がワルターでした。マーラーとワルターの師弟関係についてはあちこちで言い尽くされていますから今さらここでふれる必要はないでしょう。

ワルターはロマンティックな指揮者だと言われます。
しかしこの録音を聴いてみると、驚くほどしっかりとした造形で作品を引き締めています。
アメリカに亡命してからはこのような演奏をたくさん聴くことができるのですが、ヨーロッパ時代のワルターは基本的に耽美的な指揮者だと思っていました。そして、その変化を、聴衆の要望にこたえたものだと思いこんでいて、「ワルターもなかなかに役者だのー!」とユング君は思っていました。
しかし、ここで聞ける大地の歌は耽美的どころかストイックでさえあります。耽美的に演奏しようと思えばいくらでも耽美的に振る舞える作品だけに、ヨーロッパ時代のワルターがこのような演奏をしていたとはちょっとした驚きであり発見でした。

でも考えてみれば、やろうと思えばいくらでもきちんと作品を造形できる能力があるからこそ、ここ一番でわざと「崩し」をやったときに絶大な効果を発揮するのだと言えます。ワルターという人はそう言う「崩し」をよくやるのですが、その効果に目がくらんで凡百の指揮者が猿まねをしても失敗に終わるのは基本の部分での能力に大きな違いがあるからでしょう。

また、その「崩し」の効果が絶大なためにワルターはロマンティックで耽美的な指揮者だと思われがちですが、本質はこの演奏に聴くことができる姿だと最近になって確信を持つようになりました。

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2010-02-08:南 一郎





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