Home|
ジネット・ヌヴー(Ginette Neuveu)|ショパン:夜想曲第20番嬰ハ短調(ロディオノフ編:遺作)
ショパン:夜想曲第20番嬰ハ短調(ロディオノフ編:遺作)
(Vn)ジネット・ヌヴー (P)ブルーノ・ザイドラー=ヴィンクラー 1938年録音
Chopin:Nocturne No. 20 in C sharo minor
初恋のノクターン

ショパンの数ある作品の中では、最近では認知度ナンバーワンかもしれません。
映画「戦場のピアニスト」ではこの音楽象徴的に使われましたし、最近では平原綾香が「風のガーデン」の主題歌として取り上げています。
特に、「風のガーデン」は人の生と死の問題を真正面から問いかけたもので、本当に素晴らしいドラマでしたね。
この作品は、もともとは姉のルドヴィカ・ショパンがピアノ協奏曲第2番を練習する時のための曲として書かれたものと言われています。
ですから、このノクターンにも「初恋のコンチェルト」のテイストが流れ込んでいます。いや、コンチェルト以上に、甘く切ない雰囲気にあふれています。
「僕は悲しいかな、僕の理想を発見したようだ。この半年というもの、毎晩彼女を夢見るがまだ彼女とは一言も口をきいていない。あの人のことを想っているあいだに僕は僕の協奏曲のアダージョを書いた」
このショパンの言葉が、もっとも美しく刻み込まれた音楽だと言えます。
また、このピアノ曲はヴァイオリン曲としても編曲されていて、ミルシテインやロディオノフなどの編曲ヴァージョンも良く演奏されます。
「内なる精神の炎が燃えさかっている」と称されるヌヴォーの特徴は初録音においても明瞭に刻み込まれています
ヌヴーの早熟については
こちらでふれていますので興味ある方はご覧ください。
そんな早熟の天才ヌヴーの初録音を紹介したいと思います。
とは言え、今さら1938年という80年も前の録音などは願い下げだという人がいるかも知れません。
しかし、そこは私を信じて(^^;一度は聞いてみてください。きっと驚かれるはずです。
ヌヴォーはこの1938年(19歳)に以下の小品を録音しています。
- クライスラー:バッハの様式によるグラーヴェ ハ短調
- スーク:4つの小品 op.17 第3曲「ウン・ポコ・トリステ」
- スーク:4つの小品 op.17 第2曲「アパッショナータ」
- ショパン/ロディオノフ編:夜想曲第20番嬰ハ短調(遺作)
- グルック:『オルフェオとエウリディーチェ』より「メロディー」
- パラディス/ドゥシキン編:シチリア舞曲
このうちスークの4つの小品とショパンの夜想曲は戦後の46年にもう一度録音していますが、「内なる精神の炎が燃えさかっている」と称されるヌヴォーの特徴がより明瞭に刻み込まれているのは38年の録音の方です。
そして、数多くの歴史的録音を聞いてきて分かったことは、文化的にも一つの爛熟期をむかえていた30年代の録音は、戦争の混乱の中で録音された40年代の録音よりも概ね良好なものが多いと言うことです。
この38年に録音されたヌヴォーの小品も、かなり良好な状態で録音が残されています。
そして、その良好さのおかげで、極限のピアニシモから音楽が立ち上がってくる凄みが見事なまでに刻み込まれています。
例えば、ヌヴォーの代表的な録音であるショーソンの「詩曲」においても、その極限とも言うべきピアニシモから見事に一本のラインを描き出していく凄みには圧倒されます。
そして、この38年の録音では、それと同じような凄みをもって、この何気ない小品たちが突きつけられるのです。
さらに付け加えておけば、硬質な緊張感を維持しながら艶やかな響きの美しさを失わないのも見事と言うしかありません。
オイストラフが第1回ヴィエニャフスキ・コンクールでヌヴォーに敗れたときに「悪魔のようだった」と妻に書き送ったのは正当な評価だったのです。
そして、それと比べれば46年盤の方には、そこまでの凄みはなく、どちらかと言えば余裕を持って小品を弾きこなしているという風情があります。
ヌヴォーも20代になってシベリウスやブラームスのようなコンチェルトに活動の軸足が移っていって、そこまで真剣に小品と向き合う気にもなれなくなったと言うことかも知れません。
さらに言えば、38年録音ではヴァイオリンはかなりオン気味に収録されていてピアノは影のように付き従うだけでしたが、46年録音ではそれなりのバランスでピアノも収録されています。
そう言えば、戦後のピアノ伴奏は兄のジャンが務めていましたから、そしてシャンもイヴ・ナットに学んだ優れたピアニストでしたから、そちらにも光を当てたいという思いもあったのかも知れません。
なお、あまり語られることはないのですが、アメリカでの演奏旅行に向かう飛行機にはジャンも同乗していました。
ジネットとジャンのヌヴォー兄妹、ピアフの恋人だったマルセル・セルダン、実に多くの悲劇を引き起こした事故でした。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
3544 Rating: 5.3/10 (147 votes cast)
よせられたコメント
【最近の更新(10件)】
[2025-12-07]

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第23番「熱情」 ヘ短調 Op.57(Beethoven: Piano Sonata No.23 In F Minor, Op.57 "Appassionata")
(P)ハンス・リヒター=ハーザー 1955年11月録音(Hans Richter-Haaser:Recorded on November, 1955)
[2025-12-06]

ラヴェル:夜のガスパール(Ravel:Gaspard de la nuit)
(P)ジーナ・バッカウアー:(語り)サー・ジョン・ギールグッド 1964年6月録音(Gina Bachauer:(Read)Sir John Gielgud Recorded on June, 1964)
[2025-12-04]

フォーレ:夜想曲第7番 嬰ハ短調 作品74(Faure:Nocturne No.7 in C-sharp minor, Op.74)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)
[2025-12-02]

ハイドン:弦楽四重奏曲第32番 ハ長調, Op.20, No.2, Hob.3:32(Haydn:String Quartet No.32 in C major, Op.20, No.2, Hob.3:32)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1931年12月2日録音(Pro Arte String Quartet:Recorded on December 2, 1931)
[2025-11-30]

チャイコフスキー:マンフレッド交響曲 ロ短調 作品58(Tchaikovsky:Manfred Symphony in B minor, Op.58)
コンスタンティン・シルヴェストリ指揮 フランス国立放送管弦楽団 1957年11月13日~16日&21日録音(Constantin Silvestri:French National Radio Orchestra Recorded on November 13-16&21, 1959)
[2025-11-28]

ベートーベン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93(Beethoven:Symphony No.8 in F major ,Op.93)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年5月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on May, 1961)
[2025-11-26]

ショパン: ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 Op.21(Chopin:Piano Concerto No.2 in F minor, Op.21)
(P)ジーナ・バッカウアー:アンタル・ドラティ指揮 ロンドン交響楽団 1964年6月録音(Gina Bachauer:(Con)Antal Dorati London Symphony Orchestra Recorded on June, 1964)
[2025-11-24]

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第12番変ホ長調, Op.127(Beethoven:String Quartet No.12 in E Flat major Op.127)
ハリウッド弦楽四重奏団:1957年3月23日,31日&4月6日&20日録音(The Hollywood String Quartet:Recorded on March 23, 31 & April 6, 20, 1957)
[2025-11-21]

ハイドン:弦楽四重奏曲第31番 変ホ長調, Op.20, No1, Hob.3:31(Haydn]String Quartet No.31 in E flat major, Op.20, No1, Hob.3:31)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1938年6月5日録音(Pro Arte String Quartet:Recorded on June l5, 1938)
[2025-11-19]

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」 ハ長調 Op.53(eethoven:Piano Sonata No.21 in C major, Op.53 "Waldstein")
(P)ハンス・リヒター=ハーザー 1956年3月録音(Hans Richter-Haaser:Recorded on March, 1956)