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ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 作品43

(P)ジュリアス・カッチェン エードリアン・ボールト指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 1954年5月10日録音

Rachmaninov:Rhapsody On A Theme Of Paganini, Op.43


Andante cantabileだけはとても有名です

この作品は「パガニーニの主題による狂詩曲」となっていますが、実質的には疑いもなくピアノコンチェルトです。
パガニーニのヴァイオリン曲『24の奇想曲』第24番「主題と変奏」の「主題」をネタにして、ラフマニノフらしいロマンティックな世界を繰り広げています。
とりわけ有名なのが、第18変奏のAndante cantabileです。
きっと、「パガニーニの主題による狂詩曲」なんて言われても全然ピントこない人でも、この部分を聞けばピンと来るはずです。テレビのコマーシャルやドラマのBGM、さらにはフィギアスケートの音楽などに、それこそ擦り切れるほどに使い回されています。

ただ、第18変奏なんて言われても、この作品はかなり自由に変奏されていますし、おまけにかんじんの主題が最初に出てこないという変速技を使っていますので、きっとよほど訓練された人でないとどこが18番目の変奏かは聞き当てられないはずです。
でも、大丈夫です。
あのメロディが出てくれば、誰でも思い当たります。

「パガニーニの主題による狂詩曲」なんて知らないよと言う人も、「あのメロディ」が出てくるまで辛抱強く聞き続けてください。


カッチェンの初期の録音には奔馬のようにたぎり立つ炎のようなモノが刻み込まれています

これを聞くと、興が乗ってきて調子が出てくると走り出してしまうカッチェンの癖はかなり根深いものだったのだと思わずにはおれません。
チャイコフスキーのコンチェルトを取り上げたときに「コンチェルトの場合ならば相手となる指揮者とオケがいるわけですし、さらに言えば、その相手となる指揮者の大半は彼よりも年齢も経験も上の場合が多いのですから、そう言う自制心がより強く働くことになります。」と書いたのですが、指揮者がボールトであっても明らかに走り出そうというとする場面があちこちにあるような気がします。

それは、もしかしたら、その他の変奏のテンポが遅いのでそういう感じがするのかもしれません。しかしながら、結果としてなんだか変奏と変奏のつなぎ目がいささかギクシャクした感じがつきまとうのです。
ただ、面白いと思うのは、そう言う部分は指揮者のボールトの方が調整しにかかるので、あの19才のガキ(こんな書き方をしてごめんなさいガンバさんm(_ _)m)と組んだときのような露骨な状態にはならないようです。

54年の録音なので、ボールトは既に65才、それに対してカッチェンはまだ27才です。
この頃のボールトはビーチャムやバルビローリなどと較べると、その地味な芸風ゆえにか、少し影の薄い存在ではあったのですが、それでもオックスフォード大を出てニキッシュにも師事したという大物です。いかに才気あふれる若手のピアニストであっても、それはやはり大きな存在だったはずです。

そして、ボールトにしてみればカッチェンは才気あふれる孫みたいなものだったのかもしれません。
確かにいささか落ち着かない部分はあるのですが、指が回るだけでなく、シャープで繊細な表情もあふれるそのピアノはとても好ましいものに思えたはずです。

そして、あのあまりにも有名な第18変奏のところに来ると、カッチェンのピアノもぐっと腰が落ちて濃厚に歌い出します。正直言って、カッチェンにしてみれば濃厚に過ぎるかなとも思うのですが、それもまたボールトと組んだ御利益でしょう。
そして、このあたりからこの二人の息も合ってきて、その後の跳躍するように走り回るカッチェンのピアノとボールトの棒がピッタリと合ってくる感じがとても素敵です!!

なるほど、カッチェンというのは心の中に、放っておけば奔馬のように暴れ出す熱いものがいつもたぎっている男なのですね。
そして、その奔馬を強い自制心でコントロールすることで他の誰からも聞くことのできない精緻な音楽を作り出した点にこそ彼の魅力があったのでしょう。

それは、心に何の炎もなく、ただ表面だけを磨き上げだけの演奏とは、見かけは似ていてもその内実においては全く異なったものなのです。
そう言う意味では、彼の初期の録音には、その様な奔馬のようにたぎり立つ炎のようなモノが誰の目にも見える形で刻み込まれているような気がします。

この演奏を評価してください。

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