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モーツァルト:フィガロの結婚

カラヤン指揮 ウィーンフィル ウィーン国立歌劇場合唱団 シュヴァルツコップ(S) ゼーフリート(S) クンツ(Br)他 1950年9月録音



Mozart:フィガロの結婚「序曲」

Mozart:フィガロの結婚「第1幕」

Mozart:フィガロの結婚「第2幕」

Mozart:フィガロの結婚「第3幕」

Mozart:フィガロの結婚「第4幕」


神が降臨する音楽

モーツァルトの全作品の中から一つ選べと言われればユング君はためらわずにこれを選びます。クラシック音楽の中から一つ選べと言われれば少し考え込みますが、3つと言われればその中に間違いなく入ります。(後の二つは、バッハのマタイとベートーベンのエロイカ)
最初の序曲を聞くだけで心ははずみます。そして、次から次へとステキなアリアが満載されていますし、様々なバリエーションによる声のアンサンブルも堪能できます。物語の展開は「無茶苦茶」ですが、そんなことはいっこうに気にもならず、次から次へと展開されていく「音楽のフルコース」に身をひたしているだけでこの上もなく幸せになれます。
しかし、これだけで終わっていれば数あるモーツァルトの傑作の一つというポジションにとどまったはずです。ドン・ジョバンニのドラマティックの極みとも言うべき「地獄落ち」を前にすれば、その首位の座を譲らざるをえないかもしれません。次々と展開されるアリアの美しさなら「コシ」の方が上かもしれません。「魔笛」のハラハラドキドキのメルヘン大活劇だって捨てがたいのです。
でも、ユング君がそう言うとびきり上等の数あるオペラの中で「フィガロ」を偏愛するのは、フィガロにはあって他の作品にはないものがあるからです。

それは、(こんな言い方をすると、ユング君はちょっと、アブナクなってきているんではないかと懸念されそうですが・・・)フィガロには神が降臨する場面があるからです。現世で鳴り響いている音楽であるにもかかわらず、フィナーレで伯爵が「ゆるせ奥方よ・・・」と歌い出したとたんに、周囲の景色は一変しそこに神が降臨してくるのを感じ取れます。
映画「アマデウス」でサリエリが語ったように、モーツァルトという貧相な若者を通して神がすべてのものに「許し」を与える音楽です。恥ずかしながら、ユング君はこの場面をきくたびに涙が溢れてきます。日頃は神など信じようともしない人間なのですから、「パブロフの犬」と言えばそれまでですが、何か神秘的な力を感じさせてくれる音楽です。

なお、お話のあらすじはもう何がなんだか分からないほどに込み入っていてハチャメチャですからここでは省きます。興味のある方は、「フィガロ 結婚」とでもしてGoogleしてもらえばいくらでもヒットするでしょうから、詳しいことはそちらのサイトに譲ります。

追記
最近、面白い文章を発見しました。それは、フィガロの自筆譜を厳密に調査することでフィガロの創作過程を明らかにした研究です。研究そのものは古いものなのでご存じの方も多いと思いますが、初めて見たユング君にとってはなかなかに興味深いものでした。
まず、驚いたのはモーツァルトは第1幕から順番に書いていったのではないと言うことです。そうではなくて、このオペラを構成する単位をその性格に基づいて4つに分け(アリア、話の展開に主要な位置を占める音楽、劇的な性格を持った音楽、そして滑稽な音楽)、それらを個別に作曲をしていったというのです。そして出来上がったそれぞれのパーツを台本にそって順序よく並べ替えを行い、最後にそれらがスムーズに流れていくように修正をほどこして完成させたというのです。
ですから、ハチャメチャに見える台本なのですが、実はモーツァルトとダ・ポンテによる緻密な協力の結果によるもので、一頃よく言われた「もう少しまともな台本なら、もっと素晴らしい音楽に仕上がっていただろう!」というのは間違いのようなのです。

そして、映画「アマデウス」の中で、あまりの作品の長さに「あくび」をしてしまった皇帝陛下が、もう少しコンパクトに不要な音符を削れと言われた事に対して、ムキになって反論したモーツァルトの描き方は実に正しい描きかただったとも言えます。
このような綿密な計画に基づいて創作されたオペラなのですから、どの部分を削っても作品そのものが破綻してしまいます。

なるほど、「奇跡」というものは緻密な「実務」の果てに実現するものかと納得したユング君でした。


泡立つシャンパンのようなフィガロ

ユング君はカラヤンはあまり好きではないのですが、この演奏は文句なく素晴らしいです。かなり速めのテンポで音楽をすすめていきますが、決してセカセカした感じもしないしスケールも小さくなっていません。それどころか、そのテンポは内部からのエネルギーをあふれ出し、まるで泡立つシャンパンのような覇気と躍動感に満ちたフィガロになっています。

どうも「帝王」となってからのカラヤンの演奏はつまらないものが多いのですが、それ以前の、のし上がっていく過程でのカラヤンにはこの「泡立つシャンパン」のような音楽が聞けてなかなかに魅力的です。

なお、最大の聞き所とも言うべき最後のアリアはどのように処理するのか楽しみにしていると、突然テンポをガクンと落としてたっぷりと歌わせはじめたのには感嘆しました。今までは快調なテンポで音楽をすすめてきて、最後の最後の「ここぞ!」と言うところでのこの大見得の切り方は「悪くないぞ!ヘルベルト、みんなが言うほど悪くないぞ!!」です。

さらに、録音は極めて優秀です。オペラのように演奏時間の長いものは録音が悪いと、いかに歴史的に意味がある!と言われても聞き通すのはかなり苦痛です。
今後も、オペラに関しては最低限この程度の音質は確保できるものをアップしていきたいと思います。

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