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セル(George Szell)|シベリウス:交響曲第2番 ニ長調 Op.43
シベリウス:交響曲第2番 ニ長調 Op.43
ジョージ・セル指揮 コンセルトヘボウ管弦楽団 1964年12月録音
Sibelius:Symphony No.2 in D major Op.43 [1.Allegretto]
Sibelius:Symphony No.2 in D major Op.43 [2.Tempo andante, ma rubato]
Sibelius:Symphony No.2 in D major Op.43 [3.Vivacissimo]
Sibelius:Symphony No.2 in D major Op.43 [4.Finale: Allegro moderato]
シベリウスの田園交響曲?

シベリウスの作品の中ではフィンランディアと並んでもっとも有名な作品です。そして、シベリウスの田園交響曲と呼ばれることもあります。もちろん、ベートーベンの第6番を念頭に置いた比喩ですが、あちらがウィーン郊外の伸びやかな田園風景だとすれば、こちらは疑いもなく森と湖に囲まれたフィンランドの田園風景です。
さらに、この作品にはフィンランドの解放賛歌としての側面もあります。重々しい第2楽章と荒々しい第3楽章を受けた最終楽章が壮麗なフィナーレで結ばれるところが、ロシアの圧政に苦しむフィンランド民衆の解放への思いを代弁しているというもので、この解釈はシベリウスの権威と見なされていたカヤヌスが言い出したものだけに広く受け入れられました。
もっとも、シベリウス本人はその様な解釈を否定していたようです。
言うまでもないことですが、この作品の暗から明へというスタイルはベートーベン以降綿々と受け継がれてきた古典的な交響曲の常套手段ですから、シベリウスは自分の作品をフィンランドの解放というような時事的な際物としてではなく、その様な交響曲の系譜に連なるものとして受け取って欲しかったのかもしれません。
しかし、芸術というものは、それが一度生み出されて人々の中に投げ込まれれば、作曲家の思いから離れて人々が求めるような受け入れ方をされることを拒むことはできません。シベリウスの思いがどこにあろうと、カヤヌスを初めとしたフィンランドの人々がこの作品に自らの独立への思いを代弁するものとしてとらえたとしても、それを否定することはできないと思います。
この作品は第1番の初演が大成功で終わるとすぐに着手されたようですが、本格的取り組まれたのはアクセル・カルペラン男爵の尽力で実現したイタリア旅行においてでした。
この作品の中に横溢している牧歌的で伸びやかな雰囲気は、明らかにイタリアの雰囲気が色濃く反映しています。さらに、彼がイタリア滞在中にふれたこの国の文化や歴史もこの作品に多くのインスピレーションを与えたようです。よく言われるのは第2楽章の第1主題で、ここにはドンファン伝説が影響を与えていると言われています。
しかし、結局はイタリア滞在中にこの作品を完成させることができなかったシベリウスは、フィンランドに帰国したあとも精力的に作曲活動を続けて、イタリア旅行の年となった1901年の末に完成させます。
一度聞けば誰でも分かるように、この作品は極めて少ない要素で作られています。そのため、全体として非常に見通しのよいすっきりとした音楽になっているのですが、それが逆にいささか食い足りなさも感じる原因となっているようです。その昔、この作品を初めて聞いた私の友人は最終楽章を評して「何だかハリウッドの映画音楽みたい」とのたまいました。先入観のない素人の意見は意外と鋭いものです。
正直言うと、ユング君は若い頃はこの作品はとても大好きでよく聴いたものですが、最近はすっかりご無沙汰していました。やはり、食い足りないんですね。皆さんはいかがなものでしょうか?
セル唯一のスタジオ録音
セルはシベリウスの作品をそれほど熱心に取り上げる指揮者ではなかったのですが、この2番だけはよく取り上げています。
私が知る限りでも、以下の録音が残されています。
シベリウス:交響曲第2番 ニ長調 Op.43の録音
- ニューヨークフィル:1953年1月18日録音(Live)
- コンセルトヘボウ管弦楽団:1964年12月録音
- クリーブランド管弦楽団:1966年10月15日録音(Live)
- クリーブランド管弦楽団:1970年5月22日録音(Live)
しかし、こうしてみるとスタジオ録音は64年のコンセルトヘボウ盤だけで、さらに53年盤と66年盤はおそらく「海賊盤」です。
聞くところによると、70年の来日公演の後に予定されていたセッション録音の一つがシベリウスの2番だったらしいのです。
これは、セルの録音の手順から言えば充分に考えられることです。コンサートで取り上げてからスタジオで録音するというのが彼のスタイルだったからです。
理由は簡単で、コンサートで取り上げた作品ならばそれまでのリハーサルで充分に仕上がっているので、それをそのままスタジオで録音すればいらぬ労力が省けるからです。
それだけに、あの有名な東京ライブの後にスタジオ録音が為されなかったことはかえすがえすも残念でなりません。
と言うことで、結果としてセルの正規のスタジオ録音としてはコンセルトヘボウ管との64年盤だけという事になってしまいます。
ところが、このスタジオ録音はセルファンの間ではあまり評価が高くないのです。それは、あまりにも研ぎ澄まされたセル&クリーブランド管が評価の基準になっているので、さすがのコンセルトヘボウを持ってしても「緩く」聞こえてしまうのです。
それは、ニューヨークフィルとのライブ録音(53年盤)にも言えることです。
そう言えば、セルは常々「我々は(クリーブランド管のことです)、他のオーケストラならばリハーサルが終わる地点から練習が始まる」と豪語していました。
そして、クリーブランドのオケこそが自分にとって最良のパートナーであることを何度も明言していました。
さらに、私たちは70年の東京ライブというとんでもない録音も持ってしまったので、どうしてもこの64年のスタジオ録音のポジションは低くならざるを得ないのです。
しかし、それはセルを愛するものにとってのスタンスであって、当然の事ながら、何もシベリウスをそこまでまなじりを決して締め上げなくてもいいだろうという声があっても不思議ではないのです。
なんと言っても、この交響曲はシベリウスの田園交響曲とも言われる作品なのです。
そう考えれば、この「ほどよい緩さ」と「ほどよいアンサンブル」で、それでいてフィナーレに向かってじわじわと盛り上がっていく音楽はそれなりに感動的だとも言えます。
おそらく、セルにしてもそれほど五月蠅いことは言わないで、ザックリと仕上げた感じなのでしょう。
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よせられたコメント
2017-08-21:原 響平
- 1970年東京のライブ盤に出会わなければ、間違いなくシベリウス交響曲No2の代表盤だった録音。残念ながらセルはシベリウス作品を積極的に演奏しなかった。この演奏を聴くとセルの正確無比な性格とコンセルトヘボウ管弦楽団の緻密な再現能力が相まって、どこか物悲しくて北欧のメローな響きに統一された素晴らしい演奏。是非とも、他のシベリウスの交響曲を演奏・録音して欲しかった。さて、冒頭でも述べたが、1970年のライブ盤は、このコンセルトヘボウ管弦楽団の演奏とは真逆の演奏で、ライブ特有の熱気がみなぎった演奏。最終楽章は特に、血沸き肉躍るという表現がピッタリの演奏で、これがセルのライブ演奏の神髄とも言うべきもの。当時のセルの人気が絶頂期だったのも判る。特にクリーブランド管の金管は物凄く上手く、こんな演奏に出会う事はもう二度と無い。
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