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コンドラシン(Kirill Kondrashin) |チャイコフスキー:イタリア奇想曲 作品45
チャイコフスキー:イタリア奇想曲 作品45
キリル・コンドラシン指揮 RCA Victor Symphony Orchestra 1958年10月30日録音 Tchaikovsky:Italian Capriccio in A major, Op.45
気力・体力ともに充実した時期の作品
メック夫人からの不思議な資金援助で音楽院の仕事から解放され、さらには不幸な結婚生活の失敗からも立ち直って、気力・体力ともに充実した時期の作品です。
作品は、通して演奏されるのですが、細かく見ていくと5つの部分に分かれます。
<第1部:アンダンテ・ウン。ポーコ・ルパート>
冒頭のトランペットのファンファーレが印象的です。この旋律は、チャイコフスキーがローマに滞在しているときに聞こえてきた騎兵隊のラッパの響きに由来していると言われています。やがて、イタリア民謡「美しい娘さん」の旋律もあらわれて、イタリアの南国的情緒が大きなクライマックスを迎えます。
<第2部:アレグロ・モデラート>
音楽は4拍子になって優美な雰囲気に変わります。ここは、結構しつこく強弱記号が書き込まれていて、それをどのように受け取ってどのように扱うのかは指揮者によってかなり差が出る場面でもあります。
音楽は、再び第1部の旋律が登場して第3部へと引き継がれます。
<第3部:プレスト>
管楽器がメインとなって印象的なタランテランの旋律を歌います。タランテランとはナポリ発祥の舞曲で、ここで音楽はまた6拍子に戻り快活に踊り出します。
<
第4部:アレグロ・モデラート>
音楽3拍子になって落ち着きを取り戻し、第1部の民謡の旋律が重厚な響きで荘重に歌い上げられます。
<第5部:プレスト>
音楽は再び6拍子に戻って第3部のタランテランのの旋律が帰ってきます。ピアニシモで始まった音楽は次第に力をしていきクライマックスを迎えます。そして、その後に短い経過句を経て音楽は2拍子になって怒濤の終結に突き進んでいきます。
と言うことで、非常に分かりやすい構成、華やかなオーケストレーション、そして何よりも魅力的で美しい旋律が散りばめられているので、初演の時から絶賛されました。
なお、この作品はイタリア旅行の時に着想され、そのスケッチをもとに帰国後に完成されています。イタリア旅行の時のチャイコフスキーはそのあまりの刺激と魅力で舞い上がっていて、父の訃報に接しても帰国せず葬儀にも参加しないほどだったので、それはきわめて賢明な判断だったと言えます。
コンドラシン訪米時のRCA録音
コンドラシンの名前が西側に知られるようになったのは、クライバーンが第1回チャイコフスキー・コンクールで優勝したときの伴奏指揮者だったからです。コンクールの伴奏指揮者ほどつまらぬ仕事はないと思うのですが、世の中与えられた仕事を真面目にやっていると思わぬ幸運がほほ笑むこともあるという「一例」でしょうか。
クライバーンがその優勝によって一躍アメリカの国民的ヒーローになった話は今さら繰り返す必要もないでしょう。そして、レコード会社はヒーローとなったクライバーンを黙って見過ごすはずもなく、次々と録音のオファーを申し出ます。
これもまた当然と言えば当然のことです。
ところが、ここでコンドラシンに幸運が訪れます。
その録音の指揮者にクライバーンはコンドラシンを希望したのです。
チャイコフスキー・コンクールは、東西冷戦下で、ソ連が国家の威信をかけて開催したコンクールでした。それは政治的にはかなり微妙な立ち位置にあったはずなのですが、それでもコンドラシンはこの若いアメリカ人のために誠心誠意、伴奏に務めたのです。
そのコンドラシンの姿勢にクライバーンもまた音楽に寄せる誠意を強く感じていたのでしょう。
そして、政治的にも雪解けムードが漂う時期であったたためにコンドラシンの訪米は実現し、チャイコフスキーやラフマニノフの協奏曲の録音が行われたわけです。
しかし、レコード会社にしてみれば、西側でも名が知られるようになったコンドラシンをそれだけでかえすのは勿体ないと思ったのか、10月29日から30日にかけてセッションを組んでロシア物を録音しました。
10月29日録音
ハチャトゥリアン:組曲「仮面舞踏会」
カバレフスキー:組曲「道化師」 作品26
10月30日録音
リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲 作品34
チャイコフスキー:イタリア奇想曲 作品45
しかし、さらに調べてみるとこの録音を担当したのは「Lewis Layton(Engineer)・Richard Mohr(Producer)」という黄金コンビなのです。
また、スペイン奇想曲のヴァイオリンソロにわざわざ「Oscar Shumsky(オスカー・シュムスキー)」を招いています。普通はこんなところにソリストなどは招かずコンサートマスターが担当するのが普通です。
ですから、クライバーンの伴奏だけで帰すのは勿体ないというレベルではなく、RCAとしてはかなりの本気モードで取り組んだセッションだったことが窺われます。
なお、オーケストラの「RCA Victor Symphony Orchestra」というのは、諸説あるのですがその実体はよく分かっていません。ニューヨークフィルを主体としたオケだったという人(島護氏)もいるのでいろいろ調べてみたのですが、どうしても裏が取れませんでした。
おそらくは、いつものようにニューヨークのオーケストラメンバー(ニューヨークフィル・メトロポリタン歌劇場など)を中心に臨時編成したオケだと思うのですが、詳しいことははっきりしません。
と言うか、こういう覆面オケを使うのは契約上の問題があるからであって、レーベルとしてははっきりしたことが分かっては困るのですから、分からない方が普通なのです。
コンドラシンはその様な臨時編成のオケであるにもかかわらず、実にキビキビと全体を統率して切れ味鋭い音楽を生み出しています。そこには、いわゆる民族性に寄りかかった安易さなどは欠片も存在しません。
また、そう言う切れ味鋭い演奏を見事なまでにすくい取った「Lewis Layton(Engineer)・Richard Mohr(Producer)」の素晴らしさも指摘しておかなければなりません。
RCAは1954年から本格的にステレオ録音に取り組んでいますから、58年と言えばそれなりに勘所はつかめていた時期です。確かに時代の制約もあるので広大な音場表現というわけには生きませんが、切れ味鋭い高解像度の表現はコンドラシンの音楽作りと見事にマッチしています。
ただ、昨今の馬鹿ウマ・オーケストラを聴いている耳には、臨時編成のオケと言うこともあって少し雑かなと思う部分があるのが残念です。
ただし、その馬鹿ウマと思えるオケの技術はマルチ録音による徹底的な編集のたまものであることも事実です。本当にその様な音が現場で出ていたのかは疑問符がつくことが多いのもまた「隠された真実」です。
ここでのコンドラシンの録音はほぼワンポイント録音でしょうから、この録音の響きは紛れもなくそこで実際に鳴り響いていたものです。
それを考えればこれ以上を求めるのは贅沢に過ぎるのでしょう。
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