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ビーチャム(Thomas Beecham)|ヘンデル:メサイア
ヘンデル:メサイア
ビーチャム指揮 ロイヤルフィル 他 1947年録音
Handel:メサイア「序曲」
Handel:メサイア「第1部」
Handel:メサイア「第2部」
Handel:メサイア「第3部」
年末の裏定番
年末行事の定番と言えばクラシックの世界ではいうまでもなく「第9」ですが、このメサイアは「裏定番」ともいうべき存在です。毎年毎年第9ばっかりではあきるようなぁ!と言う話が出たのかどうかは知りませんが、クリスマスを中心としてアマチュアの合唱団がよく取り上げるようになっています。
このメサイアは「オラトリオ」という音楽形式なのですが、調べてみますと「宗教的道徳的内容の歌詞による叙事的な音楽作品。独唱、合唱、オーケストラなどを使用するが、舞台装置や演技を用いない点でオペラと異なる。」と書かれています。オラトリオとは、教会の祈祷室(オラトリウム)が語源となっているようで、本来は祈祷室などで宗教上の物語をわかりやすく伝えるための音楽作品だったそうです。
メサイアもそのような伝統に則って、次のような宗教的な題材を取り上げています。
第1部 救世主キリストの出現の預言と誕生
第2部 キリストの受難と死、復活
第3部 この世の終焉と最後の審判、永遠の生命
しかし、ヘンデルの時代になるとオラトリオは教会よりは大規模なオペラ劇場で演奏されるようになります。このメサイアなどはもとからその様な大規模劇場での上演を前提として作曲されており、教会で演奏されることはほとんどなかったようです。
つまり、衣に宗教はまとっていても、その実態はエンターテイメントにあったということです。実際、「メサイア」の台本を提供したチャールズ・ジェネンズは無神論者だったと言われています。
ですから、聞いてみれば分かるように、これは限りなく「オペラ」に近づいています。たとえヘンデル自身が自らが書いたハレルヤの合唱に「自分の目の前に天国の一切と、偉大な神を見たような気がする」と語ったとしても、この作品の本質は宗教音楽ではなく劇場音楽であるように想います。(こんな事を書くとクリスマスの時期にこの作品を一生懸命取り上げている教会関係者からお叱りを受けるかな・・・、それにそんな偉そうなことを書きながら楽曲のカテゴリーは宗教音楽に入れているし・・・^^;)
なお、この作品は18世紀にはいると当時のイギリス中産階級に広まった合唱運動の中で圧倒的に支持され、コヴェントガーデン劇場のオラトリオ・シリーズの締めくくりとして必ず演奏されることが習わしとして定着していきます。この風習がやがて日本にも伝わってきたのか、今日ではこのイギリスから遠く離れた極東の島国でも、年末の裏定番の地位を獲得するまでに至っているわけです。
例の編曲版ではありません
ビーチャムのメサイアと言えばユージン・グーセンスに依頼して編曲(改鼠?)した1959年録音の演奏が有名ですが、こちらはかなりまっとうな演奏です。ただし、メサイアには全く詳しくないユング君なので、ここではどのような版が使われているのかを見極める能力は全く持ち合わせていません。
ただし、録音時期から言ってもグーセンスによる編曲版でないことは確かですし、何よりもシンバルがドッシャーンと鳴ったりしませんから随分と心穏やかに聞くことができます。
ビーチャムは不幸なことに、あのたった一枚の演奏のために「爆裂型指揮者」に分類されてしまっていますが、その実態は誠実で手堅い演奏をする人だとユング君は思っています。
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