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コルトー(Alfred Cortot)|ショパン: ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調, Op.21
ショパン: ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調, Op.21
(P)アルフレッド・コルトー:ジョン・バルビローリ指揮 管弦楽団 1935年7月8日録音
Chopin:Piano Concerto No.2 in F minor, Op.21 [1.Maestoso]
Chopin:Piano Concerto No.2 in F minor, Op.21 [2.Larghetto]
Chopin:Piano Concerto No.2 in F minor, Op.21 [3.Allegro vivace]
僕は悲しいかな、僕の理想を発見したようだ

ナンバーリングは第2番となっていますが、ショパンにとって最初の協奏曲はこちらの方です。
1829年にウィーンにおいてピアニストデビューをはたしたショパンは、その大成功をうけてこの協奏曲の作曲に着手します。そして、よく知られているようにこの創作の原動力となったのは、ショパンにとっては初恋の女性であったコンスタンティア・グワドコフスカです。
第1番の協奏曲が彼女への追憶の音楽だとすれば、これはまさに彼女への憧れの音楽となっています。とりわけ第2楽章のラルゲットは若きショパン以外の誰も書き得なかった瑞々しくも純真な憧れに満ちた音楽となっています。
「僕は悲しいかな、僕の理想を発見したようだ。この半年というもの、毎晩彼女を夢見るがまだ彼女とは一言も口をきいていない。あの人のことを想っているあいだに僕は僕の協奏曲のアダージョを書いた」
友人にこう書き送ったおくように、まさにこれこそが青年の初恋の音楽です。
歴史的録音をきく醍醐味がここにあります
歴史的録音の大海をただよっていると、時々こういうとんでもない演奏に出くわして度肝を抜かれることがあります。こんなふうにショパンを演奏する人は今はもういないでしょう。もう少し正確に表現すると、「こんなふうにショパンを演奏できる人」はもういないというべきかもしれません。
これほどまでに微妙にテンポを揺り動かしながら、それが決して下品になることなく、この上もなく上質なロマンティシズムをただよわせることができる人は残念ながら思い当たりません。
今きくことができるショパンの演奏は、下品でなければ硬質にすぎて甘さが失われ、甘くなれば聞いているのが耐え難いほどに下品になってしまっています。
内田光子は「コルトーを聴いた時には、このスケベじじいと思うが、いざ自分でテンポ・ルバートして弾こうとすると、コルトーほどルバートの何たるかを知っていた人はいないことに気付く。」と語っていましたが、まさに言い得て妙です。
コルトーの凄さを再認識させられた録音でした。
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よせられたコメント
2009-09-20:カンソウ人
- コルトーは決してピアニストという枠に収まる芸術家ではないように思われます。パリでのラフマニノフの3番のコンチェルトの初演は、ロマン派ピアノコンチェルトの終着点を意識してのこと、技術的にも素晴らしかったと思われます。指揮者としてのワグナーのパリ初演は、この作曲家の存在が、つまり音楽がロマン主義敵芸術の頂点になった歴史的意味を意識しての物。本人の芸術家としての様式は表現主義的であり、フルトベングラーの指揮、ストラビンスキーの3大バレーの作曲、12音技法で発明者のシェーンベルクの作品、オスカーココシュカの絵画、文学ならば・・・。ピアノ教師として育てたたくさんの弟子の伸ばした個性のバラバラなこと。リパッティ、ケンプ、ハスキル、フランソワ、遠山慶子、・・・。カザルス、ティボーとの室内楽共演。ピアノ教則本、エチュードの数々。芸術的な評論の数々。音楽大学の運営。これだけの仕事をしていたらとても、自分のテクニックを落ち着いて磨くことはできなかったはずにしては、素晴らしい演奏。レコードだけでも相当数。
楽譜の読みは恣意的ではなく確固としたルールがある。しかし、新古典主義的な楽譜に正確とはまったく異なる。自分のイメージでは、新古典主義的な正確さは空間の座標軸がまっすぐなのであるが、コルトーの座標軸は歪んでいる。自分の感情で歪めたのではなく空間に行列を掛けて空間を歪めている。それを、詩情とかロマンとか音を聴いて呼んでいるのではないか、と思う。
2022-07-08:コタロー
- ショパンのピアノ協奏曲というと、もっぱら「第1番」を聴いてきました。
しかし、このサイトのおかげで様々な「第2番」に接する機会が増えていくと、最近ではむしろ「第2番」に心惹かれるようになったのです。
確かに、「第1番」は大向うを唸らせる華麗さにあふれていると思います。しかし「第2番」は性格が控え目ですが、じっくり味わって飽きの来ない独特な風合いを感じます。
そういえば、コルトーのショパンは、従来から「歴史的名盤」と呼ばれてきたのですね。
確かに、90年近く前の演奏でありながら、聴きづらさはまったく感じませんでした。これはかけがえのない、後世まで遺していきたい名演ですね。
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