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リヒャルト・シュトラウス:最期の4つの歌


(S)エリーザベト・シュヴァルツコップ ジョージ・セル指揮 ベルリン放送交響楽団 1965年9月1日~3日録音


最愛の作品の一つ

私はクラシック音楽のなかから一つだけ選べと言われれば困ってしまいますが、三つ選べと言われれば、バッハのマタイ、モーツァルトのフィガロ、そしてベートーベンからエロイカを選ぶと日頃から公言しています。そして、特別の計らいでもう一つ選んでいいと言われれば、躊躇わずにこの「最後の四つの歌」を選びます。

歌曲というジャンルはクラシック音楽のなかでは一番地味なジャンルではないでしょうか。とにかく退屈です。
しかし、この作品だけは最初から別格でした。初めて聴いたときは魂がふるえました。ユング君のなかに先入観として組み込まれているR.シュトラウスの姿からはずいぶんと距離感のある作品だったのですが、その距離感がまさにユング君にとってはストライクゾーンの「ど真ん中」だったのです。
R.シュトラウスという人物はユング君のなかにあってまさに「俗物」という言葉が一番ピッタリくる男でした。名誉欲も金銭欲も人一倍強かったようで、それ故にナチスとの関係も目先の欲に目がくらんで大きく踏み外してしまうことになり、戦後は全くの不遇のなかで最期をむかえることになりました。彼の作品は常に耽美的であり時にはグロテスクであり、それが俗物としてのシュトラウスの自画像であるようにユング君にはうつりました。

ところが、この作品からはその様な俗臭が一切ただよってきません。
シュトラウスは第二次大戦後の物質的、精神的荒廃のなかにある祖国ドイツを呆然と眺めながら、「ドイツ文化は終わった」と深く嘆きながらこの作品を生み出したと言われています。そう言う意味では深い諦観がこの作品を貫いている事は間違いないのですが、それでいながらなんといえない艶麗たる優美さが失われていないことが驚きです。
この両者の絶妙なバランスのなかから、なんといえない高貴さと品格の良さが匂い立ってくるところにこの作品の真価があります。

この作品が発表されたときは、すでに新ウィーン学派の音楽を乗り越えて、戦後の前衛音楽運動が勃興し始めた時でした。そう言う時代背景にこの作品を置いてみれば、時代錯誤としか思えないほどに古色蒼然たる作品であったことは否めません。シュトラウス自身もその事は十分に認識していたようで、「私はもう過去の作曲家であり、私が今まで長生きしていることは偶然に過ぎない」と語っています。
ところが、21世紀になり先の100年を総括できる位置から振り返ってみれば、真に意味のある創造的営みは何だったのかは明らかです。バルトークのピアノコンチェルト3番やシュトラウスのこれらの作品を聴くと、戦後の失われた時間の大きさに暗澹たる気持ちになるのはユング君だけではないでしょう。

なお、余談ながら「最期の4つの歌」という印象的なタイトルは作曲者が関与したものではなくて出版社が勝手にネーミングしたものです。また、現在一般的に通用している曲順もこの出版社が勝手に決めたものであり、シュトラウス自身は初演時に「眠りにつくときに」「9月」「春」「夕映えのなかで」を希望しました。
興味ある方は一聴あれ。ただし、とてつもなく音質は悪いので悪しからず。

(S)キルステン・フラグスタート ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1950年5月22日録音






しかし、今になってみればこの出版社の判断は全て正しかったようであり、必ずしも作曲家の判断が全能ではないことをこの一事からでも知ることができます。


第1曲「春」
薄暗い洞窟の中で
わたしは長いこと夢見ていた
お前の樹々と青い空を
お前の薫りと小鳥の歌を

今やお前は輝かしく華麗に装い
そのとびらを開き
光に満ちあふれて
奇跡のようにわたしの前にいる

お前はわたしを再び見いだし
わたしを優しくいざなう
お前の存在の至福に
わたしはふるえる

第2曲「9月」
花園は悲しみに沈み
雨が冷たく花々に降りそそぐ
夏はおののきながら
静かにその最期の時を待つ

アカシアの高い枝からまたひとひら
葉が黄金のしずくとなって散って行く
消えゆく花園の夢の中で
夏はいぶかしげに力なくほほえむ

しばらくはなおバラの花のもとに
夏はとどまり憩いを待ち望む
やがてゆっくりと
疲れたその目を閉じる

第3曲「眠りにつくときに」
この一日にわたしは疲れ果てた
わたしの心からの願いは星のきらめく夜が
わたしを優しく迎えてくれることだ
眠くなった子供を抱き取るように

手よ、すべての仕事を止めるがよい
頭もすべての思いを忘れるのだ
今わたしのすべての感覚は
眠りに沈むことを欲している

そして魂は思いのまま
その翼を広げて飛ぼうとしている
夜の魔法の世界で
深く、とこしえに生きるため

第4曲「夕映えのなかで」
わたしたちは手をとりあって
苦しみや喜びの中を歩いてきた
そしていま静かな土地の上に
さすらいの足を止めて憩う

まわりの谷は沈み
空には闇が近づいている
二羽のひばりだけが夜を夢見るように
夕もやの中に昇っている

こっちに来なさい、小鳥たちはさえずらせておこう
もうすぐ眠りの時が近づくから
この二人だけの孤独の世界で
はぐれないようにしよう

おお、広々とした、静かな平和よ!
夕映えの中にこんなにも深くつつまれて
わたしたちはさすらいに疲れた
これが死というものなのだろうか

無人島の一枚


クラシック音楽ファンの間によく話題となるのが「無人島の一枚」です。ちょっと突っ込みを入れれば、人も住んでいないと言うことなら当然電気も通っていないだろうから、そんなところへレコードやCDを持っていってどうするつもりだ、と言うことになるのですが、まあそう言う細かいことは気にせずに、何があっても手放したくない一枚というニュアンスで語られる話題です。

この一枚に関しては、私は長い間バッハの「マタイ受難曲」、それも当然のことながらリヒターが1957年に録音したものをあげていました。ここでも、あれはCDでも一枚には収まらずに3枚組ではないか!等という突っ込みはご遠慮ください^^;

そして、一枚ではあまりに気の毒だから3枚まで許してやると言われれば、そこに、ベートーベンの「エロイカ」とモーツァルトの「フィガロの結婚」をあげていました。
「エロイカ」に関しては「セル指揮クリーブランド管の57年盤」、フィガロに関してはそれほど強い思いこみはないのですが、できれば「カール・ベーム指揮ベルリン・ドイツ・オペラ管の68年盤」を持って行ければと考えていました。

そこへ、さらに番外編を一枚許してもらえれば、このリヒャルト・シュトラウスの「4つの最後の歌」をあげていました。
これに関しては「セル指揮シュヴァルツコップによる65年盤」以外には考えられませんでした。

しかし、年をとれば人は変わります。
特に、耐久力が落ちてくるので(^^v、マタイやフィガロみたいにCDでも3枚組なるような音楽だと、よほどの覚悟を決めないと聞き通すのがしんどくなってきます。
あれほど好きだった「エロイカ」も、この年になると「頑張れ、頑張れ!」と叱咤激励されているような気になってではいささか鬱陶しくなってきます。

と言うことで、かつては番外編だった「4つの最後の歌」が、最近は「無人島の一枚」へとランクアップしてきたような気がします。とりわけ、年を重ねるにつれて、セルの棒が描き出す「夕映えの中で」の世界への共感がますます深くなってきます。
そのオーケストラ伴奏にのってシュヴァルツコップが幽かに、そして消え入るように「おお、広々とした、静かな平和よ!夕映えの中にこんなにも深くつつまれて」と歌うとき、クラシック音楽などというものを聞くことの幸せの全てがつまっているような気がします。

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