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ジュリアス・カッチェン(Julius Katchen)|ベートーベン:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 作品19
ベートーベン:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 作品19
(P)ジュリアス・カッチェン ピエロ・ガンバ指揮 ロンドン交響楽団 1963年6月17日~19日録音
Beethoven:Piano Concerto No.2, Op.19 [1.Allegro con brio]
Beethoven:Piano Concerto No.2, Op.19 [2.Adagio]
Beethoven:Piano Concerto No.2, Op.19 [3.Rondo. Molto allegro]
一番最初に完成したピアノ協奏曲

この作品は現在は第1番とされているハ長調のピアノ協奏曲よりも早く作曲されていて、完成も1795年頃だろうと推測されています。これがいわゆる第1稿と言われるものですが、その後ハ長調のピアノ協奏曲を作曲する過程で不満を感じるようになったようで1798年に大幅な改訂作業を行いプラハにおいて初演が行われました。
その後、1801年にピアノのパート譜をきちんとした楽譜の形に書き込んで作品19として出版されたわけです。ただし、第1番の協奏曲には自信をこめて「大協奏曲」と題して出版したのに対して、こちらの方は控えめに「協奏曲」として出版されました。ベートーベン自身も「この曲は自分の作品にとって最良のものではない」と記しています。
オーケストラの編成は第1番と比べるとかなり小さくて、ティンパニもクラリネットも省かれています。聞いてみれば分かるように、この作品は明らかにモーツァルトのピアノコンチェルトを想起させます。金管楽器としてはホルンしか使われていないこともあって、全体的にはとても優雅な雰囲気が前面にでていて、ベートーベンらしいアクティブな面は第1楽章の冒頭などに少し感じ取れるぐらいです。
ベートーベンのピアノ協奏曲の中では一番影の薄い作品と言わざるを得ません。
さえざえと晴れ渡った冬の朝のような佇まい
「ジュリアス・カッチェン」と言うピアニストは多くの人の記憶からほとんど消え去っているかもしれませんが、それでも希有の「ブラームス弾き」と言うことで未だに記憶に留めておられる方はいるかもしれません。ですから、彼が演奏する「ブラームス以外」の作品となると、気の毒なまでに視野の外と言うことになります。
いや、そんな事はないぞ!!と言う方もおられるかもしれませんが、まさにこれからという42歳でなくなってしまったキャリアと、その死(1969年)から50年近くの時間が経過してしまったことを考えれば、そう言っていただける方はほんの一握りにしかすぎないでしょう。
しかし、彼の「ブラームス以外」の作品をあらためて聞き直してみると、やはり忘れ去ってしまうには惜しいと思わざるを得ません。
例えば、ベートーベンの5つの協奏曲は全て録音が残っていますし、ソナタや変奏曲に関しても少なくない録音が残っています。そして、陳腐な言い回しかもしれませんが、そのどれもがさえざえと晴れ渡った冬の朝のような佇まいを見せているのです。
冬の水一枝の影も欺かず 中村草田男
鏡のような冬日の水面に、全ての葉を落としてしまった木々の枝が映っていたのでしょう。
その水面は葉を落としきった枝のどんな細かい部分まで欺くことなくくっきりと映し出しているのです。そして、その水面に映し出された木々の姿は冬の木々が内包する真実を実像以上に鮮やかに描き出しています。
カッチェンのピアノもまた、この冬の木々を映し出した水面のようにベートーベンの真実を描き出しているように感じるのです。
カッチェンが残したベートーベンの協奏曲のスタジオ録音は以下の通りです。
- ベートーベン:ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 作品15:ピエロ・ガンバ指揮 ロンドン交響楽団 1965年1月18日~20日録音
- ベートーベン:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 作品19:ピエロ・ガンバ指揮 ロンドン交響楽団 1963年6月17日~19日録音
- ベートーベン:ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 作品37:ピエロ・ガンバ指揮 ロンドン交響楽団 1958年9月16日~17日録音
- ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58:ピエロ・ガンバ指揮 ロンドン交響楽団 1963年6月17日~19日録音
- ベートーベン:ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 作品73 「皇帝」:ピエロ・ガンバ指揮 ロンドン交響楽団 1963年12月15日&18日録音
「ピエロ・ガンバ(1936年~)」は今も存命で、ニューヨークを中心として未だに指揮活動も続けているようです。11歳で指揮者としてデビューしたという「神童」なのですが、これを聞く限りでは20歳で「ただの人」になってしまったことは間違いないようです。
カッチェンのピアノはどれを聞いても申し分はないのですが、それをサポートするオケはいかにも「緩い」のです。
それから、カッチェンというピアニストは興が乗ってくるとテンポが速くなって前のめりになる癖があると指摘されるのですが、この録音ではそれもまた音楽の勢いとして感じ取れるので、決して不自然さは感じません。
ピアノに関してだけなら、悪くない録音だと言い切っていいのではないでしょうか。
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