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サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ 作品28


レナード・バーンスタイン指揮 (vn)ジノ・フランチェスカッティ ニューヨーク・フィル 1964年1月6日録音


サラサーテとの合作?



この作品、調べてみるとサン=サーンスがサラサーテのために1863年、28歳の時に作曲した、と書かれているのですね。ところが、さらに調べてみると完成したのが5年後の1868年、さらに初演はそこからさらに4年後の1872年にサラサーテによって行われているのです。
ずいぶん悠長な話ですが、19世紀というのはそれくらいのスピード感だったのでしょうか。
しかし、聞くところによると、この作品はとても技巧的で難しそうに見えるのですが(実際、かなり難しいことは間違いないのですが)、「無理」を強いられることはなく、それなりのテクニックを持ったヴァイオリニストには気持ちよく演奏できる作品らしいです。そして、その「努力」が聞き手にしっかり伝わるという点では、演奏家にとっては「報われる」作品でもあるらしいです。
おそらく着手から完成までに5年の歳月がかかったのは、そう言う演奏上から来る要請をサラサーテが細かくサン=サーンスに伝え、それをサン=サーンスがスコアにしていくという「キャッチボール」に時間がかかったのではないでしょうか。(あくまでも、私の想像ですが・・・)

さて、この作品はタイトルのまんまで、前半の「序奏」と後半の「ロンド」に分かれています。
「序奏」は依頼者のサラサーテに敬意を表してかジプシー風のメランコリックな音楽が切々と歌われます。そして、この「歌」が弦楽器の「全奏」で断ち切られると後半の華やかな「ロンド」に突入します。おそらく、この一粒で二度おいしい構成がこの作品の人気を支えていると思います。
ロンド部分は「カプリチオーソ」と題されているように、まさに気まぐれに、様々な感情が入り乱れ絡み合います。ですから、ソリストによってこのあたりはかなりテンポが伸び縮みするようで、オケにとっては結構大変なようです。しかし、聞き手にとってはソリストがこの部分をどう料理するのか聞き所ではあります。

不思議な男


バーンスタインとフランチェスカッティのコンビによる録音は以下の通りではないかと思います。オケは言うまでもなくニューヨークフィルです。


  1. ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77 1961年4月15日録音

  2. シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47 1963年1月15日録音

  3. ショーソン:詩曲 作品25 1964年1月6日録音

  4. ラヴェル:ツィガーヌ 1964年1月6日録音

  5. サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ イ短調 作品28 1964年1月6日録音



聞いてみると、一番最初に録音したブラームスだけが明らかに異なっています。
バーンスタインに率いられたニューヨークフィルは元気にいっぱいに鳴り響いていて、彼らのマッチョな本質が前面に出てきています。しかし、それはソリストにとってはかなり困った話だったようです。
ソロ楽器がピアノであるならば、それはそれで「勝負したろか!」と大阪弁的雰囲気になることも可能でしょうが、ヴァイオリンではあまりにも分が悪すぎます。そして、フランチェスカッティというヴァイオリニストはそう言う分厚い響きを突き抜けてヴァイオリンを響かせるというタイプではありません。
どちらかといえば、オケは伴奏に徹してもらって、それを背景にして曲線を多用しながら美音で勝負するタイプです。

この若造との最初の録音では、その若造のペースでまんまとしてやられた、と言う思いがあったのではないでしょうか。
2回目からの録音では、明らかにオケが控えめにしか鳴っていません。録音の方も、ブラームスの方はこの時代のバーンスタインの特長である「録りっぱなし」の雰囲気が濃厚なので、非常に生々しい音に仕上がっています。しかし、63年のシベリウスの方では、そう言う録りっぱなしのままで
結果として、バーンスタインの美質がかなりの部分スポイルされているのですが、不思議なことに彼はそう言うことにはあまり頓着しないようなのです。おそらく、一仕事終わった後にはいつものように上機嫌で帰っていったような気がするのです。
そう言う辺りが、バーンスタインという男の不思議です。

ただし、結果として、仕上がった音楽としては圧倒的にブラームスが面白いです。ここでは、いつもダンディで涼しい顔をしている雰囲気のフランチェスカッティが結構ムキになってオケと勝負しています・・・と言うか、そうしないと自分の音がオケの中に埋没してしまう状態に追いやれています。
おそらくは、聞いている方は面白くても、やっている方にしてはたまったものではないと言うことだったのでしょう。

そして、シベリウスでは、その反動としてあまり面白くない演奏となったので、最後の顔合わせでは自分の土俵で勝負できるフランス音楽に絞り込んだと言うことなのでしょう。
これらは基本的にはオーケストラ伴奏付きのヴァイオリン曲ですから、自分の美質が遠慮なく発揮できます。
バーンスタインにしては、どう考えても面白くもない仕事だったと思うのですが、それでもやるべき事はきちんとやっておきましたという演奏になっています。当然の事ながら、それなりに完成度の高い演奏にはなっていても、ブラームスの時のようなエキサイティングなことにはなりようがありません。

そして、贅沢で我が儘な聞き手はそう言うことに不満を口にするのですから、なるほど芸術家というものは大変な仕事だと言わざるを得ません。

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