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R.シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」作品28

クレメンス・クラウス指揮 ウィーンフィル 1950年6月16日録音

Richard Strauss:Till Eulenspiegels lustige Streiche, Op.28


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ロンド形式による昔の無頼の物語

シュトラウスにとっては4作目にあたる交響詩であり、まさに脂ののりきった円熟期の作品だと言えます。どこかで、吉田大明神が「西洋音楽史における管弦楽作品の最高傑作」と評していたのを読んだことがありますが、本当に長い西洋音楽の歴史の中で積み上げられてきた管弦楽法の全てが詰め込まれた作品だと言えます。

さて、この交響詩のタイトルとなっているティルなる人物ですが、これは日本で言えば吉四六さんみたいな存在といえるのでしょうか、ドイツ人なら誰もが知っている伝説的な人物だそうです。14世紀に実在した靴職人という説もあれば、同時代に存在したであろう似たような人物像を集めて作られたのがティルだという説もあるそうです。
しかし、どちらにしても、どんな権力者に対しても平気でイタズラをふっかけては大騒ぎを引き起こす人物として多くの民衆に愛された人物であることは間違いありません。そして、このシュトラウスの交響詩の中では、最後につかまえられて裁判にかけられ、絞首刑となって最期をむかえるのですが、伝説の方では病で静かな最期をむかえるという言い伝えもあるそうです。
シュトラウスは、この作品のことを「ロンド形式による昔の無頼の物語」と呼んでいたそうですから、最後は病で静かに息を引き取ったのでは様にならないと思ったのでしょうか、劇的な絞首刑で最後を締めくくっています。

なお、この交響詩は他の作品と違って詳しい標題の解説がついていません。それは、あえて説明をつけくわえる必要がないほどにドイツ人にとってはよく知られた話だったからでしょう。
が、日本人にとってはそれほど既知な訳ではありませんので、最後にかんたんにティルのストーリーを記しておきます。

最初はバイオリンによる静かな旋律ではじまります。いわゆる昔話の「むかしむか・・・」にあたる導入部で、それ続いて有名な「その名はティル・オイレンシュピーゲル」というホルンの主題が登場します。
これで、いよいよ物語りが始まります。

(1)フルートやオーボエが市場のざわめきをあらわすと、そこへティルが登場して品物を蹴散らして大暴れをし、魔法の長靴を履いて逃走してしまいます。
(2)僧侶に化けたティルのいいかげんな説教に人々は真剣に聞きいるのですが、やがてティルは退屈をして大きなあくびをして(ヴァイオリンのソロ)僧侶はやめてしまいます。
(3)僧侶はやめて騎士に変装したティルは村の乙女たちを口説くのですがあっさりふられてしまい、怒ったティルは全人類への復讐を誓います。(ユニゾンによるホルンのフォルティッシモ)
(4)怒りの収まらないティルは次のねらいを俗物学者に定め議論をふっかけます。しかし、やがて言い負かされそうになると、再びホルンでティルのテーマが登場して、元気を取り戻したティルが大騒ぎを巻き起こします。(このあたりは音楽と標題がそれほど明確に結びつかないのですが、とにかくティルの大騒ぎを表しているようです)
(5)突如小太鼓が鳴り響くと、ティルはあっけなく逮捕されます。最初は裁判をあざ笑っていたティルですが、判決は絞首刑、さすがに怖くなってきます。しかし刑は執行され、ティルの断末魔の悲鳴が消えると音楽は再び静かになります。

音楽は再び冒頭の「むかしむか・・・」にあたる導入部のメロディが帰ってきて、さらに天国的な雰囲気の中でティルのテーマが姿を表します。そして、最後はティルの大笑いの中に曲を閉じます。


こんなにも面白いリヒャルト・シュトラウスの演奏があったのか

ふと更新履歴を確認していて、クレメンス・クラウスはシュトラウス一族のワルツやポルカ、喜歌劇「こうもり」の録音しかアップしていないことに気づきました。確かに、クラウスはウィーンフィルによるニューイヤーコンサートの生みの親ですから、シュトラウス一族とは切っても切れない関係にはあるのですが、それではまるでお正月になるたびに小遣い稼ぎのためにやってくる、頭に「ウィーン」と名の付いた得体の知れないオケとその指揮者など同類のように勘違いされそうです。(さすがに、そこまでは思われないか・・・^^;)

そこで、棚の奥の方から彼の師匠筋に当たるリヒャルトの方の録音を引っ張り出してきました。古い録音ですし、あまり期待もしていなかったのですが、これが聞いてみるとどれもこれも実に興味深い演奏なのです。
正直言って、こんなにも面白いリヒャルト・シュトラウスの演奏があったのかと、心底感心させられます。この上もなく蠱惑的で優美でしなやかで、それでいて面白さに満ちあふれた音楽による「お話」がここにはあります。

クラウスという人の経歴をザッと振り返ってみるとこんな感じです。


  1. 1929年:フランツ・シャルクの後任としてウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任

  2. 1930年:ヴィルヘルム・フルトヴェングラーの後任としてウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者に就任する。

  3. 1934年:国立歌劇場を失脚してウィーンを離れる。

  4. 1935年:ナチスと衝突して辞任したエーリッヒ・クライバーの後任として、ベルリン国立歌劇場の音楽監督に就任する。

  5. 1937年:ナチスによって辞任に追いやられたハンス・クナッパーツブッシュの後任としてバイエルン国立歌劇場の音楽監督に就任する。

  6. 1941年:ナチスによりザルツブルク音楽祭の総監督に任命される。



若くしてウィーンを手中に収めたものの、結局は数年で失脚し、その後はナチスからの引きで要職を歴任したのが戦前のクラウスでした。確かに立派な経歴なのですが、その後の歴史を知るものにとってはほぼ「最悪」の道行きです。
それでも、彼はナチスの党員ではなかったことを持って擁護する向きもあるのですが、最近では1933年4月に夫人とともに入党を申し出た事実が明らかになっています。幸いだったのは、その入党の申し込みが、ナチスからも職を求めるための「見え透いた日和見行為」として拒否されたことです。
それでも、「入党」していなかったという事実は重くて、戦後すぐは演奏活動が禁止されたものの非ナチ化裁判において無罪を勝ち取る大きな要因となりました。


  1. 1945年:ナチスに協力したという容疑で連合軍により演奏活動の停止を命ぜられる。

  2. 1947年:非ナチ化裁判において無罪となり、活動を再開する。

  3. 1954年:メキシコへ演奏旅行に出かけ、演奏会直後に心臓発作のため急逝。



トスカニーニ流に言えば「いかなる理由があれ、ナチスに荷担したものは全てナチスである」はずなので無視してもいいかとは思うのです。さらに言えば、戦時中にフルトヴェングラーがクラウスのことを「ベートーベンの演奏も出来ない」のでは「ドイツ本来の音楽家と呼ぶことはまったくできません」と批判したように本流の音楽家でないことも否定しようがないのです。

ですから、歴史の中に消えていっても仕方のない存在のような気もします。
それでも、ニューイヤーコンサートのシュトラウスだけでなく、彼の師匠筋に当たるシュトラウスの方も、最初にも述べたように、困ってしまうほど面白いので困ってしまうのです。

昨今は、シュトラウスの交響詩などと言えば、スコアを丹念に分析して、それをこの上もなくバランスよく精緻に響かせる演奏スタイルが一般的です。そういうスタイルで演奏されると、響きは蒸留水のように薄くさらさらしていて、美しいことは確かに美しいのです。そういうベクトルでこのクラウスの演奏を聴いてしまうと、これは正直言ってアマチュア以下です。
しかし、弦楽器の優美な響き、管楽器のハッとするような美しさ、そして何よりも「交響詩」とは「音楽によるお話」だというスタンスにたてば、これほどまでに分かりやすくて楽しい演奏(お話)は他には思い当たりません。

もちろん、同じ弟子筋でも、セルなんかになるとそういう面白さをより高い次元で実現しているので、そういうものと較べてしまうと一時代前の音楽家だとは思います。
しかし、たまにこういう一昔前の音楽を聞いていると、ひたすら精緻にバランスよく鳴らすだけの演奏に接したときに、「お前さん。頑張っているのは認めるが、音楽ってのはそれだけじゃ足りないものがあるんだよ。」と言うことに気づかせてくれます。

そして、あらためて60を超えたばかりの彼の死の早さには驚かされます。
戦前・戦中に「ナチスの指揮者」と言われたことと、その言われても仕方のない己の活動を強く恥じ、反省する弁を戦後になってから残しています。しかし、そういう政治的荒波は彼の精神と肉体を深く傷つけ、それが彼の早い死を招いたことは間違いないようです。

彼にカラヤンの半分程度の図太さと肝の太さがあり、その結果としてあと10年の活躍が許されていれば、随分と面白い録音をたくさん残してくれたかもしれません。
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