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ワルター(Bruno Walter)|マーラー:交響曲第9番
マーラー:交響曲第9番
ワルター指揮 ウィーンフィル 1938年1月16日 ウィーンでのライブ録音
Mahler:交響曲第9番 ニ短調 「第1楽章」
Mahler:交響曲第9番 ニ短調 「第2楽章」
Mahler:交響曲第9番 ニ短調 「第3楽章」
Mahler:交響曲第9番 ニ短調 「第4楽章」
9番の呪い
「9番の呪い」という言葉があるのかどうかは知りませんが、この数字に異常なまでのこだわりを持ったのがマーラーでした。
彼は偉大な先人たちが交響曲を9番まで作曲して亡くなっていることに非常なおそれを抱いていました。ベートーベン、ブルックナー、ドヴォルザーク、そして数え方によって番号は変わりますが、シューベルトも最後の交響曲は第9番と長く称されてきました。(マーラーの時代に「グレイト」が9番と呼ばれていたかどうかはユング君には不明ですが)
そんなわけで、彼は8番を完成させたあと、次の作品には番号をつけずに「大地の歌」として9番目の交響曲を作曲しました。そして、この「大地の歌」を完成させたあと、9番の作曲にとりかかります。
彼は心のなかでは、今作曲しているのは9番という番号はついているが、実は本当の9番は前作は「大地の歌」であり、これは「9番」と番号はついていても、本当は「10番」なんだと自分に言い聞かせながら作曲活動を続けました。
そして、無事に9番を完成させたあと、この「9番の呪い」から完全に逃れるために引き続き「10番」の作曲活動に取りかかります。
しかし、あれほどまでに9番という番号にこだわり続けたにもかかわらず、持病の心臓病が急に悪化してこの世を去ってしまいます。
結局は、マーラーもまた「9番の呪い」を彩る重要メンバーとして、その名を刻むことになったのはこの上もなく皮肉な話です。
しかし、長く伝えられてきたこの「物語り」にユング君はかねてから疑問を持っていました。
理由は簡単です。
死の観念にとりつかれ、悶々としている人間がかくも活発な創造活動を展開できるでしょうか?
ユング君のような凡人にとってはとても創造もできない精神力です。
この第9番の交響曲は、このような逸話もあってか、ながく「死の影」を落とした作品だと考えられ、そのような解釈に基づく演奏が一般的でした。
しかし、「死の影におびえるマーラー」というのが常識の嘘であり、彼の死も、活発に創造活動に取り組んでいる最中での全く予期しない突然のものだったとすれば、この曲の解釈もずいぶんと変わってきます。
果たして、最後の数十小節をかくもピアニシモで演奏をしていいものでしょうか。疑問に感じながらも、常識にしたがったMIDIを作成してしまう、小市民のユング君であります。
歴史的なライブ録音
しかし、恥ずかしながらその辺の経緯についてはユング君はあまり詳しくは知らないのです。ただ、ナチスによる執拗な妨害をはねのけて行われた演奏会であることは聞いたことがあります。
確かに、1938年のウィーンにおいてマーラーの作品が演奏されたということは驚くべき事実です。また演奏も、時代の雰囲気を反映してか、異様なまでの緊張感に包まれていて、その価値は21世紀の今にあっても失われることはありません。また、至る所で聞くことのできるウィーンフィルの弦楽器群の美しさも出色です。
それにしても、ワルターという人は不思議な人です。
ある意味では、フルトヴェングラー以上にナチスによってその人生を翻弄された人です。
1933年、ナチスの台頭でドイツを離れますが、その移った先がオーストリアでした。そのオーストリアも、このマーラーの9番を置き土産のようにして、ナチスの併合によって離れざるを得なくなります。そして、移った先がなんとフランスです!!
当然、翌39年の第二次大戦の勃発で結局はアメリカに亡命せざるを得なくなります。
もう少し目先が利けば33年の時点でさっさとアメリカに移住したのでしょうが、言葉を換えれば、そこまでしてでも「ヨーロッパ」にこだわったのがワルターだといえます。そういう、ヨーロッパ文明にぎりぎりまでこだわり続けたワルターという人の美質がもっともよく感じ取れるのがこの録音ではないかと思います。
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よせられたコメント
2009-12-08:esuran
- ゆったりとした両端楽章の美しさに胸が締め付けられます。
ワルターを耽美的と評する人は多いですが、情緒におぼれるのではなく、オーケストラを律する緊張感をもって演奏していることがこの録音でわかりました。
ところで、第4楽章の真ん中あたりで、音が飛ぶのは私のPC環境のせいでしょうか?
<ユング君の追記>
これは私がもっている音源に原因があるようで、いいものと差し替えないといけないと思っています・・・と言いつつ、数年放置なのですが(^^;・・・。
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