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ベルク:ルル組曲

ドラティ指揮 ロンドン交響楽団 1961年6月19~24日録音

Berg:Lulu Suite [1.Rondo]

Berg:Lulu Suite [2.Ostinato]

Berg:Lulu Suite [3.Lied der Lulu]

Berg:Lulu Suite [4.Variationen]

Berg:Lulu Suite [5.Adagio]




奔放な女性ルルへの深い共感

ルクの最大の貢献は、無調の手法を使って大規模な作品を作り上げることが可能であることを現実に証明した事です。その意味では、彼の最初のオペラであり、同時に無調の手法を使って書かれた最初のオペラである「ヴォツェック」の意義は非常に大きいと言えます。
ベルクは「ヴォツェック」の成功に続けて取り組んだのが、魔性の女「ルル」を主人公に据えた背徳のオペラでした。

ベルクという人は常識的な家庭人として語られることが多いので、欲望の赴くままに破滅的な人生を歩んだ「ルル」という女性を取り上げたことに違和感を覚える人も多かったようです。しかし、近年になって、そんな良き家庭人であったベルクにハンナ・フックス=ロベッティンという不倫相手がいたことが知られるようになりました。
ハンナに対する抑えがたい情熱と、その情熱に対する罪の意識がこの当時のベルクを苦しめていたことが、ハンナに宛てた恋文から知られるようになってきたそうです。死んで何十年もたってからそんな恋文が公にされるなんて、・・・偉くなるのも時には困りものですね。(^^;

このオペラのプロローグで猛獣使いが登場します。そして、彼はルルを「かわいい蛇」として紹介します。
これが意味することは、「アダムとイブ」が刷り込まれている西欧人にとっては自明のことなのでしょうが、そうではない東洋人にとっては知識として理解できても、それをある種の実感をともなって了解するのは難しいようです。ですから、ルルのことを「性欲という原初的な絶対者」とか「地の霊によって人間に禍をもたらすために使わされた誘惑の蛇」とか説明されても、やはり「知識」の域を出ないですね。

しかし、このオペラを通してルルという女性に出会えば、その「かわいい蛇」が意味するものが何となく了解できそうな気がします。
それにしても、この「かわいい蛇」の生き方は凄まじいです。このオペラを見れば、どんな昼メロだってただの子供の遊びに見えてしまうはずです。

ルルは世間のモラルなどというものは一切気にすることなく己の本能のままに生きます。そんな奔放なルルには天性の媚態と破壊的な魔性が備わっていて、その魅力に男どもは次々と魅入られて己が身を破滅させていきます。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

第1幕

ルルは貧民街にいたところを新聞の編集長シェーン博士に拾われた。シェーン博士は愛人関係を続けながらも、ルルを初老の医事顧問官(ゴル博士)と結婚させる。
ルルの魔性に魅了された画家がルルに言い寄る。そこに医事顧問官がやってきて、心臓発作で死ぬ。
ルルは画家と再婚するが、画家もルルの汚れた過去を知り、ショックのため自殺する。
劇場の踊り子になったルルの楽屋をシェーン博士が訪問する。シェーン博士は許嫁を連れて観劇に来たのだが、もはやルルから逃げられなくなったことを悟り、ルルの口述で婚約者への別れの手紙を書く。

第2幕

シェーン博士はルルと結婚する。しかし、ルルの回りには同性愛者のゲシュヴィッツ伯爵令嬢、貧民街時代に関係のあったシゴルヒ、力技師といった怪しげな人間がいて、さらに息子のアルヴァまでルルにのぼせあがってしまう。嫉妬に狂ったシェーン博士はルルにピストルで自殺するよう迫る。しかし、ルルは「誰かが私のために自殺したって、私の価値は下がったりしない」と言い返し、そのピストルでシェーン博士を射殺する。
サイレント映画で、ルルの逮捕・裁判・投獄が描かれる。
しかし、ゲシュヴィッツ伯爵令嬢がコレラで入院中のルルと入れ替わり、ルルは脱獄に成功する。

第3幕
ルルはゲシュヴィッツ伯爵令嬢、アルヴァ、力技師とともにパリに逃げる。そこにシゴルヒも到着して、ルルをゆする。ちょうど力技師から、金をくれなければ警察に密告すると脅されていたので、ルルはシゴルヒに力技師を始末してくれるよう頼む。シゴルヒが待つ連れ込みホテルに力技師を誘い込む役はゲシュヴィッツ伯爵令嬢に頼む。その間にルルはアルヴァと逃亡する。
ルルはロンドンで売春婦をして暮らしている。アルヴァとシゴルヒもロンドンにいる。さらにパリから、落ちぶれたなりのゲシュヴィッツ伯爵令嬢が、画家が描いたルルの肖像画を持って到着する。
ルルが黒人の客を連れて帰る。黒人は前払いを拒否し、争っている最中にアルヴァが殺される。
ゲシュヴィッツ伯爵令嬢がピストル自殺を思案しているところに、ルルが別の客を連れてくる。しかし相手は切り裂きジャックで、ルルを虐殺し、さらにゲシュヴィッツ伯爵令嬢も刺して逃げる。重傷を負ったゲシュヴィッツ伯爵令嬢の、「ルル、私の天使!」という悲痛な叫びによりオペラは閉じられる。

引用終わり: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

しかし、問題は、ベルクがこのオペラを完成させることなく亡くなってしまったことです。第2幕までは完成されていたのですが、第3幕に関しては最初の268小節しか完成されておらず、それ以降はおおよその楽器編成の指示と抜粋楽譜だけが残っていただけのようです。さらに、第3幕終結部が組曲という形で抜粋・作曲されていました。

この抜粋による作品が『オペラ"ルル"からの交響的小品』(Symphonische Stucke aus der Oper ?Lulu“)いわゆる『ルル組曲』と呼ばれるものです。
構成は以下の通りになっています。

  1. ロンド - 第2幕のアルヴァとルルの会話の場面で流れる管弦楽のパート。

  2. オスティナート - 第2幕、シェーン博士を射殺したルルが逮捕されてから収監されるまでの一部始終を描いた映画の音楽。

  3. ルルの歌 - 第2幕、ルルがシェーン博士に向かって歌うアリア。

  4. 変奏曲 - 第3幕第1場の終わりで、ルルが警察にまたもや追われて逃れる部分の音楽。

  5. アダージョ・ソステヌート - 第3幕の終結部。ルルの死とゲシュヴィッツ伯爵令嬢の悲鳴。



そこで、長い間「ルル」は2幕まで上演し、第3幕はルル組曲の第4曲と第5曲をコーダのように演奏して代用するというのが一般的なスタイルとなりました。
ベルクの未亡人であったヘレーネが補筆を禁じたことも、そのような手段をとらせる大きな要因となりました。

しかし、その未亡人が1976年に亡くなると、密かに補筆譜を完成させていた出版社が中心となって補筆完成版の上演が画策されます。そして、1979年にパリ・オペラ座で、ブーレーズの指揮によってこの完成版の初上演が行われて大成功を収めます。やはり、中途半端な形で終わるよりは、観客は物語として完結したオペラを見たいのです。

と言うことで、最近はこの補筆完成版で上演されることが一般化してきたようです。

ドラティの熱い演奏


そう言えばドラティという人も基本は作曲家志望だったことを思い出しました。いや、「志望」なんて言ったら失礼ですね、いくつかの交響曲も残していますし、ハインツ・ホリガーのために書かれた「無伴奏オーボエのための5つの小品なんかは結構有名な作品だそうです。
ですから、指揮者ドラティがこういう新ウィーン楽派の作品を取り上げているのはちょっと不思議な感じがするのですが、彼のもう一つの顔を思い出せば、かくも熱い共感を寄せてこれらの作品を取り上げているのには十分に納得がいきます。

しつこいですが、何度でも繰り返します。
シェーンベルクやウェーベルン、そしてベルクの音楽は、19世紀的な音楽に慣れた耳にとってはいささか抵抗感のある響きす。そこには、疑いもなく20世紀という時代にふさわしい「ロマン」が内包されています。いかに抵抗感があったとしても、それはこの後に続くう音楽であることを捨ててしまった愚かな「非音楽」=「前衛音楽」とは異なります。

そして、ドラティとロンドン交響楽団による演奏は、そう言う20世紀的なロマンに同時代的な共感が熱くあふれ出しているのです。
当然のことながら、この後に続く時代は、それらの作品をより精緻に演奏することには長けています。それは事実です。

しかし、精緻な演奏はいくつかは思い浮かびますが、こういう熱い演奏はなかなか変わるものがありません。

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