クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~



AmazonでCDをさがすAmazonでフリッチャイ(Ferenc Fricsay)のCDをさがす
Home|フリッチャイ(Ferenc Fricsay)|バルトーク:ピアノと管弦楽のためのラプソディー Op.1 Sz.27

バルトーク:ピアノと管弦楽のためのラプソディー Op.1 Sz.27

(P)ゲーザ・アンダ:フェレンツ・フリッチャイ指揮 ベルリン放送交響楽団 1960年10月17日~19日録音

Bartok:Rhapsody for Piano and Orchestra Op.1 Sz.27 [1st movement]

Bartok:Rhapsody for Piano and Orchestra Op.1 Sz.27 [2nd movement]


多面的な複雑さ

バルトークという人は不思議な人です。21世紀の今となっては、彼のことを現代音楽家に分類する人はいないでしょうが、それでも20世紀を代表する「理知的な音楽」を書いたという評価はそれほど的はずれではありません。何しろ、彼のことを論ずれば黄金分割やフィボナッチ数列と言う、まるで数学のような話を避けて通れないからです。
しかし、そんな難しいことを脇において彼の音楽に耳を傾ければ、何ともココロ懐かしくなる旋律が聞こえてきたり、時には「脳天気」と言うしかないような馬鹿騒ぎがあったり、さらには、ある種の厳粛さを感じさせる静謐があったりします。
もちろん、ここでバルトーク論を論じるようなスペースもなければ、そもそも能力もありませんからこれ以上の深入りは避けますが、要はとっても多面的な複雑さと謎に満ちた人だと言うことです。

そして、そう言う多面的な複雑さというものが、バルトーク自身が作品番号の「1」を与えた「ピアノと管弦楽のためのラプソディー」からもはっきりと聞き取ることが出来ます。この作品はピアノ曲である「ピアノのためのラプソディー」を管弦楽作品に編曲したものですが、バルトークはその両方に「作品番号1」を与えています。

重苦しい雰囲気で始まった音楽は途中で、「これってホントにバルトークの作品?」と思ってしまうような馬鹿騒ぎが挟み込まれ、その馬鹿騒ぎがそれなりに盛り上がってフィレーレを迎えたかな?という思いををはぐらかすかのように厳粛とも言うべきピアノの旋律がそれを受け継いでいきます。そして、音楽はそのような厳粛さの中で閉じられます。
聞き手にとっては、何とも捕まえどころのない音楽なのでとまどってしまうのですが、そのとりとめのなさの中に将来にバルトークの姿が暗示されているように思えます。

1904年にこの作品は発表されていますから、バルトークにとっては20代前半の作品です。


多面的な複雑さへの共感

ハンガリという国はすぐれた指揮者を輩出しています。ざっと指を折っただけで、ライナー、セル、ショルティなどです。そして、その中にフリッチャイを数え上げることに異議を差し挟む人はいないでしょう。
そして、当然と言えば当然のことですが、彼らのレパートリーの重要な部分としてバルトークが位置づけられていたことに異議を申し立てる人はいないでしょう。

しかし、彼らの演奏するバルトークを聞いてみると、フリッチャイのバルトークはかなり土臭く感じます。
その違いは、たとえば、バルトーク晩年の名作である「管弦楽のための協奏曲」を聞き比べてみればよく分かります。セルもライナーも、明らかにバルトークがもっている「理知的」な部分を強調して音楽を構成しています。そして、そう言う理知的な部分を骨格に音楽を構成しようと思えば、オケの演奏精度を極限にまで引き上げて対応せざるを得ないのですが、彼らは時代の制約などは完全に吹き飛ばして、その難事を見事に成し遂げています。
ショルティが手兵のシカゴ響を使って80年代に録音した演奏などは、その延長線上における「極値」として記録されるべきものです。

それと比べると、フリッチャイのバルトークは随分ともっさりとしています。オケが「ベルリン放送交響楽団」や「RIAS交響楽団」ですから、シカゴ響やクリーブランドのオケのようなわけにはいかないことは分かります。しかし、重要なことはそのような外的条件にあるのではなく、音楽の作り方の根本的な部分で違いがあるように思えます。

その違いは、バルトークという人がもっている、一筋縄ではいかない多面的な複雑さに共感できるか否かです。

セルは明らかに共感していません。ですから、冗長に過ぎると言って終楽章でばっさりとカットを施し、「弱点の改善」を行った嘯いています。彼は、バルトークが本当は改善したかったように改めてやったので、これこそが正しいというスタンスをとっていたようです。セルはあの終楽章の「夜の歌」は理知的なバルトークにはふさわしくないと考えたのです。
ライナーやショルティは、さすがにそこまでの「暴挙」はしていませんが、それでも理知的なバルトークの音楽の精緻にして明晰な造形を際だたせています。

しかし、フリッチャイは、そう言う複雑さにココロからの共感を寄せています。ですから、バルトークの音楽が土臭くなればフリッチャイの音楽もためらうことなく土臭くなります、そこに、オケの至らなさも加わって、ますます土臭くなるのはご愛敬です。
しかし、フリッチャイはバルトークが内包している複雑さを鏡のように映し出して見せます。
ですから、どうか冒頭の部分だけを聞いて「こりゃ、駄目だ」と聞くのをやめるのではなく、出来れば一度は最後までおつきあいください。

セルやライナーのようなスタイリッシュで近代的なたたずまいとは異なる、もう一つのバルトーク像を体験することが出来るはずです。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



2053 Rating: 5.2/10 (100 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント




【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2024-04-16]

フランク:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(P)ロベール・カサドシュ:(Vn)ジノ・フランチェスカッティ 1947年5月7日録音(Robert Casadesus:(Vn)Zino Francescatti Recorded on May 7, 1947)

[2024-04-14]

ベートーヴェン:序曲「コリオラン」, Op.62(Beethoven:Coriolan, Op.62)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 NBC交響楽団 1945年6月1日録音(Arturo Toscanini:NBC Symphony Orchestra Recorded on June 1, 1945)

[2024-04-12]

モーツァルト:弦楽四重奏曲 第3番 ト長調 K.156/134b(Mozart:String Quartet No. 3 in G Major, K. 156)
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)

[2024-04-10]

ハイドン:弦楽四重奏曲第1番 変ロ長調「狩」,Op. 1, No. 1, Hob.III:1(Haydn:String Quartet No.1 in B-Flat Major, Op. 1, No.1, Hob.3:1, "La chasse" )
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1938年6月5日録音(Pro Arte String Quartet:Recorded on June 5, 1938)

[2024-04-08]

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18(Rachmaninov:Piano Concerto No.2 in C minor, Op.18)
(P)ジェルジ・シャーンドル:アルトゥール・ロジンスキ指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック 1946年1月2日録音(Gyorgy Sandor:(Con)Artur Rodzinski New York Philharmonic Recorded on January 2, 1946)

[2024-04-06]

シベリウス:交響的幻想曲「ポヒョラの娘」(Sibelius:Pohjola's Daughter - Symphonic Fantasy Op.49)
カレル・アンチェル指揮:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 1962年6月7日~8日録音(Karel Ancerl:The Czech Philharmonic Orchestra Recorded on June 7-8, 1962)

[2024-04-04]

ベートーヴェン:ロマンス 第2番 ヘ長調, Op.50(Beethoven:Romance for Violin and Orchestra No.2 in F major, Op.50)
(Vn)ジノ・フランチェスカッティ:ジャン・モレル指揮 コロンビア交響楽団 1952年4月23日録音(Zino Francescatti:(Con)Jean Morel Columbia Symphony Orchestra Recorded on April 23, 1952)

[2024-04-02]

バルトーク:弦楽四重奏曲第6番, Sz.114(Bartok:String Quartet No.6, Sz.114)
ヴェーグ弦楽四重奏団:1954年7月録音(Quatuor Vegh:Recorded on July, 1954)

[2024-03-31]

ベートーヴェン:ロマンス 第1番 ト長調, Op.40(Beethoven:Romance for Violin and Orchestra No.1 in G major, Op.40)
(Vn)ジノ・フランチェスカッティ:ジャン・モレル指揮 コロンビア交響楽団 1952年4月23日録音(Zino Francescatti:(Con)Jean Morel Columbia Symphony Orchestra Recorded on April 23, 1952)

[2024-03-29]

ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ(Ravel:Pavane pour une infante defunte)
アンドレ・クリュイタンス指揮 フランス国立放送管弦楽団 1954年5月14日録音(Andre Cluytens:Orchestre National de l'ORTF Recorded on May 14, 1954)