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Home|グールド(Glen Gould)|バッハ:フーガの技法 ニ短調 BWV1080(Fugues 1-9 )

バッハ:フーガの技法 ニ短調 BWV1080(Fugues 1-9 )

グールド 1962年1月31日、2月1,2,4,&21日録音



Bach:フーガの技法 ニ短調 BWV1080 コントラプンクトゥス

Bach:フーガの技法 ニ短調 BWV1080 コントラプンクトゥス

Bach:フーガの技法 ニ短調 BWV1080 コントラプンクトゥス

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Bach:フーガの技法 ニ短調 BWV1080 コントラプンクトゥス

Bach:フーガの技法 ニ短調 BWV1080 コントラプンクトゥス

Bach:フーガの技法 ニ短調 BWV1080 コントラプンクトゥス(8度のカノン)


まさに神業

音楽というものは一般的には何らかのジャンルに属します。交響曲とか管弦楽曲とか、室内楽曲とか声楽曲・・・とかいうやつです。
しかし、中にはどうにも分類のしようのない作品もあって、その代表がバッハの「音楽の捧げもの BWV1079」と「フーガの技法 BWV1080」です。特に、バッハがその死の直前まで取り組んでいて、そしてついに未完成で終わった「フーガの技法」は楽器の指定もなされていません。おそらくは、鍵盤楽器による演奏を想定していたと思われるのですが、いわゆるオープンスコアで書かれているために、複数の楽器で演奏することも可能です。

こんな感じの楽譜ですね。

フーガの技法の楽譜例

現役盤をざっと見渡してみても、オーケストラ、弦楽四重奏にチェンバロ、オルガン、ピアノ等々と実に様々な編成で演奏されています。ですから、実にもって「正体不明」の作品なのです。
ですから、バッハの死後、息子のエマヌエルがこれを売り出そうとしたもののわずか30部しか売れなかったそうです。さらに悲しいのは、諦めて処分しようと思っても銅板を引き取ってくれる印刷業者も見つからず、仕方がないので鋳つぶしてただの銅として売り払うしかなかったという話も伝わっています。

しかし、その楽譜を買い取ったわずか30人の大部分はこの作品の価値を正しく見抜いていたことはつけ加えておく必要があるでしょう。
例えば、当時辛口の評論で有名だったマッテゾンという人物はその30人の一人だったのですが、このように述べていたそうです。
「フランスやイタリアのフーガ作家が、これを演奏することができるとまではいかなくても、いつか正しく認識し十分に理解できるときが来れば驚き入るに違いない。」

なお、この作品は全体を通して演奏すると1時間半を要するほどの大作なのですが、曲の配列に関しても諸説があるようです。さらに、バッハ自身はこれを全曲通して演奏するなどと言うことは考えていなかったことも明らかになってきています。
ただし、作品のスタイルによって6つのグループに分かれることは明らかなようで、今日ではそのグループを基本に演奏中を配列するのが一般的になっているようです。


  1. 単純フーガ:第1コントラプンクトゥス?第4コントラプンクトゥス:ごく普通の一般的なフーガです。

  2. 反行フーガ」第5コントラプンクトゥス?第7コントラプンクトゥス:フーガの主要主題がその反行形で応答されるフーガ

  3. 複数の主題によるフーガ:第8コントラプンクトゥス?第11コントラプンクトゥス:2つまたは3つの主題からなるフーガ

  4. 鏡像フーガ:第12コントラプンクトゥス?第13コントラプンクトゥス:楽譜を鏡に映した形でも立派なフーガになっているフーガ。神業!!

  5. 二声のカノン:第14曲?第17曲:4曲からできているカノンのグループ

  6. 4重フーガ:第14コントラプンクトゥス:未完に終わったバッハの「白鳥の歌」



なお、第18曲は第13コントラプンクトゥスを編曲したものなので最近は作品からは外されることが多くなっています。


グールドにピッタリの作品

グールドはこの作品を何度も取り上げています。
まず最初は今回紹介している、オルガン(!!)による1962年の録音(コントラプンクトゥス第1番?第9番)、さらには1967年にピアノで録音(コントラプンクトゥス第9番、第11番&第13番)、そして死の前年にあたる1981年にもピアノによる録音を残しています。
こんな、面白おかしくもない音楽をどうしてこんなにも何度も何度も取り上げるのかと昔は訝しく思ったものです。
特に、一番最初のオルガンによる録音は、どうしてこんなにもへんてこりんな響きで演奏するんだろうと、実に不思議に思ったものでした。そもそも、なぜにグールドがオルガンなんだ!という思いは消えませんでした。

あの目の覚めるような冴え冴えとした響きでフーガの技法を演奏してくれればもっと素敵だったろうにという思いと、いったいどんなオルガンを使えばこんなおかしな響きになるんだろうという不満が組み合わさって、不満度200%の録音でした。

しかし、最近になって、グールドにとっての「演奏」という行為は、作曲家の楽譜を素材として自分自身の音楽を作り出していくことだと納得してからは、この奇妙な演奏の値打ちみたいなものが少しずつ分かってきました。そして、なぜにグールドがこの作品を偏愛したのか実にスッキリと納得することができました。
何しろ、バッハの「フーガの技法」というのは完成した作品ではなくて、まさに「素材」として投げ出された音楽なのです。これほどグールドの方法論にピッタリの音楽はありません。

そして、そう思えば、この感覚的な喜びを極限までにそぎ落としたモノトーンの世界は、まさにこれこそがグールドが欲した世界なんだと教えられる思いがします。確かに、最晩年の未完のフーガの12分は一つの奇跡ですが、グールドがグールドに脱皮していく狭間にあるこのオルガンによる演奏は、他のどの録音よりもグールドが欲していたものを明らかにしてくれます。

「鮮やかな色彩を避け、代わりに薄い灰色が無限に続く。…私は灰色が好きだ」(グールド)

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