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ベルリオーズ:幻想交響曲

バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1947年録音



Belrioz:幻想交響曲「第1楽章」

Belrioz:幻想交響曲「第2楽章」

Belrioz:幻想交響曲「第3楽章」

Belrioz:幻想交響曲「第4楽章」

Belrioz:幻想交響曲「第5楽章」


ベートーベンのすぐ後にこんな交響曲が生まれたとは驚きです。

ユング君はこの作品が大好きでした。「でした。」などと過去形で書くと今はどうなんだと言われそうですが、もちろん今も大好きです。なかでも、この第2楽章「舞踏会」が大のお気に入りです。

 よく知られているように、創作のきっかけとなったのは、ある有名な女優に対するかなわぬ恋でした。
 相手は、人気絶頂の大女優であり、ベルリオーズは無名の青年音楽家ですから、成就するはずのない恋でした。結果は当然のように失恋で終わり、そしてこの作品が生まれました。

 しかし、凄いのはこの後です。
 時は流れて、立場が逆転します。
 女優は年をとり、昔年の栄光は色あせています。
 反対にベルリオーズは時代を代表する偉大な作曲家となっています。
 ここに至って、漸くにして彼はこの恋を成就させ、結婚をします。

 やはり一流になる人間は違います。ユング君などには想像もできない「しつこさ」です。(^^;

 しかし、この結婚はすぐに破綻を迎えます。理由は簡単です。ベルリオーズは、自分が恋したのは女優その人ではなく、彼女が演じた「主人公」だったことにすぐに気づいてしまったのです。
 恋愛が幻想だとすると、結婚は現実です。そして、現実というものは妥協の積み重ねで成り立つものですが、それは芸術家ベルリオーズには耐えられないことだったでしょう。「芸術」と「妥協」、これほど共存が不可能なものはありません。

 さらに、結婚生活の破綻は精神を疲弊させても、創作の源とはなりがたいもので、この出来事は何の実りももたらしませんでした。
 狂おしい恋愛とその破綻が「幻想交響曲」という実りをもたらしたことと比較すれば、その差はあまりにも大きいと言えます。

 凡人に必要なもは現実ですが、天才に必要なのは幻想なのでしょうか?それとも、現実の中でしか生きられないから凡人であり、幻想の中においても生きていけるから天才ののでしょうか。
 ユング君も、この舞踏会の幻想の中で考え込んでしまいます。

なお、ベルリオーズはこの作品の冒頭と格楽章の頭の部分に長々と自分なりの標題を記しています。参考までに記しておきます。

「感受性に富んだ若い芸術家が、恋の悩みから人生に絶望して服毒自殺を図る。しかし薬の量が足りなかったため死に至らず、重苦しい眠りの中で一連の奇怪な幻想を見る。その中に、恋人は1つの旋律となって現れる…」
第1楽章:夢・情熱

「不安な心理状態にいる若い芸術家は、わけもなく、おぼろな憧れとか苦悩あるいは歓喜の興奮に襲われる。若い芸術家が恋人に逢わない前の不安と憧れである。」

第2楽章:舞踏会

「賑やかな舞踏会のざわめきの中で、若い芸術家はふたたび恋人に巡り会う。」

第3楽章:野の風景

「ある夏の夕べ、若い芸術家は野で交互に牧歌を吹いている2人の羊飼いの笛の音を聞いている。静かな田園風景の中で羊飼いの二重奏を聞いていると、若い芸術家にも心の平和が訪れる。
無限の静寂の中に身を沈めているうちに、再び不安がよぎる。
「もしも、彼女に見捨てれられたら・・・・」
1人のの羊飼いがまた笛を吹く。もう1人は、もはや答えない。
日没。遠雷。孤愁。静寂。」

第4楽章:断頭台への行進

「若い芸術家は夢の中で恋人を殺して死刑を宣告され、断頭台へ引かれていく。その行列に伴う行進曲は、ときに暗くて荒々しいかと思うと、今度は明るく陽気になったりする。激しい発作の後で、行進曲の歩みは陰気さを加え規則的になる。死の恐怖を打ち破る愛の回想ともいうべき”固定観念”が一瞬現れる。」

第5楽章:ワルプルギスの夜の夢

「若い芸術家は魔女の饗宴に参加している幻覚に襲われる。魔女達は様々な恐ろしい化け物を集めて、若い芸術家の埋葬に立ち会っているのだ。奇怪な音、溜め息、ケタケタ笑う声、遠くの呼び声。
”固定観念”の旋律が聞こえてくるが、もはやそれは気品とつつしみを失い、グロテスクな悪魔の旋律に歪められている。地獄の饗宴は最高潮になる。”怒りの日”が鳴り響く。魔女たちの輪舞。そして両者が一緒に奏される・・・・」


バルビローリの幻想

イギリスにおけるバルビローリの評価は私たちの想像を絶するものがあります。それに引き替えて、日本における評価はトップクラスの巨匠たちの次に来る「第2グループの一人」と言うあたりでしょうか。

実は、この「クラスの指揮者」としてはめずらしく、一度も来日していません。
70年万博の時に初来日が予定されていながら、そのリハーサルの最中に急逝したために、結果として一度の来日もかないませんでした。
このへんがセルとの大きな違いで、セルの場合は病身をおしながらの来日でしたが、戦後の演奏史に残るような「超弩級の演奏」を残してくれて、あれこれの疑問や誤解を一掃してくれました。(それでも、未だにセルのことを機械的で冷たい演奏だという人がいるのですから、一度つけられたレッテルはなかなかはがれません)

この「来日できなかった」と言う事実が、日本におけるバルビローリ評価を決定づけたように思います。
基本的には「歌わせる」指揮者だったために、その一部だけを見てミニ・カラヤンみたいな言われ方をされて、そのレッテルが固定化してしまいました。
しかし、近年になって数多くの録音がリリースされるようになって、彼我の評価の差は少しずつ縮まりつつあるようです。

バルビローリは戦前の一時期、ニューヨークで指揮活動を行ったことがありますが、あまり恵まれたものではなありませんでした。しかし、1943年にはイギリスに帰り、ハレ管弦楽団の首席指揮者として、オーケストラを世界的レベルにまで育て上げました。そしてこの両者によって多くの優れた演奏を残してくれました。

ここで聞ける「幻想」は、その様な両者の結びつきがはじまったばかりのころの演奏です。しかし、実に面白い演奏となっています。(録音も上々です)
とりわけ、細部における何とも言えない「しゃれた表情づけ」は、恣意的と言えば恣意的なのでしょうが、実にうまいものです。
戦後の演奏史はある意味ではこういうちょっとした味付けを徹底的に排除していった歴史だと言えますから、21世紀を迎えた今の時期にこういう演奏を聞くとかえって新鮮さを感じるから不思議です。

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