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ショパン:ポロネーズ集

(P)ルービンシュタイン 1950年~1951年録音



chopin:ポロネーズ第1番嬰ハ短調Op.26-1

chopin:ポロネーズ第2番変ホ短調Op.26-2

chopin:ポロネーズ第3番イ長調Op.40-1「軍隊」

chopin:ポロネーズ第4番ハ短調Op.40-2

chopin:ポロネーズ第5番嬰ヘ短調Op.44

chopin:ポロネーズ第6番変イ長調Op.53「英雄」

chopin:ポロネーズ第7番変イ長調Op.61「幻想」


雄々しさと憂愁

今回、この録音をアップしようとして、何と・・・!!、今まで全くショパンのポロネーズをアップしていないことに気づきました。
何という、大いなる欠落!!
確かに、クラシック音楽という膨大な海の中でその全てをカバーしきるのは不可能なのですが、かくも重要なレパートリーを欠落したままの状態で放置していたとは、あまりにも迂闊でした。

とは言え、気を取り直して、簡単に楽曲解説などをしておきます。

ショパンのポロネーズと言えば一般的に7曲です。それ以外にも何曲かこの形式の作品を作曲しているようですが、少年時代の習作と言うことで、ポロネーズ全集と言えば以下の7曲という事になっています。
作品番号順に1番から7番というナンバーも割り振られています。



この中で、最も有名なのは第6番の「英雄ポロネーズ」でしょう。掛け値なしにショパンの最高傑作の一つと言っていいでしょうし、古今東西の数あるピアノ作品の中でも屈指の名作でしょう。そして、それに続く「幻想ポロネーズ」となると、それは「ポロネーズ」という形式を完全に脱却して、全く新しい類の音楽になっています。
リストがこの作品の中に、熱病的な苦悶の色合いを感じ取ったのは慧眼でした。そこには、かつてのショパンの特徴であった華やかなピアニズムはどこにも見あたりません。当時の聴衆はこの作品に戸惑い、ただただ錯乱した響きしか感じ取れなかったほどの「先進性」を内包した作品です。

そして、これら傑出した2作品に先行したのが第5番のポロネーズです。
リストはこの作品のことを次のように述べています。
「うつらうつらと目覚めがちの冬の一夜を過ごしたのちに、鋭い灰色の冷たい日射しに破られた夢の物語のような印象を与える。」
何とも分かったような分からないような表現ですが、最晩年のショパンはポロネーズという形式を使いながら、極めて個人的な独白であるような幻想曲へと作品の形式を昇華させていったことが分かります。

このような晩年の作品群と比べると、初期の4作品は真っ当なポロネーズです。とはいえ、今日では第1番とナンバーリングされている嬰ハ短調の作品でも、それはたんなる舞踏音楽の域を完全に抜け出しています。アレグロ・アパショナートを指定された序奏の凄まじさを聞くだけで、その事は簡単に納得がいくはずです。
それに対して、同じ作品番号が割り振られた第2番のポロネーズは対照的なほどの深い憂愁に彩られた作品に仕上がっています。その陰鬱な音楽は「シベリアで鎖につながれた悩めるポーランド人を描いたようだ」と言われ、「シベリア」とか「革命」というニックネームが付けられたほどです。
ここには、ポロネーズという形式がうちに秘めている二つの側面、ロシアの圧政に苦しめられたポーランドの憂愁と、それを打ち破ろうとする雄々しさがはっきりと刻印されています。
その事は、続く3番と4番のポロネーズにおいても同様の指摘ができます。ある人は、第3番ではポーランドの偉大さをあらわし、続く第4番ではポーランドの没落を表現していると述べています。
そう言う意味においても、この初期の4作品は、ポロネーズらしいポロネーズだと言えます。


ホロヴィッツにゃ負けねぇぞ

これもまた、ステレオ録音でのルービンシュタインしか知らない人にとっては脱帽ものの演奏です。あの、ステレオ録音でさえ「強靭な打鍵と骨太な音色」と評する人がいるのですから、これを聴かされればいったいどのような言葉を用いればいいのでしょう。
強烈にして強靱極まる打鍵、圧倒的な推進力と直線的な造形、そして何よりも、あふれかえるような逞しさと生命力にみなぎったショパンです。

ポロネーズはショパンが終生愛し続けたポーランドの民族舞曲ではあるのですが、民俗的なマズルカとは違って貴族階級に好まれたという出自の違いを持っています。
しかしながら、貴族階級に好まれたからと言って、それは決してお上品で洗練されたものであることを意味しません。
ポロネーズというものは、その中にロシアの圧政に苦しめられたポーランドの憂愁と、それを打ち破ろうとする雄々しさを秘めています。この作品をお上品なサロン音楽として再現するなどと言うのは根本的に間違っています。

ですから、マズルカでは大いに威力を発揮したこのような奏法はポロネーズにおいても大きな成功をおさめています。もちろん、そのような「強さ」が幾分かは緩和されたステレオ録音の方を良しとする人がいても否定はしませんが、私はこのようなポロネーズこそが、いささか度を超しているように思えても、ショパンが意図した音楽であったと思います。

それからついでにもう一つ、50年代のルービンシュタインを聞くと、その背景にいつもホロヴィッツの影がちらつきます。
もちろん、この時代にのアメリカにおいて、ピアノの王様と言えばホロヴィッツではなくてルービンシュタインでした。彼の人気は絶大な物であり、その演奏はショーマンシップにあふれたものでした。
それでも、彼は常にホロヴィッツに対するコンプレックスをぬぐい去れなかったようです。

ある意味で、度を超したこのような「強さ」を前面に押し出した演奏を聴かされると、「ホロヴィッツにゃ負けねぇぞ」というルービンシュタインの意地のようなものを感ぜずにはおれません。

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