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Home|セル(George Szell)|シューマン:交響曲第4番 ニ短調 作品120

シューマン:交響曲第4番 ニ短調 作品120

セル指揮 クリーブランド管弦楽団 1960年3月12日録音



Schumann:交響曲第4番 ニ短調 作品120 「第1楽章」

Schumann:交響曲第4番 ニ短調 作品120 「第2楽章」

Schumann:交響曲第4番 ニ短調 作品120 「第3楽章」

Schumann:交響曲第4番 ニ短調 作品120 「第4楽章」


マーラーへとつながっていく作品なのでしょうか?

シューマンのシンフォニーというのは年代的に見ればベートーベンとブラームスの中間に位置します。ですから、交響曲の系譜がベートーベン-シューマン-ブラームスと引き継がれてきたのかと言えば、それはちょっと違うようです。
ロマン派の時代にあってはメロディとそれをより豊かに彩る和声に重点が置かれていて、そのことは交響曲のような形式とはあまり相性がよいとは言い難いものでした。そのことは、リストによる交響詩の創作にも見られるように、構築物として音楽を仕上げるよりは物語として仕上げることに向いた仕様だったといえます。
こういう書き方をすると誤解を招くかもしれませんが、シューマンの交響曲を聴いていると、それはベートーベンから受け継いだものをブラームスへと受け継いでいくような存在ではなくて、ベートーベンで行き着いた袋小路から枝分かれしていった一つの枝のような存在であり、それがリストに代表される交響詩へと成長していったと把握した方が実態に近いのではないかと思います。
とりわけこの第4番の交響曲を聴くと、それはベートーベン的な構築物よりは、交響詩の世界の方により近いことを実感させられます。
事実、シューマン自身もこの作品を当初は「交響的幻想曲」とよんでいました。

この作品は番号は4番となっていますが、作曲されたのは第1番と同じ1841年です。当初はその作曲順の通りに第2番とされていて、同じ年に初演もされています。
しかし、第1番と違って初演の評判は芳しくなく、そのためにシューマンは出版を見あわせてしまいます。そのために、5年後に作曲された交響曲が第2番と名付けられることになりました。
その後この作品はシューマン自身によって金管楽器などの扱いに手直しが加えられて、1853年にようやくにして出版されることになります。
シューマンの音楽というのはどこか内へ内へと沈み込んでいくような雰囲気があるのですが、4曲ある交響曲の中でもその様な雰囲気がもっとも色濃く表面にでているのがこの第4番の交響曲です。そして、こういう作品をフルトヴェングラーのような演奏で聞くと、「そうか、これはリストではなくてマーラーにつながっていくんだ」と気づかされたりする作品です。第3楽章から第4楽章につながっていく部分は誰かが「まるでベートーベンの運命のパロディのようだ!」と書いていましたが、そういう部分にもシューマンの狂気のようなのぞいているような気がします。


この響きの何と魅力的なことか

こういうサイトをやっていて困るのは、再生機器の構成を変えることによって、今まで聞いていた雰囲気が大きく変わることです。とりわけ、PCオーディオの世界ではお金をかけなくてもPCのチューニングや再生ソフトの変更でガラリと変わることがあります。
今回も、再生ソフトを「cMP2 = cMP + cPlay」と言うのに変えて、その驚愕の変わりぶりに「困ったなぁ!」嬉しい悲鳴を上げています・・・等と数年前に書きました。
それからシステムのメインはWindowsからLinuxに変わり、再生システムも「Voyage MPD」がメインとなり、徹底的なノイズ対策の結果、その嬉しい悲鳴はとぎれることなく続いています。(^^v

セルという人は、シューマンに関しては「原典尊重」ではなかったようです。
オーケストレーションの不都合な部分は結構手を入れているようで、結果としてすっきりとして明晰な音楽に仕上げていました。もちろん、このコンセプトに対する認識が変わったわけではありません。
変わったのは、このコンビが作り出していたオケの響きです。

以前のシステムでは造形もすっきり、響きも結構クリアだと感じていました。
ところが、新しいシステムでは、同時期に録音されたシューベルトやドヴォルザークとは全く異なる響きであることが手に取るように分かります。
とくに、シューベルトが明暗のはっきりとしたコントラストの強い明晰な響きだったのに対して、このシューマンの響きは薄日のもとで光と影が無限のグラディエーションでぼかされたような世界です。よくシューマンの響きは「くぐもったような」と表現されますが、この響きの何と魅力的なこと!!

ああ、セルのことを機械的で冷たいと言ったのはどこのどいつだ!!
50年代の終わりの、まさにオケを極限まで絞り上げてドライブしていた時代でも、こんなにも微妙なニュアンスにとんだ音楽を展開していたのだ!!
でも、悲しいかな、その響きを大部分の人が享受できずにいたのです。(私も含めて)

16bit、44.1kHzのCDの規格はとかく問題視されてきました。しかし、最近になって、私たちは果たして「16bit、44.1kHz」の世界を汲みつくしてきたのだろうかと疑問に思うようになってきました。(こう書いた思いは、今はさらに強くなっています)
確かに、どの様な貧弱な音質でも音楽的な感動は得られます。しかし、演奏家が心血をそそいで作り上げた響きの世界を誠心誠意くみ取ろうとする中で得られる感動もあります。私はその様な努力は決して怠りたくないと思っていますし、今回のことはその様な「頑張り」に対する「ご褒美」かなと思っています。

ああ、それにしても、この響きの何と魅力的なことか!! (でも、圧縮したMP3ファイルで、どこまで伝わるかは疑問ですが・・・、それがとっても残念)

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