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スメタナ:「我が祖国」より「モルダウ」

フリッチャイ指揮 ベルリンフィル 1960年1&2月録音



Smetana:交響詩「わが祖国」より 第2曲「モルダウ」


「我が祖国」=「モルダウ」+「その他大勢」・・・?

スメタナの全作品の中では飛び抜けたポピュラリティを持っているだけでなく、クラシック音楽全体の中でも指折りの有名曲だといえます。ただし、その知名度は言うまでもなく第2曲の「モルダウ」に負うところが大きくて、それ以外の作品となると「聞いたことがない」という方も多いのではないでしょうか。
言ってみれば、「我が祖国」=「モルダウ」+「その他大勢」と言う数式が成り立ってしまうのがちょっと悲しい現実と言わざるをえません。でも、全曲を一度じっくりと耳を傾けてもらえれば、モルダウ以外の作品も「その他大勢」と片づけてしまうわけにはいかないことを誰しもが納得していただけると思います。

組曲「我が祖国」は以下の6曲から成り立っています。しかし、「組曲」と言っても、全曲は冒頭にハープで演奏される「高い城」のテーマが何度も繰り返されて、それが緩やかに全体を統一しています。
ですから、この冒頭のテーマをしっかりと耳に刻み込んでおいて、それがどのようにして再現されるのかに耳を傾けてみるのも面白いかもしれません。

第1曲「高い城」
「高い城」とは普通名詞ではなくて「固有名詞」です。(^^;これはチェコの人なら誰しもが知っている「年代記」に登場する「王妃リブシェの予言」というものに登場し、言ってみればチェコの「聖地」とも言うべき場所になっています。ですから、このテーマが全曲を統一する核となっているのも当然と言えば当然だと言えます。
第2曲「モルダウ」
クラシック音楽なんぞに全く興味がない人でもそのメロディは知っていると言うほどの超有名曲です。水源地の小さな水の滴りが大きな流れとなり、やがてその流れは聖地「高い城」の下を流れ去っていくという、極めて分かりやすい構成とその美しいメロディが人気の原因でしょう。
第3曲「シャールカ」
これまたチェコの年代記にある女傑シャールカの物語をテーマにしています。シャールカが盗賊の一味を罠にかけてとらえるまでの顛末をドラマティックに描いているそうです。
第4曲「ボヘミアの森と草原より」
ユング君はこの曲が大好きです。スメタナ自身も当初はこの曲で「我が祖国」の締めにしようと考えていたそうですが、それは十分に納得の出来る話です。牧歌的なメロディを様々にアレンジしながら美しいボヘミアの森と草原を表現したこの作品は、聞きようによっては編み目の粗い情緒だけの音楽のように聞こえなくもありませんが、その美しさには抗しがたい魅力があります。
第5曲「ターボル」
これは歴史上有名な「フス戦争」をテーマにしたもので、「汝ら神の戦士たち」というコラールが素材として用いられています。このコラールはフス派の戦士たちがテーマソングとしたもので、今のチェコ人にとっても涙を禁じ得ない音楽だそうです。(これはあくまでも人からの受け売り。チェコに行ったこともないしチェコ人の友人もいないので真偽のほどは確かめたことはありません。)スメタナはこのコラールを部分的に素材として使いながら、最後にそれらを統合して壮大なクライマックスを作りあげています。
第6曲「ブラニーク」
ブラニークとは、チェコ中央に聳える聖なる山の名前で、この山には「聖ヴァーツラフとその騎士たちが眠り、そして祖国の危機に際して再び立ち上がる」という伝承があるそうです。全体を締めくくるこの作品では前曲のコラールと高い城のテーマが効果的に使われて全体との統一感を保持しています。そして最後に「高い城」のテーマがかえってきて壮大なフィナーレを形作っていくのですが、それがあまりにも「見え見えでクサイ」と思っても、実際に耳にすると感動を禁じ得ないのは、スメタナの職人技のなせる事だと言わざるをえません。


己を信じた音楽

私は正直申し上げて、フリッチャイの良い聞き手ではありません。ぽつり、ぽつりという感じでしか彼の録音は聞いていませんし、またその聞いた感じでは、悪くはないけれど、のめり込んでまで聞きたいとは思わないものでした。
しかし、その考えはどうやら根本的に間違っていたみたいです。

フリッチャイという指揮者は、白血病によって活動が中断される1958年までと、健康を一時的に回復して活動を再開した時期(それはとても短いものになってしまいました)では、別人かと思うほどに音楽が変わった人だと言われます。
考えてみると、彼の録音をポツポツと聞いていたのは全て「元気」だった頃のものでした。
私がそう言う古い録音を聞くのは、パブリックドメインとなった音源を探索するためというのが一般的ですから、彼が活動を再開してからの1959年以降の録音はどうしても視野に入っていませんでした。もちろん、彼が大きな病を経験することで「変わった」」と言うことは「知識」としては知っていましたが、その「知識」を実際に確認することは怠っていました。

しかし、今年になって、59年以降の録音が少しずつパブリックドメインの仲間に入ってきたので、この数日彼の録音をまとめて聴いています。
そして、ホントに、驚かされてしまいいました。

まず最初は軽いところから・・・という感じで聞き始めたのが、この「モルダウ」でした。
セル&クリーブランドの音楽とは真逆に位置する音楽でしょう。
水源地から滴り落ちる水が小さな流れとなるところから既に波立ち始めています。この調子で「聖ヨハネの急流」に突入したらどうなるんだろうと思っていたら、いやはや、ホントに凄いことになってしまっています。
それは、もう急流というようなものではなくて、凄まじいまでの「激流」となっていきます。ところが、フリッチャイはそれだけではまだ物足りなかったようで、ティンパニが炸裂して、まさに「山津波」となってありとあらゆるものを押し流していくではないですか。
おそらく、これほどまでに凄まじい「モルダウ」は他には存在しないでしょう。「まず軽いところから・・・」などと言う、ふにゃけた精神はたたき直されてしまいました。

それにしても、病を得るまではまるで小型トスカニーニみたいな演奏をしていたのに、これは何という変わり様でしょう。
しかし、かつての「小型トスカニーニ」のような音楽ならば、それに変わるものはいくらでも数え上げられますが、このような音楽になると、それはフルトヴェングラーでさえ「おとなしく」感じるほどです。

フリッチャイは、この病の時期を回想して次のように回想していたそうです。
「何がよくて何が悪いか、なぜ自分は音楽家になったか、他の人間を指揮するという課題は何を伴っているかということについて考える時間があったのである。結局私は、これまでよりもいや増して真剣に、いっそうの責任感をもって自分の職業と使命とを把握しなければならないということを悟った。」
つまりは、フリッチャイが本当にやりたかった音楽とはこういうものだったのでしょう。己を信じ、己に忠実になることの難しさと大切さをあらためて教えられる思いです。

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