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ワルター(Bruno Walter)|ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 作品98
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 作品98
ブルーノ・ワルター指揮 コロンビア交響楽団 1960年1月16日&23日録音
Brahms:交響曲第4番ホ短調 op.98 「第1楽章」
Brahms:交響曲第4番ホ短調 op.98 「第2楽章」
Brahms:交響曲第4番ホ短調 op.98 「第3楽章」
Brahms:交響曲第4番ホ短調 op.98 「第4楽章」
とんでもない「へそ曲がり」の作品
![](../Jacket_record/Bruno_Walter/Walter_Brahms_Symphony_No4_60.jpg)
ブラームスはあらゆる分野において保守的な人でした。そのためか、晩年には尊敬を受けながらも「もう時代遅れの人」という評価が一般的だったそうです。
この第4番の交響曲はそういう世評にたいするブラームスの一つの解答だったといえます。
形式的には「時代遅れ」どころか「時代錯誤」ともいうべき古い衣装をまとっています。とりわけ最終楽章に用いられた「パッサカリア」という形式はバッハのころでさえ「時代遅れ」であった形式です。
それは、反論と言うよりは、もう「開き直り」と言うべきものでした。
しかし、それは同時に、ファッションのように形式だけは新しいものを追い求めながら、肝腎の中身は全く空疎な作品ばかりが生み出され、もてはやされることへの痛烈な皮肉でもあったはずです。
この第4番の交響曲は、どの部分を取り上げても見事なまでにロマン派的なシンフォニーとして完成しています。
冒頭の数小節を聞くだけで老境をむかえたブラームスの深いため息が伝わってきます。第2楽章の中間部で突然に光が射し込んでくるような長調への転調は何度聞いても感動的です。そして最終楽章にとりわけ深くにじみ出す諦念の苦さ!!
それでいながら身にまとった衣装(形式)はとことん古めかしいのです。
新しい形式ばかりを追い求めていた当時の音楽家たちはどのような思いでこの作品を聞いたでしょうか?
控えめではあっても納得できない自分への批判に対する、これほどまでに鮮やかな反論はそうあるものではありません。
永遠に記憶されるべき歴史的名演
ワルターの指揮による最晩年のブラームスの4番は歴史的名演と言われてきました。
しかし、そう言う定説に対して、かつて彼のニューヨークフィル時代の録音を取り上げてこんな事を書いたことがあります。
「はっきり言って、ブラームスに関しては、ワルターのベスト盤はこのニューヨークフィルとの演奏です。一般的には最晩年のコロンビア響との演奏がよく聴かれますし、その中でも4番に関しては高く評価されていることは事実です。ブラームス晩年の諦観のにじみ出たこの作品には、ワルター最晩年の演奏が相応しいのかもしれません。
しかし、ブラームスというのは人間的には結構脂ぎった俗物的側面も強く持った人でした。
この4番と言っても、そうそう涼やかな諦観だけの音楽であるはずがありません。そして、ニューヨークフィルとの演奏では、晩年の演奏からは感じ取れないパワーと強さみたいな物が感じ取れるて、一筋縄ではいかないブラームスという人の作品にはこちらの方が相応しいのかな?などと思ってしまいます。」
ところが、再生システムを「Voyage MPD」に変身させ、DDコンバーターをフェーズテックの「USB Digital Interface UDIF7」へと変えていくと、このコロンビア響との演奏もなかなかにたくましさを秘めた演奏であることに気づかされるのです。
どこかでも書いたのですが、この「Voyage MPD」というのは本当に恐ろしい再生システムで、つまらない演奏は本当につまらなく再生してくれます。その無慈悲さたるや何の手加減もありません。
しかし、本当にすぐれた演奏と録音に関しては、その素晴らしさを遺憾なく引き出してくれます。
このワルターの録音に関しても、ふくよかで瑞々しい弦楽器と生々しいまでの管楽器の響きを聞かしてくれて、決して評判は良いとは言えないこの録音にこんな音が封印されていたのかと心底驚かされます。
低域はワルターらしくどっしりと鳴っていますし、響きの薄さを指摘されることの多いコロンビア響も決して響きは薄くなく、実にしっかりと鳴っていることが分かります。
こうなると、今まではどこかで不満に感じていた部分はは吹き飛んでしまいますから、細部に込められた絶妙なまでの微妙なニュアンスの積み重ねによって描き出される世界は聞くものの胸に迫ってきます。そして、それこそがワルターの真骨頂です。
そこでは、老境を前にした、そう、決して「老境」ではなく、「老境を前」にした男の胸の中に去来するあらゆる感情、それは、すごしてきた己の人生に対する自信であり確信であり、時には諦めでもあり、悟りでもあり、さらには悔悟でもあったりする複雑で重畳した思いなのですが、そう言うあらゆる感情がしみじみとした優しさの中に描き尽くされています。
よって、断言します。
このコロンビア響とワルターによるブラームスの4番は疑いもなく永遠に記憶されるべき歴史的名演です。
たとえ、クライバーさんのブラ4がどんなに素晴らしくても、そして、それは全くその通りなのですが、それでもこの録音の価値は永遠に失われることはないでしょう。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
1399 Rating: 6.5/10 (281 votes cast)
よせられたコメント
2011-03-10:セル好き
- 最後のリタルダンドで緊張がゆるんで泣けてしまう。
ブラームスの俗物感も諦観もクライバーブラ4のほうに、より感じますがこういう仕掛けはありません。
2011-04-04:うすかげよういちろう
- 被災地ではないが、気力が減退し、落ち込みまくっていた。
やっと元気が戻ってきて、このサイトにアクセスする気になった。
この演奏を見つけた。
ワルター/コロンビアのブラームス4番、40年も前だろうか、熱心に聴いた。
しかし、その後、他のどの演奏を聴いても、全曲を聴き通すことができない。
途中まで聴いて、いやになる。
ひどい場合は、曲が始まって数秒で聴けなくなる。
このたび、40年ぶり(?)にこの演奏を聴いて、最後まで大感動で聴けた。
よかった。
2011-04-14:吉川達也
- ブラームスについての解説を大変興味深く読ませていただきました。書かれている中身をすべて理解できたわけではありませんが、ブラームスの音楽をここまで深く解説されていることに恐れ入りました。わたしは、ブラームスの音楽が好きで好きでしかたがありません。二十歳ごろから30年近く聴いています。交響曲から室内楽、ピアノまですべて好きです。年齢を重ね、聞き込むほど好き度合いが増しているようです。解説をよんで、なぜかうれしくなりました。ブラームスのすばらしさをご教授いただいたような感じです。有り難うございます。ヨッフムのこの4番はじめて聴きました。ヨッフムは最近2番のライブ演奏にのめり込みましたが、この4番もかなり聞き込みたくなりました。できたらブラームスのすばらしさをもっと教えてください。
2011-05-12:nako
- なんて優しい演奏なんでしょうか。ほとんど神ですね。
指揮者が作曲家の上を行ってしまっている・・・というのは言い過ぎでしょうか?
でも、ワルターさんが、最期の最期に達した境地みたいなものを感じ取れる演奏だと思います。
なんで戦後にワルターさんがヨーロッパに戻らなかったのか、ずっと不思議に思ってきました。
だけど、これを聴くと、うっすら判るような気がします。
多分、彼は人生に起こった理不尽極まりない出来事を、すべて許し、受け入れたのでしょう。
でなくて、こんな、中年男のうじうじ陰気なエゴ丸出しの曲(←すみません、ブラームスという人間が好きじゃないんです^^;)を、こんなに温かく包み込むように演奏は出来ないと思います。
クライバーさん、大好きですが、残念ながらこの曲に関しては、ブラームスの煩悩に共感するところで終わってしまっているような。それもまた、人間臭くてよろしいんですが、ワルターさんの大きさ、温かさには負けてしまいますね…(哀)
2011-10-23:メフィスト
- この演奏もいいけど・・・
ブラ4は、やっぱりシューリヒト盤(コンサートホール)がいいなぁって僕は思います。
って、レイティングは9にしました。
シューリヒトがアップされたら11か12を着けたいものです。
2012-10-01:ワルターに感動
- ワルターと言うと、よく歌い、いくぶん暗いイメージがあったのですが、ここではむしろ切れ味がよくオーケストラがよく鳴っているなあと思いました。音楽の運びもロマン派としてのブラームスに沿った、適度にテンポの動きのある名演奏ではないでしょうか。一番好きな4番です。
2012-12-29:マオ
- ブラームスの4番いいですね。よく言われるような「渋い」とか「枯れた」という感じはあまりしません。古い音楽形式や旋法にヒントを持ちながらも新しい独創性がありますし、近代的とも言える管弦楽法が卓越しています。ワルターの解釈もそこを強調したような新鮮な演奏で、むしろだれよりもきびきびとしていて、それが成功していると思います。この演奏でワルターへの先入観、思い込みが消えました。同時に4番の新しい魅力が発見できました。私のCDには「ハイドン変奏曲」がカップリングされていますが、これも同様に堂々とした中にすがすがしさを感じる演奏です。
2013-07-03:ワルター・ファン
- 私事ですが、意外とワルターのCDを好んで聴いています。コロンビア響が下手とか、音のバランスを操作しているとか言われますが、けっこういい演奏していると思うのです。この4番もすっきりとしていて自然に素直に聴けます。フルトヴェングラーやトスカニーニと比べてもよりナチュラルに肩の力を抜いて楽しめます。そんな感想で、けっこうワルターが好きです。
2013-12-27:nakamoto
- 私がクラシック音楽を聴き始めたころ、廉価版という理由と、ワルターという大指揮者という理由だけで買った,この録音。すすり泣くような出だしと,深いロマンティックな演奏は、私のブラームスへのひとつの憧れとして、こころに突き刺さっています。そうブラームスは絶対音楽派であると同時に、どこまでもどこまでもロマンティックな作曲家であると思います。こうして半世紀以上も前の名録音が、このサイトを通して、多くの人々と共感できるのは、なによりも幸せな事です。
2015-04-15:菊ぱぱ
- ブラームス、市販されてるディスクはほとんど入手して若年の頃から聴いてきました。4番の刷り込みはこのワルター盤です。親父の安物の蓄音器でLPを鳴らして…。
私はこのワルター盤の(殊にコロムビア響盤の)第1楽章第2主題に入る直前の経過句でのリズム(特に八分音符)の扱いを気に入ってます。格別です。オシャレです。
ユングさんのご指摘通り、録音も十分な響きを確保してますしネ!
2018-01-21:ひろみ
- 哲学的でありながら、呼吸するような余裕のある演奏ですね。
深みがありながら、軽やか。
これを聞いていると、時の流れが少しだけゆっくりしているようです。
慌ただしいデジタルの時代、ほっとひといき、生きている感覚を思い出しました。
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