クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~



AmazonでCDをさがすAmazonでバックハウスのCDをさがす
Home|バックハウス|ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 Op.58

ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 Op.58

(P)バックハウス ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮 ウィーンフィル 1958年録音



Beethoven:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 Op.58 「第1楽章」

Beethoven:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 Op.58 「第2楽章」

Beethoven:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 Op.58 「第3楽章」




新しい世界への開拓

1805年に第3番の協奏曲を完成させたベートーベンは、このパセティックな作品とは全く異なる明るくて幸福感に満ちた新しい第4番の協奏曲を書き始めます。そして、翌年の7月に一応の完成を見たものの多少の手なしが必要だったようで、最終的にはその年の暮れ頃に完成しただろうと言われています。

この作品はピアノソナタの作曲家と交響曲の作曲家が融合した作品だと言われ、特にこの時期のベートーベンのを特徴づける新しい世界への開拓精神があふれた作品だと言われてきました。
それは、第1楽章の冒頭においてピアノが第1主題を奏して音楽が始まるとか、第2楽章がフェルマータで終了してそのまま第3楽章に切れ目なく流れていくとか、そう言う形式的な面だけではなりません。もちろんそれも重要な要因ですが、それよりも重要なことは作品全体に漂う即興性と幻想的な性格にこそベートーベンの新しいチャレンジがあります。

その意味で、この作品に呼応するのが交響曲の第4番でしょう。
壮大で構築的な「エロイカ」を書いたベートーベンが次にチャレンジした第4番はガラリとその性格を変えて、何よりもファンタジックなものを交響曲という形式に持ち込もうとしました。それと同じ方向性がこの協奏曲の中にも流れています。
パセティックでアパショナータなベートーベンは姿を潜め、ロマンティックでファンタジックなベートーベンが姿をあらわしているのです。

とりわけ、第2楽章で聞くことの出来る「歌」の素晴らしさは、その様なベートーベンの新生面をはっきりと示しています。
「復讐の女神たちをやわらげるオルフェウス」とリストは語りましたし、ショパンのプレリュードにまでこの楽章の影響が及んでいることを指摘する人もいます。
そして、これを持ってベートーベンのピアノ協奏曲の最高傑作とする人もいます。ユング君も個人的には第5番の協奏曲よりもこちらの方を高く評価しています。(そんなことはどうでもいい!と言われそうですが・・・)

mouthpiece of the composer


バックハウスのベートーベンと言えばもっともドイツ的なものとして、その高い精神性が云々されます。そして、その高い「精神性」によって、一部の人は彼のことを神のごとく崇め奉り、また他の人々は同じ事をもって敬して遠ざけるようになってしまいました。
それは、どちらのスタンスをとるにしてもバックハウスにとっては迷惑な話だったでしょう。

バックハウスというピアニストを評してもっとも適切なる言葉は「mouthpiece of the composer」に尽きるのではないでしょうか。
まさに、作曲家の代弁者として歌を歌う人、それがバックハウスの本質だったのではないでしょうか。そして、そこに「高い精神性」を見る人がいても不思議には思いませんが、バックハウス自身にとってはそのような「精神性」云々はどうでもいい話だったはずです。彼にとってもっとも大切だったことは作曲家と心を合わせて、その代理人としてピアノを演奏することだったはずです。

そして、これが大切なことですが、そういうバックハウスのスタンスは数あるピアニストの有り様の一つにしか過ぎないと言うことです。そして、その有り様は、新即物主義という時代の潮流に即したものであって、決して綿々と受け継がれてきたドイツ音楽の伝統に則った絶対的なものではないのです。
と言うか、そういう意味における「ドイツ的」なるものは存在した試しはないのです。

「mouthpiece of the composer」としてのバックハウスと対極に位置するのはホロヴィッツです。
彼は何を演奏しても「mouthpiece of the composer」となることを拒否したピアニストでした。彼が演奏すれば、ショパンであれベートーベンであれ、それは全てホロヴィッツの音楽になりました。そして、当然のことですが、その事をもって芸術としての価値を論じるなどは愚の極みです。

スコアを前にして、何もしないバックハウスも素敵ですが、常に何かをせねば気が済まないホロヴィッツも素敵なのです。
そして、贅沢きわまる現在の聞き手は、その日の気分によって選択できるのです。そんな楽しみに、つまらぬ価値論争を持ち込むことは野暮というものです。

最後に余談ながら、バックハウスが5つのコンチェルトのなかで一番愛したのがこの第4番の協奏曲です。世間では、外面的効果に終始したと言われる第5番の皇帝に対抗する意識から、これを殊更に勿体ぶって深遠なる世界を描こうというスケベ根性が見え隠れする演奏が少なくありません。
でも、バックハウスはこの4番においてこそ、本当に何もしません。
それは、この作品の素晴らしさを信ずればこそ、あるがままの姿を提示すればその素晴らしさは聞く人に伝わるという確信に満ちた演奏です。まさに、ここにこそ真の愛の姿が存在するように思います。


この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



1303 Rating: 6.8/10 (113 votes cast)

この演奏に対するご意見や感想をおよせください。

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント

2010-10-09:カンソウ人


2016-03-12:


【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】

[2018-05-28]

モーツァルト:ディヴェルティメント ニ長調 K. 136 (125a)
ティボール・ヴァルガ指揮 ティボール・ヴァルガ音楽祭管弦楽団 1965年録音

[2018-05-27]

モーツァルト:交響曲第40番 ト短調 K.550
ルドルフ・バルシャイ指揮 モスクワ室内管弦楽団 録音年不詳(1963年初出)

[2018-05-26]

バッハ:ピアノ(チェンバロ)協奏曲第3番 ニ長調 BWV1054
(P)グレン・グールド ヴラディミール・ゴルシュマン指揮 コロンビア交響楽団 1967年5月2日録音

[2018-05-25]

シャルル=マリー・ヴィドール:オルガン交響曲より第6番「Allegro」&第2番「Salve Regina」
(Org)マルセル・デュプレ 1957年10月録音

[2018-05-24]

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」 ハ短調 Op.13
(P)ヴィルヘルム・ケンプ 1965年1月11日~12日録音

[2018-05-23]

ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ(管弦楽曲版)
ポール・パレー指揮 デトロイト交響楽団 1962年3月録音

[2018-05-22]

モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K364
ルドルフ・バルシャイ指揮&Viola (Vn)ダヴィッド・オイストラフ モスクワ室内管弦楽団 1959年3月22日録音

[2018-05-21]

ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 作品68
カール・ベーム指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1959年10月録音

[2018-05-20]

バッハ:ピアノ(チェンバロ)協奏曲第5番 ヘ短調 BWV1056
(P)グレン・グールド ヴラディミール・ゴルシュマン指揮 コロンビア交響楽団 1958年5月1日録音

[2018-05-19]

ラヴェル:舞踏詩「ラ・ヴァルス」
ポール・パレー指揮 デトロイト交響楽団 1962年3月録音