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セル(George Szell)|ドヴォルザーク:スラブ舞曲 第2集 作品72
ドヴォルザーク:スラブ舞曲 第2集 作品72
セル指揮 クリーブランド管弦楽団 1956年3月16日~17日録音
Dvorak:スラブ舞曲 第2集 第1番 モルト・ヴィヴァーチェ ロ長調
Dvorak:スラブ舞曲 第2集 第2番 アレグレット・グラツィオーソ ホ短調
Dvorak:スラブ舞曲 第2集 第3番 アレグロ ヘ長調
Dvorak:スラブ舞曲 第2集 第4番 アレグレット・グラツィオーソ 変ニ長調
Dvorak:スラブ舞曲 第2集 第5番 ポーコ・アダージョ 変ロ短調
Dvorak:スラブ舞曲 第2集 第6番 モデラート・クアジ・ミヌエット 変ロ長調
Dvorak:スラブ舞曲 第2集 第7番 アレグロ・ヴィヴァーチェ ハ長調
Dvorak:スラブ舞曲 第2集 第8番 グラツィオーソ・エ・レント、マ・ノン・トロッポ、クアジ・テンポ・ディ・ヴァルセ 変イ長調
メランコリックで美しい旋律を持った作品が多い

スラブ舞曲の予想以上の大成功に気をよくした出版業者のジムロックは早速に第2集の作曲をドヴォルザークに依頼します。しかし、第1集の大成功で名声を確立したドヴォルザークは、彼が本来作曲したかったような作品の創作へと向かっていました。速筆のドヴォルザークにしては珍しく時間をかけてじっくりと取り組んだピアノ三重奏曲ヘ短調やヴァイオリン協奏曲、交響曲の6番、7番などが次々と生み出されるのですが、スラブ舞曲の第2集に関しては固辞していました。
しかし、その様な「大作」だけでは大家族を養っていくことは困難だったようで、ある程度の稼ぎを得るためには「売れる」作品にも手を染めなければいけませんでした。そして、その様な仕事はドヴォルザークの心をブルーにし、鬱屈した思いが募っていきました。そんな、ドヴォルザークに妻のアンナは散歩に出かけることをよくすすめたそうです。
すると、ドヴォルザークは葉巻を一本加えては汽車を見に行きました。ドヴォルザークにとって音楽の次に好きだったのが汽車だったのですが、その大好きな汽車を眺めているうちに鬱屈した思いも消え去って、再び元気になって帰宅したというエピソードが残されています。
そんなドヴォルザークに対してジムロックはついに第1集の10倍という破格のギャラで第2集の作曲をドヴォルザークに懇願します。はたして、この金額が彼の心を動かされたのかどうかは定かではありませんが、今まで断り続けてきたこの仕事を、1886年になってドヴォルザークは突然に引き受けます。そして、わずか一ヶ月あまりで4手のピアノ楽譜を完成させてしまいます。
もちろん、だからといって、この第2集はお金目当てのやっつけ仕事だったというわけではありません。
ドヴォルザークは第1集において、この形式においてやれるべき事は全てやったという自負がありました。それだけに、これに続く第2集を依頼されても、それほど簡単に第1集を上回る仕事ができるとは思えなかったのもこの仕事を長く固持してきた理由でした。ですから、彼が第2集の仕事を引き受けたときには、それなりの成算があってのことだったのでしょう。
この第2集では、チェコの舞曲は少ない数にとどめ、他のスラブ地域から様々な形式の舞曲が採用されています。また、メランコリックで美しい旋律を持った作品が多いのもこの第2集の特徴です。明らかに、第2集の方が成功をおさめた巨匠のゆとりのようなものが感じ取れます。そう言う意味では、第1集よりはこちらの方が好きだという人も多いのではないでしょうか。
なお、この第2集もピアノ用に続いてオーケストラ版も出版されて、今ではそちらの方が広く流布しています。
第1番:モルト・ヴィヴァーチェ ロ長調 4分の2拍子
第2番:アレグレット・グラッティオーソ ホ短調 8分の3拍子
第3番:アレグロ ヘ長調 4分の2拍子
第4番:アレグレット・グラッティオーソ 変ニ長調 8分の3拍子
第5番:ポーコ・アダージョ 変ロ短調 8分の4拍子
第6番:モデラート・クアジ・ミヌエット 変ロ長調 4分の3拍子
第7番:アレグロ・ヴィヴァーチェ ハ長調 4分の2拍子
第8番:グラッティオーソ・エ・レント・マ・ノン・トロッポ クアジ・テンポ・ディ・ヴァルセ 変イ長調 4分の3拍子
定番中の定番
セル&クリーブランドによるスラブ舞曲集と言えばこれは定番中の定番です。セルは機械的で冷たいという「誤った評価」が流布していた時代でも、スラブ舞曲集だけはいいね!という人も多かったほどに、評価されていました。
そう言えば、セルがEMIに録音したドボ8のうめ草にスラブ舞曲が何曲か収録されていて、それを吉田大明神が絶賛していました。もちろん、ドボ8も悪くないと評価していたのですが、スラブ舞曲の方はもう手ばなしといっていいほどの絶賛だったと記憶しています。
セルはクリーブランドのシェフに就任した47年にスラブ舞曲をいくつか録音しています。そして、56年にモノラル録音で全曲収録し、さらにステレオの時代にもう一度全曲録音しています。そして、死の年の70年に先ほど述べた数曲を録音していますから、何とその生涯で4回もセッション録音していることになります。
これは、セル自身がこの作品によほどの愛着があったと言うことでしょう。
では、セルのスラブ舞曲は何がいいのか?
聞いてすぐに分かるのは、彼の演奏にはいわゆるスラブ的な土くささみたいなものが全くないと言うことです。実にすっきりとしていて聞いていて実に気持ちがいいです。
ぼんやり聞いていると、スコアをそのまま何の衒いもなく音にしているだけなのに、どうしてこんなにも深い感情がにじみ出してくるのだろう、と不思議になってくるような演奏です。
ところが、よく注意して聞いてみると、一見何もしていないように見えながら、実はいろんな事をしているのに気づかされます。
まずは、各パートの響かせ方が絶妙です。もしも手元にスコアがあるならばそれを見ながら聞いて欲しいのですが、ごく些細な装飾音なども一切ごまかすことなく鳴らしきっています。結果として、他のコンビでは絶対に聴くことのできない強靱でありながら磨きぬかれた響きで全体が構成されています。
次に、気づくのは、微妙なルパートによってセル独自のニュアンスが作品に与えられていることです。ただし、このルパートはあまりにも微妙なので、ぼんやり聞いていると何しないで淡々と演奏しているだけのように聞こえます。しかし、本当に何もしていないのならば、こんなにも深い情感が立ちのぼってくることは絶対にありません。
それぞれの舞曲に与えられた微妙なニュアンスはまさにセルによって考え抜かれたもので、その解釈はモラルもステレオもそれほど大差がないように思います。(最後の年の録音では、このニュアンスはより濃くなっているように思えます)
つまり、この録音は鬼の統率のもとで、微妙かつ絶妙なバランスのもとに成りたっている演奏なのです。
そう言えば、誰かが書いていました。
「この録音はセルにしては温和な表情がのぞくのだが、決してこの録音の時だけ彼が例外的に優しくなったわけではない。」
みんなで力あわせてなかよく演奏しよう!で、すばらしい音楽が出来るほど甘い世界ではないと言うことでしょう。
この演奏を評価してください。
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1181 Rating: 5.1/10 (216 votes cast)
よせられたコメント
2009-11-08:かなパパ
- 「すごい!!」の一言です。
各パートの響かせ方など本当に絶妙で、セルらしいすばらしい演奏だと思います。
文句の付け様もありません。
2011-03-09:まりこ
- 大変一曲の中にある舞曲の違いを理解した表現で、かつ立体的な演奏で、それによってドラマチックになった名演奏だと思います。録音が古いのにかかわらず、これだけの臨場感があるので、おそらくその場にいて聴いたなら鳥肌ものでしょう。
メロディの終わりのフレーズ、抑揚の自然さ、とても丁寧で自然です。特に有名な2番ですが、ちょっとしたフルートの音色など裏でなっている管楽器の扱いのうまさに驚きました。
2013-08-07:小谷雅史
- 小学6年のときに演奏者のことは何も知らずに購入した、シューベルトの未完成がセルとの出会いでした。レコードの解説にあるようにセルの音楽はリズムに厳格で、少しはやめのテンポとあいまって冷たい感じがあるのも事実ですね。別なレコードの吉田秀和さんの解説に、「宋の時代の青磁器のような」と評価されていたのが私は気に入ってます。1970年の来日公演で圧倒的な評価を得たときは、セルのファンとして自分のことのようにうれしかったです。何年か前、その時のCD が発売されませたが、シベリウスの交響曲第2番は素晴らしい演奏でした。当時中3だった私は札幌での公演を聞きたかったのですが叶うはずもなく、NHKで放送されたシベリウスをテープで録音したものを何度も聴いたものです。スラブ舞曲はステレオ版のレコードを所持し、時々聴いております。先日Uチューブにアップされたものを聞いて、驚いてしまいました。何とセル、クリーブランドの演奏だったからです。やはりこれが最高です。モノラル版も素晴らしいですね。私の評価はもちろん「10」です。長々と済みませんでした。
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