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バッハ:ブランデンブルグ協奏曲 第2番

カザルス指揮 プラド音楽祭管弦楽団 1950年録音



Bach:ブランデンブルグ協奏曲 

Bach:ブランデンブルグ協奏曲 

Bach:ブランデンブルグ協奏曲 


就職活動?

順調に見えたケーテン宮廷でのバッハでしたが、次第に暗雲が立ちこめてきます。楽団の規模縮小とそれに伴う楽団員のリストラです。

バッハは友人に宛てた書簡の中で、主君であるレオポルド候の新しい妻となったフリーデリカ候妃が「音楽嫌い」のためだと述べていますが、果たしてどうでしょうか?
当時のケーテン宮廷の楽団は小国にしては分不相応な規模であったことは間違いありませんし、小国ゆえに軍備の拡張も迫られていた事を考えると、さすがのレオポルドも自分の趣味に現を抜かしている場合ではなかったと考える方が妥当でしょう。

バッハという人はこういう風の流れを読むには聡い人物ですから、あれこれと次の就職活動に奔走することになります。

今回取り上げたブランデンブルグ協奏曲は、表向きはブランデンブルグ辺境伯からの注文を受けて作曲されたようになっていますが、その様な文脈においてみると、これは明らかに次のステップへの就職活動と捉えられます。
まず何よりも、注文があったのは2年も前のことであり、「何を今さら?」という感じですし、おまけに献呈された6曲は全てケーテン宮廷のために作曲した過去の作品を寄せ集めた事も明らかだからです。
これは、規模の小さな楽団しか持たないブランデンブルグの宮廷では演奏不可能なものばかりであり、逆にケーテン宮廷の事情にあわせたとしか思えないような変則的な楽器編成を持つ作品(第6番)も含まれているからです。

ただし、そういう事情であるからこそ、選りすぐりの作品を6曲選んでワンセットで献呈したということも事実です。

第1番:大規模な楽器編成で堂々たる楽想と論理的な構成が魅力的です。
第2番:惑星探査機ボイジャーに人類を代表する音楽としてこの第1楽章が選ばれました。1番とは対照的に独奏楽器が合奏楽器をバックにノビノビと華やかに演奏します。
第3番:ヴァイオリンとヴィオラ、チェロという弦楽器だけで演奏されますが、それぞれが楽器群を構成してお互いの掛け合いによって音楽が展開させていくという実にユニークな作品。
第4番:独奏楽器はヴァイオリンとリコーダーで、主役はもちろんヴァイオリン。ですから、ヴァイオリン協奏曲のよう雰囲気を持っている、明るくて華やかな作品です。
第5番:チェンバロが独奏楽器として活躍するという、当時としては驚天動地の作品。明るく華やかな第1楽章、どこか物悲しい第2楽章、そして美しいメロディが心に残る3楽章と、魅力満載の作品です。
第6番:ヴァイオリンを欠いた弦楽合奏という実に変則な楽器編成ですが、低音楽器だけで演奏される渋くて、どこかふくよかさがただよう作品です。

どうです。
どれ一つとして同じ音楽はありません。
ヴィヴァルディは山ほど協奏曲を書き、バッハにも多大な影響を及ぼしましたが、彼にはこのような多様性はありません。
まさに、己の持てる技術の粋を結集した曲集であり、就職活動にはこれほど相応しい物はありません。

しかし、現実は厳しく残念ながら辺境伯からはバッハが期待したような反応はかえってきませんでした。バッハにとってはガッカリだったでしょうが、おかげで私たちはこのような素晴らしい作品が散逸することなく享受できるわけです。

その後もバッハは就職活動に力を注ぎ、1723年にはライプツィヒの音楽監督してケーテンを去ることになります。そして、バッハはそのライプツィヒにおいて膨大な教会カンタータや受難曲を生み出して、創作活動の頂点を迎えることになるのです。


プラド音楽祭における貴重な記録

フランコ政権への抗議として南仏の田舎町であるプラドに引きこもったカザルスのもとへ、多くの音楽家が結集して行われた音楽祭がプラド音楽祭です。
この企画の中心になったのは、ブダペスト弦楽四重奏団のセカンド・ヴァイオリンを担当していたアレクサンダー・シュナイダーです。バッハの没後200年を記念するこの音楽祭はオール・バッハのプログラムで構成され、その演奏記録はアメリカ・コロンビア社が録音して開発まもないLPで発売することになりました。

おかげで、その貴重な演奏の大部分を良質な音質で聞くことができるのです。
この音楽祭に参加したチェリストのポール・トルトゥリエは次のような言葉を残しています。
「私たちはブランデンブルク協奏曲第1番からリハーサルを始めた。第2楽章で、オーボエとヴァイオリンがニ短調で交わす張り詰めた対話にカザルスが示した深い感情を、私は決して忘れないだろう。あの楽章をカザルスと一緒に演奏することは、言葉に言い尽くせないほど感動的だった。」

このリハーサルシーンはLPとして発売もされましたのでお聞きの方もおられるかもしれません。
カザルスはメロディやアクセントを口ずさみながら、まさに口移しという感じで自らのバッハのイメージを楽団のメンバーにたたき込んでいたのが印象的でした。
おかげで、これこそがカザルスがイメージしたバッハだと言えるように演奏に仕上がっています。

カザルスという希代の音楽家のバッハにふれられるというだけでも貴重な記録ですし、今もってこれを凌駕するような演奏はそう簡単に思いつくものではありません。

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