Home|
メイエル(Marcelle Meyer)|ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
(P)マルセル・メイエル 1954年3月5日〜8日録音
Ravel:亡き王女のためのパヴァーヌ
シャブリエの顕著な影響と,貧弱な曲形式

ラヴェルは後にこの作品について次のように述べています。
「悲しいかな!私にはこの曲の持つ至らなさが手に取るように見えてしまう。
シャブリエの顕著な影響と,貧弱な曲形式。
思うに,この不完全かつ冒険心のない曲が成功を収めたのは,演奏家の卓越した曲解釈が大きく寄与していたからではないか。」
ただし、いわゆる人格破綻者の群れとしか思えないような大作曲家の中では、珍しくも「いい人」だったラベルと言う人の特質は割り引いて考える必要があります。しかし、そう言う自己批判力の強さを割り引いたとしても、後のラヴェルのピアノ作品と比べればあまりにもサロン的な作品だとは言えます。
しかし、その「サロン的」な雰囲気と、思わせぶりなタイトルの効用もあって、発表当時も、そして今もなおボレロなどと並んでなかなかの人気を博しているという現実はなかなかに皮肉です。
ラヴェルは単なる語呂合わせで「亡き王女のためのパヴァーヌ」・・・「infante défunte」と付けたらしいのですが、この作品を発表してからは会う人ごとに「この王女とは誰なのか」と言う質問を挨拶代わりのようにぶつけられてすっかり閉口してしまったようです。確かに、この作品の甘く夢見るような雰囲気とこのタイトルは実にピッタリで、誰しもが作曲家はどの様な王女をイメージして今作品を書いたのだろうと思わせずにはおれない魅力を持っています。
6人組の女神・・・?
Meyerは「メイエル」と読むそうです。私はすっかり「マイヤー」だと思って、いくらGoogleで検索をかけても出てこないので、かつて掲示板で「ほとんど忘れ去られたピアニストと言えます。」なんて書いてしまいました。(^^;汗汗・・・
しかし、よく調べてみると一部では熱烈なファンが存在するようで、例えば「クラシック名盤 この一枚」なんて本の中では何人かの人たちが熱いオマージュを送っています。
さらに調べてみると彼女には「6人組の女神」というニックネームがあったそうなのです。この「6人組」というのはルイ・デュレ、アルテュール・オネゲル、ダリウス・ミヨー、ジェルメーヌ・タイユフェール、フランシス・プーランク、ジョルジュ・オーリックの事で、フランス音楽の新しい夜明けを告げたグループとして「ロシア5人組」になぞらえて付けられたものです。
メイエルはこの6人組と深い親交があり、彼らの作品を積極的に取り上げました。もちろん、それ以外にもラヴェルやドビュッシーというフランス近代の作品が彼女の得意分野であり、それ以外にはラモーやクープランというフランスの古典作品を好んでいました。要するに、かなりの「ご当地主義」といえるレパートリーです。そして、クラシック音楽の王道(?)とも言うべきドイツ・オーストリア系の音楽は本当にごくわずかしか取り上げないという、この業界ではかなりの異色な存在だったようです。
ここで紹介しているラヴェルの録音は1954年の3月に一気にまとめて録音したもので、どの録音を聞いてもコンサートグランドの能力をフルに発揮したラヴェル作品に相応しい豪快な演奏です。
1897年生まれですからこの時メイエル57歳です。テクニック的には微塵の破綻もなく若々しい精神に満ちあふれています。ところが、この3年後に彼女は亡くなっています。原因は分かりませんが、録音がモノラルからステレオに切り替わるこの時期に亡くなったことが、そしてかなり偏ったレパートリーだったことが、後の彼女の忘却に結びついたことは間違いないでしょう。
もしも、あと数年長生きして(それでも70歳にもなりません!)、ある程度まとまった数のステレオ録音を残していれば、そしてモーツァルト演奏でも素晴らしい演奏を聴かせてくれたことを思えば、そのステレオ録音の中に独墺系の作品がいくつか混じっていれば、疑いもなく彼女の名前はハスキルなどと並んで評価されたはずです。何よりも、彼女にはハスキルがもっていなかったパワフルさがあふれています。
しかし、それはあまりにも贅沢な無い物ねだりなのでしょう。彼女の本質はどこまで行ってもフランス人です。そして、モノラル録音の時代とともにこの世を去ったのです。そんな彼女の業績が50年の時を経てパブリックドメインとなることで復活し、再びこの女性ピアニストに光が当たるようになったことを感謝すべきなのでしょう。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
881 Rating: 6.6/10 (275 votes cast)
よせられたコメント
【最近の更新(10件)】
[2025-04-30]

ショパン:ノクターン Op.37&Op.48(Chopin:Nocturnes for piano, Op.37&Op.48)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1956年発行(Guiomar Novaes:Published in 1956)
[2025-04-27]

ロッシーニ:管楽四重奏曲第6番 ヘ長調(Rossini;Quatuor No.6 in F major)
(fl)ジャン- ピエール・ランパル (cl)ジャック・ランスロ (hrn)ジルベール・クルシエ (basson)ポール・オンニュ 1963年初出((fl)Jean-Pierre Rampal (cl)Jacques Lancelotelot (basson)Paul Hongne (hrn)Gilbert Coursier Release on 1963)
[2025-04-25]

ブラームス:交響曲第2番 ニ長調, 作品73(Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ベルリン・フィルハーモニ管弦楽団 1962年録音(Joseph Keilberth:Berlin Philharmonic Orchestra Recorded on 1962)
[2025-04-22]

ロッシーニ:管楽四重奏曲第5番 ニ長調(Rossini;Quatuor No.5 in D major )
(fl)ジャン- ピエール・ランパル (cl)ジャック・ランスロ (hrn)ジルベール・クルシエ (basson)ポール・オンニュ 1963年初出((fl)Jean-Pierre Rampal (cl)Jacques Lancelotelot (basson)Paul Hongne (hrn)Gilbert Coursier Release on 1963)
[2025-04-19]

ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調, Op.68(Brahms:Symphony No.1 in C Minor, Op.68)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ベルリン・フィルハーモニ管弦楽団 1951年録音(Joseph Keilberth:Berlin Philharmonic Orchestra Recorded on 1951)
[2025-04-16]

モーツァルト:弦楽四重奏曲第23番 ヘ長調 K.590(プロシャ王第3番)(Mozart:String Quartet No.23 in F major, K.590 "Prussian No.3")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)
[2025-04-12]

ロッシーニ:管楽四重奏曲第4番 変ロ長調(Rossini;Quatuor No.4 in B flat major)
(fl)ジャン- ピエール・ランパル (cl)ジャック・ランスロ (hrn)ジルベール・クルシエ (basson)ポール・オンニュ 1963年初出((fl)Jean-Pierre Rampal (cl)Jacques Lancelotelot (basson)Paul Hongne (hrn)Gilbert Coursier Release on 1963)
[2025-04-09]

ラフマニノフ:交響曲第2番ホ短調 作品27(Rachmaninoff:Symphony No.2 in E minor, Op.27)
アルトゥール・ロジンスキ指揮:ニューヨーク・フィルハーモニック 1945年1月15日録音(Artur Rodzinski:New York Philharmonic Recorded on January 15, 1945)
[2025-04-06]

ロッシーニ:管楽四重奏曲第1番 ヘ長調(Rossini;Quatuor No.1 in F major)
(fl)ジャン- ピエール・ランパル (cl)ジャック・ランスロ (hrn)ジルベール・クルシエ (basson)ポール・オンニュ 1963年初出((fl)Jean-Pierre Rampal (cl)Jacques Lancelotelot (basson)Paul Hongne (hrn)Gilbert Coursier Release on 1963)
[2025-04-02]

モーツァルト:セレナーデ第13番ト長調, K.575 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」(Mozart:Serenade in G Major, K.525 "Eine kleine Nachtmusik")
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1959)