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ファリャ:スペインの庭の夜

(P)クララ・ハスキル:イーゴリ・マルケヴィッチ指揮 コンセール・ラムルー管弦楽団 1960年10月録音



Falla:Nights In The Gardens Of Spain [1.En El Generalife]

Falla:Nights In The Gardens Of Spain [2.Danza Lejana]

Falla:Nights In The Gardens Of Spain [3.En Los Jardines De La Sierra De Cordoba]


民族音楽への傾斜と印象主義の影響が実に上手く融合しているかな

もともとはピアノ独奏曲として着想されたのですが、作品を献呈するつもりだったリカルド・ビニェスからの要望もあって最終的には管弦楽とピアノのための作品として完成されました。ジャンルとしては「交響詩」に分類されることもあるのですが、基本的に一風変わった「標題付き」のピアノ協奏曲と考えた方がいいでしょう。

ちなみに、リカルド・ビニェスはフランスで活躍したスペイン人ピアニストなのですが、ドビュッシー、ラヴェルのピアノ曲の初演を数多く行った事で有名です。また、作曲家としても活発に活動を行っていたようです。
つまりは、スペインで生まれたのですが、基本的にはフランスのピアニストと言っていい人のようです。ですから、この作品もファリャのパリ時代に着想されたもので、彼の作品の中ではドビュッシーなどの、いわゆる「印象派」の影響を強く受けた作品といえます。

しかし、各楽章のタイトルは以下のようにスペイン的な雰囲気が溢れていて、そのあたりにファリャの民族音楽への傾斜も感じ取れます。

  1. ヘネラリーフェにて(En el Generalife)
    アランブラのカリフのハーレムの夏の離宮。ジャスミンの花香る夜のヘネラリーフェの花園。

  2. はるかな踊り(Danza lejana)
    場所はどこともつかないが、遠くで異国風の踊りが響く庭園。

  3. コルドバの山の庭にて(En los jardines de la Sierra de Cordoba)
    コルドバ山地の庭園。聖体祭の日にジプシーたちがつどって歌い踊る。


おそらくは、作品を完成させたのがスペインに帰国後だったことも影響しているのかもしれません。

作品全体に漂う何ともいえないけだるい雰囲気は、いかにもスペインの夜を思わせますし、その雰囲気を生み出しているのはドビュッシーなどからの影響を受けた響きであることは間違いありません。そう言う意味では、この作品はファリャの中に存在した民族音楽への傾斜と印象主義の影響が実に上手く融合した作品だといえるのかもしれません。


けだるいスペインの夜の雰囲気が見事に表現されている

ハスキルとファリャというのは、全く想像もつかない組み合わせなのですが、この作品に漂う何ともいえないけだるいスペインの夜の雰囲気が見事に表現されています。ただし、そのけだるさは曖昧な響きとして表現されるのではなくて、この上もなくクリアな響きを通して実現されています。そして、その背景で支えているのは疑いもなくマルケヴィッチです。
時には、今までのハスキルとは思えないほどの強靱な響きが聞かれる場面もあるのですが、そう言う多彩なハスキルの表現を全て受け止めています。

それと、もう一つ感じた不思議は、どうしてこの時期にハスキルはこういう作品を録音したのだろうかと言うことです。
今までも何度かふれてきたことですが、ハスキルのその短すぎた実質的な活動期間の中で、彼女のレパートリーは驚くほど限定的でした。ところが、この時期になって、今まではほとんど取り上げていなかったモーツァルトのピアノ・ソナタやショパンのコンチェルトなどを録音しはじめます。そして、その極めつけがこのファリャの「スペインの庭の夜」です。

これはもう全くの想像にしか過ぎませんが、もしかしたらこの時期になってハスキルは新しく次のステップへと踏み出そうとしていたのかもしれません。確かに、病によって実質的な活動のスタートは50歳近くになってからでしたが、それでもこの「スペインの庭の夜」やショパンの「ピアノ協奏曲第2番」を録音したときはまだ65歳でした。ピアニストならば、まだまだこれからもう一花も二花も咲かせることが出来る年齢です。
そして、この録音の数ヶ月後に、思わぬ事故で最期の時を迎えるなどとは彼女は想像もしていなかったはずです。

そう思えば、かえすがえすもブリュッセルの駅での転倒事件は悔やまれてなりません。

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