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フライシャー(Leon Fleisher)|モーツァルト:ピアノ協奏曲第25番 ハ長調 K.503
モーツァルト:ピアノ協奏曲第25番 ハ長調 K.503
(P)フライシャー セル指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1957年8月3日録音
Mozart:ピアノ協奏曲第25番 ハ長調 K.503 「第1楽章」
Mozart:ピアノ協奏曲第25番 ハ長調 K.503 「第3楽章」
Mozart:ピアノ協奏曲第25番 ハ長調 K.503 「第2楽章」
コンチェルトの時代の壮麗なしめくくり

モーツァルトにとってピアノは「第2言語」でしたから、ピアノ・コンチェルトを実にたくさん書いています。しかし、その創作時期を見てみると、ザルツブルグの大司教と訣別して、フリーランスの音楽家としてウィーンに移り住んだ時期に集中しています。
その時期はモーツァルトにとっては己の想像力を思う存分に広げることができた時期であり、それに見あうだけの金銭的成功ももたらしましたから、おそらくはその生涯においてもっとも幸福な時代だったはずです。
しかし、そんな幸福はウィーン社会の変化と聴衆の飽きっぽさによって瞬く間に終わりを告げます。
このK503のハ長調コンチェルトはその様な幸福な時代の終わりを告げる「壮麗なしめくくり(アインシュタイン)」となった作品です。
この作品は、明らかに前作のハ短調コンチェルトに対する補完的な意味を持つ作品です。それは、ニ短調コンチェルトの異様さをK467のハ長調コンチェルトで浄化したのと同じです。アインシュタインは「対話的な劇的葛藤からシンフォニー的な形式に立ちかえる」と述べています。たしかに、このK503のハ長調コンチェルトほど、堂々たるシンフォニックなたたずまいを持ったコンチェルトをモーツァルトは書きませんでした。とくに第2楽章の歌の豊富さと細部の活気という点では、あのジュピターシンフォニーの緩徐楽章だけが比肩しうるとアインシュタインは褒めちぎっています。
ですから、これをもってコンチェルトの時代を終えたモーツァルトが、これに続く作品としてプラハ交響曲を書いたのは実に納得のいく話です。
しかし、不思議なことに、この作品は20番以降のコンチェルトの中では22番と並んでもっとも影が薄い存在のような気がします。もっと聞かれてもよい作品です。
お好みの方をお選びください
セル&フライシャーによる二種類の録音をアップしました。
一つめはザルツブルグ音楽祭における1957年のライブ録音、もう一つは1959年のスタジオ録音です。オケは、前者がベルリンフィル、後者はクリーブランド管です。
前者は一発勝負のライブであり、さらにオケも馴染みの薄いベルリンフィルと言うこともあって、実にオーソドックスなたたずまいです。セルは基本的に「伴奏者」の地位にとどまってフライシャーのサポートを基本としています。
フライシャーの方も、おそらく緊張感はあったでしょうが、実にのびのびと歌っています。
録音がいささか悪いのが難点ですが、フライシャーのピアノを聞きたいのならばこちらがおすすめです。
ところが、後者のスタジオ録音になるとセルとフライシャーの関係が一変します。
これはもう、コンチェルトと言うよりはシンフォニーです。ピアノはまるで独奏楽器と言うよりはオーケストラパートの一部であるかのような雰囲気です。
そして、フライシャーはそう言うポジションに文句を言うこともなく、己に課せられた役割をまじめに果たしています。
これは疑いもなく、コンチェルトの時代を終えてプラハシンフォニー以降の交響曲の時代に突入していく音楽としてセルは構築しています。
ですから、これを通常のコンチェルトとして受け取ればかなりピアニストが可哀想なのですが、上段で述べたようなモーツァルトの創作活動の背景を考えれば、こういう解釈があってもいいのかなとは思います。
もちろん、フライシャーが可哀想!!と思う人は前者をお選びください。
でも、このきまじめさが、きっと彼の右手を故障へと追い込んだんだと思います。
この演奏を評価してください。
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