Home |
トマス・イェンセン(Thomas Jensen) |シベリウス:レンミンカイネン組曲(4つの伝説曲)
シベリウス:レンミンカイネン組曲(4つの伝説曲)
トマス・イェンセン指揮 デンマーク国立放送交響楽団 1953年7月6日録音
Sibelius:Lemminkainen Suite, Op.22 [1.Lemminkainen and the Maidens of the Island]
Sibelius:Lemminkainen Suite, Op.22 [2.The Swan of Tuonela]
Sibelius:Lemminkainen Suite, Op.22 [3.Lemminkainen in Tuonela]
Sibelius:Lemminkainen Suite, Op.22 [4.Lemminkainen's Return]
民族のアイデンティティ
レンミンカイネン組曲
シベリウスにとってオペラの作曲は一種のトラウマとなっています。
カレワラの英雄レミンカイネンを主人公とした作品を何度か構想するのですが、そのたびに己のオペラに対する適正のなさを思い知らされるのでした。しかし、そうして断念したオペラの断片から「4つの伝説曲」が生み出されたのですから、才能のない作曲家から見れば羨ましい限りの話でしょう。
レンミンカイネンと島の乙女たち
トゥオネラの白鳥
トゥオネラのレンミンカイネン
レンミンカイネンの帰郷
ただし、この4曲を「組曲」としているのは便宜的なもので、それら4曲は全てバラバラで出版されていて、さらには改訂に次ぐ改訂で、最終形に辿り着いたのは1896年の初版から50年以上もたった1954年のことでした。さらに、演奏順についても指揮者にゆだねられていて、必ずしもこの順番伝送する必要もないと言うことになっているようです。
ですから、これら4曲はまとめて演奏される必然性は低く、個別に演奏されることの方が一般的です。
「トゥオネラの白鳥」はこの「4つの伝説曲」の中の第3曲として位置づけなのですが、単独で取り上げられる機会の多い作品です。
「トゥオネラ」とは「カレワラ」に出てくる黄泉の国のことで、そのまわりには黒い川が流れていて神聖な白鳥が悲しみの歌を歌っているとされています。日本の仏教説話である三途の川よりは遙かにロマンティックです。
ところが、「カレワラ」では英雄レミンカイネンは愛したポヒョラの娘を得るために娘の母親からその白鳥を捕まえてくるように命じられます。当然のことながらそのような試みは失敗するのですが、ここではその神秘的なトゥオネラの白鳥が描かれています。
それに次いで演奏機会の多いのが第4曲の「レンミンカイネンの帰郷」です。レミンカイネンンの蘇生後の帰郷を描いているこの作品は演奏効果も高いからでしょう。
それに対して、「レンミンカイネンと島の乙女たち」と「トゥオネラのレンミンカイネン」は演奏機会はそれほど多くはありません。
島に住む名家の娘キュッリッキを見初めて妻にする話や、トゥオネラの白鳥を得ようとして失敗し黄泉の国トゥオネラに運ばれる話というのは、今ひとつ人気は出ないようです。
暖色系のシベリウス
この録音を聞いていて、友人がこのオーケストラのことを非常に高く評価していたことを思い出しました。確か2019年の来日公演だったと思います。
もちろん、彼はかなりのクラシック音楽オタクですから、今さらヨーロッパからのオケだからと言って有り難がるような人物ではありません。それどころか、技術的にはそれほど上手くないといいながら、評価していたのです。
では、彼が何を評価したのかというと、今や多くのオーケストラが失いつつある「音色」を保持していることにたいしてでした。
確か、何人か集まって「最近は日本のオケも技術が向上した」という話になって、ヨーロッパのオケなどと較べてもそれほど遜色はないのだから、何も高いチケットを買って来日オケの公演なんて聴きに行く必要はないというような事を話し合っていたのです。
その時に、彼が技術的なことには同意しながらも、どうしても日本のオケには「色」がないのが残念だという文脈の中で、デンマーク国立交響楽団の来日公演について語ったのでした。
それには、一同大いに賛同の意を示し、そしてその「色」を失いつつある事の弊害はヨーロッパの一流と言われるオーケストラに於いてこそ「深刻」な事態になっているのではないかという話でさらに盛り上がりました。つまりは、私がいつもぼやいている「無味・無臭」「蒸留水」のような響きが跋扈しているという事への懸念でした。
そんな事を、この録音を聞いてるうちに思い出してしまったのです。
デンマーク国立交響楽団はデンマーク放送協会(DR)専属のオーケストラなので、デンマーク放送交響楽団とかDR放送交響楽団とも呼ばれることもあります。
そして、彼が、このオケには「色」があると言ったのは、ここで録音されているオケの「色」みたいなものが今も失われずに保持されているんだろうなと思ったしだいなのです。
おそらく、シベリウスの音楽としては「暖色系」の響きかもしれません。しかし、この「暖色系」の色合いこそがこのオケの持ち味であり、その伝統を失うことなく今も引き継いでいるのでしょう。
もっとも、カレリア組曲と較べれば、さすがに「4つの伝説曲」はいささかヒンヤリしますが、それでもどこか温かみにつつまれた響きは魅力的です。
暖色系のシベリウスというと、セーゲルスタムの交響曲録音(灼熱系?)を思い出すのですが、これはあれほどにあくどくもなく上品です。そう言う意味では、デンマークという国が持っている品格のようなものが感じられる演奏です。
なお指揮者のトマス・イェンセンについては知るところはほとんどないのですが、ニールセンの門下生で最晩年はデンマーク放送交響楽団の首席指揮者を亡くなるまで務めた人物です。そう言う意味では、彼もまたこのオケの伝統の貴重なつなぎ手だったと言えるのでしょう。
この演奏を評価してください。
よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
4618 Rating: 5.3 /10 (184 votes cast)
よせられたコメント 2021-05-31:コタロー シベリウスの「レンミンカイネン組曲」の全曲録音というのは、かなり珍しいのではないでしょうか。それだけでも資料的な価値が十分にあります。
デンマーク国立放送交響楽団は、いわば木目調の自然な風合いが魅力的ですね。イェンセンの指揮もそんなオーケストラの個性をうまく引き出していて、とても良いと思います。北欧の厳しい大自然に屹立しているというよりは、人肌を思わせるぬくもりを感じさせるユニークなシベリウスです。まさに、シベリウス好きにはたまらない演奏ですね。
【最近の更新(10件)】
[2026-10-21]
リリ・ブーランジェ:古い仏教の祈り(Boulanger:Vieille Priere Bouddhique)
イーゴリ・マルケヴィチ指揮:ラムルー管弦楽団 エリーザベト・ブラッスール合唱団 (T)レイモンド・アマデ 1958年録音(Igor Markevitch:Orchestre Des Concerts Lamoureux Elisabeth Brasseur (T)Alain Fauqueur Recorded on 1958)
[2026-10-19]
エマヌエル・ポンセ:イ短調組曲(Poncw:Suite In A minor)
(Gt)アンドレス・セゴビア:1930年録音(Andres Segovia:Recorded on 1930)
[2026-10-17]
ベートーベン:ヴィンターの歌劇「妨げられた奉納式」より四重唱「子供よ、静かにお休み」の主題による7つの変奏曲 WoO 75(Beethoven:7 Variations on the Quartet Kind, willst du ruhig schlafen from Winter's Das unterbrochene Opferfest, WoO 75)
(P)アルフレッド・ブレンデル 1958年&1960年録音(Alfred Brendel:Recorded on 1958 & 1960)
[2026-10-15]
メンデルスゾーン:ピアノ協奏曲第1番 ト短調, Op.25(Mendelssohn:Piano Concerto No.1 in G minor, Op.25)
(P)モーラ・リンパニー:ラファエル・クーベリック指揮、フィルハーモニア管弦楽団 1952年録音(Moura Lympany:(Con)Rafael Kubelik The Philharmonia Orchestra Recorded on 1952)
[2026-10-13]
ドヴォルザーク:スラブ舞曲 第2集 作品72(Dvorak:Slavonic Dances Op.72)
クルト・ザンデルリング指揮 レニングラード・フィルハーモニー交響楽団 1952年&1954年録音(Kurt Sanderling:Leningrad Philharmonic Orchestra Recorded on, 1952 & 1954)
[2026-10-11]
ヴィオッティ:ヴァイオリン二重奏曲 ト長調(Viotti:Duet for Violin Solo in G minor)
(Vn)ジョコンダ・デ・ヴィート:(Vn)イェフディ・メニューイン 1955年12月4日&6日録音(Gioconda de Vito:(Vn)Yehudi Menuhin Recorded on Decembr 4&6, 1955)
[2026-10-09]
ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲 ハ長調 「喜び」 Op. 8, No. 6, RV 180(Vivald:Violin Concerto in C Major, Op. 8, No. 6, RV 180, "Il piacere")
(Vn)フェリックス・アーヨ:イ・ムジチ合奏団 1961年9月20日~28日録音(Felix Ayo:Musici, I Recorded on September 20-28, 1961)
[2026-10-07]
J.S.バッハ:カンタータ第51番「全地よ、神を向かえて歓呼せよ」,BWV 51(J.S.Bach:Cantata: "Jauchzet Gott in Allen Landen", BWV 51)
(S)エリーザベト・シュヴァルツコップ:ペーター・ゲルホルン指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1950年10月6日録音(Elisabeth Schwarzkopf:(cpn)Peter Gellhorn Philharmonia Orchestra Recorded on October 6, 1950)
[2026-10-05]
J.S.バッハ:管弦楽組曲第4番 ニ長調 BWV1069(J.S.Bach:Orchestral Suite No.4 in D major, BWV 1069)
クルト・レーデル指揮:ミュンヘン・プロ・アルテ室内管弦楽団 1962年2月録音(Kurt Redel:The Pro Arte Chamber Orchstra of Munich Recorded on February, 1962)
[2026-10-02]
ルイス・デ・ミラン:「エル・マエストロ」からのファンタジア、舞曲、そしてロマンセ(Luys Milan:Fantasias, Dances And Romances From El Maestro)
(Lute)ヴァルター・ゲルヴィッヒ:(T)ベルンハルト・ミヒャエリス 1956年11月30日~12月1日録音(Walter Gerwig:(T)Bernhard Michaelis Recorded on Novembar 30~December 1, 1956)