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バルトーク:弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽, Sz.106

アンタル・ドラティ指揮 ロンドン交響楽団 1960年6月5.6日録音

Bartok:Music for Strings, Percussion and Celesta, Sz.106 [1.Andante tranquillo]

Bartok:Music for Strings, Percussion and Celesta, Sz.106 [2.Allegro]

Bartok:Music for Strings, Percussion and Celesta, Sz.106 [3.Adagio]

Bartok:Music for Strings, Percussion and Celesta, Sz.106 [4.Allegro molto]


最もバルトークらしい作品

「バルトークの作曲技法」という本があります。

その中で、この作品が取り上げられてフィボナッチ数列による黄金比の適用だとか、中心軸のシステムなんかについて詳細に述べられているそうです。実際、バルトーク自身もそのようなミクロ的視点というか、手法を使ってこの作品を作曲したのでしょうから、そのような分析もまた意味のあることなのでしょうが、聞き手にとってはそのような難しいことを全く知らなくてもこの作品に通底している透明感みたいなものを感じ取ることは容易いことです。そして、実に「厳しい」音楽でもあります。

この作品は2組の弦楽器群とピアノ、さらに各種打楽器という編成です。トラディショナルな観点から見ればかなり変則ではあるのですが、こういうのがバルトークは好きだったようです。4楽章構成からなり、さらにこんな事は書かなくても聞けばすぐに分かるのですが、緩ー急ー緩ー急という流れになっています。こういうシンメトリカルな構成もまたバルトークのお気に入りだったようです。(~ ~;)ウーン
さらに、これまた聞けばすぐに分かるように前半のどこかトラディショナルな世界と後半の民族色の濃い世界がこれまた際だった対比を示していて、こういうのもまたバルトークは好きだったようです。ヽ(´〜`;)ウーン
ということで、その外形においても、鳴り響く音楽の質においても、まさにバルトーク的な世界が堪能できる作品になっているわけです。
ただし、この作品が書かれたのは、ハンガリーを捨ててアメリカに亡命せざるをえなくなるぎりぎりの状態で書かれたことは最後に付け加えておきましょう。そして、弦楽四重奏曲の第6番もそうなのですが、この極限状態の中で書かれた作品には不思議な「聞きやすさ」があります。言葉をかえれば、どこか人肌のぬくもりを感じるような部分がはっきりと表面にあらわれてきているのです。その意味では、初めてバルトークにふれるには「管弦楽のための協奏曲」や「ピアノ協奏曲第3番」などと並んで相応しい作品の一つだといえるかもしれません。
さらに付け加えれば、その聞きやすさは、聞くに耐えないゲンダイ音楽を追い求める人たちからは「妥協」だの「後退」だのと批判されてきた経緯もあるのですが、70年以上も経過してみると、そう言う批判のいかに戯言であったかが誰の目に明らかになったといえると思います。でも、作曲部門のコンクールなんか見ていると明らかでない人もいるなぁ・・・(~。~;)~ ほえ?


透明感の高い硬質で澄み切った響き

ドラティの経歴を振り返ってみると、「フランツ・リスト音楽院でコダーイとヴェイネル・レオーに作曲を、バルトークにピアノを学ぶ。」となっています。その若き時代にコダーイやバルトークからどれほどの影響を受けたのかは分かりませんが、後年、フィルハーモニア・フンガリカと「コダーイ管弦楽曲全集」を録音していることから見ても、とりわけコダーイとの結びつきは強かったのかも知れません。
バルトークに関しても、アメリカに亡命してから、後の手兵となるミネアポリス交響楽団を指揮して、バルトークの遺作となるヴィオラ協奏曲の世界初演を行なっています。

ただ不思議なのは、あれほど偉大な作曲家だったバルトークが「フランツ・リスト音楽院」では作曲ではなくてピアノを教えていたという事実です。
しかし、その背景には「作曲は教えるものではないし、私には不可能です」という考えがあったことはよく知られています。ですから、この二人の偉大な作曲家から様々な形で音楽の骨格となる部分を学ぶことができたのは、ドラティの出発点としてはこの上もない幸福だったのでしょう。

ドラティという人は「録音」という行為に対しては非常に積極的でした。若い頃から「Mercury」と深い結びつきを持って膨大な量の録音を残しました。それはモノラル期にまで遡り、やがて時代がステレオ録音の時代にはいると「Mercuru」レーベルにおいて演奏・録音ともに極めて優秀なレコードを量産していきました。
そして、「Mercury」が「Philips」に吸収されても、その後は「Philips」や「DECCA」などで意欲的に録音活動を続けました。私は数えたわけではありませんが、そうやって残された正規録音の数は600近くになるそうです。
単純計算でいくと、彼の録音活動は概ね30年ですから毎年20前後の録音活動を行っていたことになります。その合間にヘタレのオーケストラを徹底的に鍛え上げるという仕事もこなしていたのですから、まさに超人的なパワーです。
そして、「なるほど、これほどに精力的活動を続けられた人であったからこそ、フィルハーモニア・フンガリカとのコンビで「ハイドン交響曲全集」なんてのが完成させることができたのでしょうね。」と納得する次第です。

ドラティのバルトークを聞いていていつも感じるのは「響きの美しさ」です。
バルトークと言えば、確かに楽器を打楽器的に扱う「荒々しさ」があちこちに顔を出すのですが、基本的には透明感の高い硬質で澄み切った響きこそが真骨頂だと思います。ドラティの演奏で聞くと、その響きが見事に実現されていることに感心させられます。
ただし、その反面として、バルトークのもう一つの顔である民族的な土俗性は希薄です。そのあたりが、フリッチャイなどとは方向性が異なります。

それにしても、ハンガリーという国は凄い国です。
この国が生み出した指揮者を数え上げるだけでも、いささか呆然となってしまいます。

シャーンドル・ヴェーグ、ユージン・オーマンディ、イシュトヴァン・ケルテス、ゲオルク・ショルティ、ジョージ・セル、フェレンツ・フリッチャイ、フリッツ・ライナー・・・。
そういえば、ハンス・リヒターやアルトゥル・ニキシュもハンガリーの人だったのではないでしょうか。

こういう系列の中に数え上げられると、アンタル・ドラティという名前はいささか霞んでしまうのかも知れませんが、それでもあらためて聞き直してみると、とりわけバルトークのような同郷の作曲家に関してならばその価値は絶対に忘れてはいけないように思います。

この演奏を評価してください。

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