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サヴァリッシュ(Wolfgang Sawallisch) |ワーグナー:「リエンチ」序曲
ワーグナー:「リエンチ」序曲
ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮 ウィーン交響楽団 1959年11月録音 Wagner:Rienzi Overture
ワーグナーの出世作
パリで不遇な時代を過ごしていたワーグナーが何とか成功を勝ち取りたいとの「鉄の意志」のもとに書き上げたのが「リエンティ」です。実際、ビューローが「マイアベーヤの最後のオペラ」と称したように、華麗で豪華な作品に仕上がっています。しかし、そのマイアベーヤの尽力があったにもかかわらずパリでの上演は成功せず、初演はドレスデンの歌劇場に行われることになります。
上演時間は6時間にも達するにもかかわらず(現在は整理がされて3時間半程度になっています)、この初演は熱狂的とも言える大成功をおさめ、無名のワーグナーを有名作曲家へと押し上げることになりました。
しかし、現在ではこれに続く「さまよえるオランダ人」と比べると評価は低く、編成の規模の大きさや上演時間の長さもあって歌劇場で上演されることはほとんどありません。CDを探してみても、全曲録音されたものは地元ドレスデンの歌劇場のものをのぞけばほとんど存在しないのではないでしょうか。そんな中で、この序曲だけはコンサートピースとしてよく演奏されます。
序曲はまずリエンツィが、民衆に革命を呼びかけるトランペットの動機から始まり、さらにリエンツィの祈りの歌「全能の天よ、護りたまえ」、リエンツィの雄叫び「聖なる魂の騎士」等が用いられていて、これを聴けば歌劇の全体が分かるという仕組みになっています。
ワーグナーへの強い共感
サヴァリッシュ先生の演奏を凄いとは思うけれど、メンデルスゾーンのようなロマン派の作品だとあと一つ何か足りないモノを感じると書きました。そして、その理由として、作曲する側の「俺が俺が」と前に出てくる強烈な自己主張に呼応する演奏する側の「自己意識」みたいなモノが希薄ではないか、と書きました。
しかし、この一連のワーグナーの管弦楽曲集を聞くと、事はそれほど単純ではないことに気づかされます。
演奏のテイストは大きくは変わっていません。
オーケストラを完璧にコントロールして、精緻に、そして一点の曖昧さもなく音楽を形作っていきます。
しかし、不思議なことに、このワーグナーではメンデルスゾーンの時に感じたような「何か足りない」みたいな感覚は希薄です。
もちろん、フルトヴェングラーやクナッパーツブッシュみたいな演奏と比較すれば物足りなく思うかもしれませんが、そもそも、サヴァリッシュの音楽はそういう音楽とはアプローチの仕方が全く異なります。
セルやライナーなども基本的に同じだと思うのですが、彼らは「音」そのもの精緻に積み重ねていくことで、その結果として自ずからワーグナーの世界を描き出そうとしています。
サヴァリッシュもまた同じです。
そして、きっとメンデルスゾーンの時は音そのものを積み重ねた造形美には感心させられるモノの、結果として、そこからはメンデルスゾーンの自意識みたいなモノは感じ取れなかったわけです。しかし、このワーグナーからは、明らかにサヴァリッシュの自意識がワーグナーの自意識に呼応している事を感じます。
最弱音から始まるリエンチ序曲は、精緻に積み重ねられた音がフィナーレに向かって拡大していく様は、まさにワーグナーの自己意識に呼応するサヴァリッシュの姿が浮かび上がります。
ジークフリート牧歌では、精緻さと透明さを保持しながら、明らかにワーグナーに呼応する音楽のうねりが感じ取れます。
そうやって、思い至るのは、サヴァリッシュは素晴らしいオペラの指揮者だったという事実です。
私たちにとってサヴァリッシュと言えば、いつもN響を指揮しているおじさん、コンサート指揮者というイメージが強いのですが、若き時代のサヴァリッシュはカラヤンやビングからウィーンやメトへ誘われるほどのオペラ指揮者だったのです。特に、ワーグナーのオペラは彼にとってはもっとも親しいモノであったのですから、そこには強い共感もあったのでしょう。
ですから、ロマン派の作品になると「何か足りない」と感じてしまうと言う言い方は、あまりにも短絡的な物言いだったと反省する次第です。
この演奏を評価してください。
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