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レスピーギ:ブラジルの印象

ドラティ指揮 ミネアポリス交響楽団 1957年7月7日、10日録音



Respighi:Impressioni brasiliane P.153 [1.Notte tropicale]

Respighi:Impressioni brasiliane P.153 [2.Butantan]

Respighi:Impressioni brasiliane P.153 [3.Canzona e Danza]


繊細な響きが魅力的な音楽

レスピーギは熱烈な古代ローマ帝国の賛美者というアナクロニズムの権化みたいな人だったようです。そして、その性行が歴史に埋もれつつあった17世のイタリア音楽の発掘という作業に向かわせたようです。
モンテヴェルディやヴィヴァルディの作品を校訂して出版なども行ったようです。
そして、そう言う作業の中で発掘してきた作品を下敷きにして、それらを現代的な装いにした管弦楽曲をたくさん生み出しました。
それらの作品はどれもが繊細な響きに彩られており、レスピーギ=ローマの松=ブッチャキサウンドと思っている人には、是非とも一度は聞いて欲しい音楽です。

ブラジルの印象



これはもう、タイトル通りの音楽です。
レスピーギは晩年になると自作の演奏のためにあちこちへと出かけていくことが多くなります。その中の一つにブラジルへの演奏旅行があり、そこでであったブラジルの音楽に大いに触発されたようなのです。
そこで、特に気に入った音楽からモチーフを取り出して、その名もズバリ「ブラジルの印象と」という組曲を作曲しました。

ただ、聞いていて面白いのは、第2曲目の「ブタンタン」で鳴り響く「怒りの日」です。この旋律は、グレゴリオ聖歌云々と言うよりも、ベルリオーズの幻想交響曲を思い出すという方がぴったりかもしれません。
「ブタンタン」とは意味不明な言葉ですが、Google先生に聞いてみると「ブタンタン毒蛇研究所」のことらしくて、今もサンパウロの有名な観光スポットになっているそうです。

おそらく、レスピーギもこの毒蛇研究所を訪れて、そこでのイメージが「怒りの日」に結びついたのでしょう。

1. 熱帯の夜 Notte tropicale
2. ブタンタン Butantan
3.. 歌と踊り Canzone e danza


オレはホントはこういう音楽をしたいんだよ

ドラティとマーキュリーレーベルといえば真っ先に思い浮かぶのが、チャイコフスキーの序曲「1812年」です。当時、世界中で200万枚売れたという超ベストセラーであり、このレーベルの録音の素晴らしさを世に知らしめた1枚です。陸軍士官学校のカノン砲がぶっ放され、72個の鐘が壮大に鳴り響くというのがこの録音の売りなのですが、確かにその迫力たるや尋常のものではありませんでした。

しかし、そういうカノン砲や鐘の音ばかりが話題になった録音なのですが、真面目に聴き直してみると意外なほどに演奏が素晴らしいことに驚かされたものです。これほどの高解像度の録音でもほとんど破綻を感じさせないオケの力量は、偉大なるオーケストラトレーナーだったドラティによる鍛錬のたまものでした。
そして、こういう大仕掛けのもとではともすれば緩みがちになり、粗っぽくもなってしまいがちな音楽をキリリと引き締めて、この冗談のような絵巻物を最後の最後まで大真面目に演じきっていました。
おそらくは、レーベルの側からは冗談みたいな音楽を要請されたのでしょうが、その冗談みたいな要請をこなしながらも、最低限の節度は保って音楽として成り立たせているあたりにドラティの良心を感じたものです。

そして、そう言う音楽家としての良心がこのレスピーギの一連の録音には如実に表れています。

オーディオが広く普及し、その「威力」を世に知らしめるためには、レスピーギの管弦楽曲は最適のアイテムでした。とりわけ、ローマの松は極限のピアニッシモから爆発するフォルティッシモまで含んでいますから、まさにオーディマニア御用達の音楽といえました。
ドラティもまた、モノラルの時代に一度、そしてステレオ録音になってからもう一度録音を行っています。
こういう事には聡いカラヤンも58年にはステレオでローマの松を録音しています。すべての楽器が力ずくではなく、しなやかに鳴りきって、その頂点で目も眩むような大爆発を演じて見せたフィルハーモニア管との演奏は実に見事なものでした。

ところが、ドラティの方は、その爆発する部分が意外と大人しいのです。
これを残念と見る向きも多く、そして私もその一人なのですが、どうやら、ドラティという人は最期の最後で「アホ」になることが出来ない人だったようです。当然、やろうと思えばやれたはずなのですが、それをやらないところにドラティという人の本質が潜んでいるように思います。

そして、その事を裏返すと、彼が「鳥」とか「教会のステンドグラス(これはかなりローマ三部作的な音楽ですが・・・))」、「ブラジルの印象」のような、他の人がほとんど取り上げない作品で素晴らしい演奏を聴かせてくれることにつがっています。その事は、ローマ三部作に続く彼の代表作である「リュートのための古風な舞曲とアリア」でも同様です。
レスピーギといえばローマの松に代表されるブッチャキ、スペクタクルサウンドが取り柄のように思われるのですが、そして実際そうでもあるのですが、それ以外にアッピア街道の松に聞ける繊細な響きこそが彼の本領であったように思います。

バロック時代のクラブサンやリュートの音楽を下敷きにした繊細な響きを、実に美しく響かせていくドラティを聞いていると、オレはホントはこういう音楽をしたいんだよ・・・という声が聞こえてきそうです。
自慢のオーディオシステムで爆音を轟かせるのもいいのですが、そういう繊細な響きを楽しむのも悪くない話です。とりわけ、聞く機会の少ない作品でもあるので、今もって貴重な録音だと言えます。

この演奏を評価してください。

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