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ストコフスキー(Leopold Stokowski) |ラヴェル:スペイン狂詩曲
ラヴェル:スペイン狂詩曲
ストコフスキー指揮 ロンドン交響楽団 1957年5月録音
Ravel:スペイン狂詩曲 「第1曲:Pre'lude a` la nuit(夜への前奏曲)」
Ravel:スペイン狂詩曲 「第2曲:Malaguena(マラゲーニャ)」
Ravel:スペイン狂詩曲 「第3曲:Habanera(ハバネラ」
Ravel:スペイン狂詩曲 「第4曲:Feria(祭り)」
ラヴェルが初めて出版した本格的な管弦楽作品
もとはピアノの連弾用として作曲されたのですが、その後オーケストレーションをほどこし、さらには4曲をまとめて「組曲」として出版されました。そして、管弦楽法の大家と言われるラヴェルの記念すべき管弦楽作品の第1号がこの作品です。
ラヴェルの母親はスペインはバスク地方の出身であり、ラヴェル自身もそのバスクの血を引き継いでいることを誇りにしていました。その意味でも、彼がオーケストラ作品の第1号にスペインを素材に選んだことは十分に納得がいきます。そして、この後も「スペインの時」や「ボレロ」のように、スペイン素材を使った作品をたくさん作曲しています。
それにしても、この作品は間違いなくリムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」の華麗なオーケストレーションをまっすぐに受け継いでいます。オーケストラ作品の第1号にして、すでに後年「オーケストレーションの天才」「管弦楽の魔術師」と呼ばれる片鱗・・・『複雑多様ではあるけれども繁雑難解ではない』という彼のモットーが実現されていることには驚かされます。
第1曲:Pre'lude a` la nuit(夜への前奏曲)
第2曲:Malaguena(マラゲーニャ)
第3曲:Habanera(ハバネラ)
第4曲:Feria(祭り)
ストコフスキーの実験精神があふれた録音
ストコフスキーはステレオの離陸期(1956年?1958年)にキャピトル・レーベルに集中的に録音をしています。
これを聞いてみると、実に奇妙な感覚におそわれます。
まず、その最大の特徴は、選曲が極めてマイナーだと言うことです。お得意のバッハ編曲は脇に置いておけば、それ以外にはドイツ・オーストリアのクラシック正統派の王道とも言うべき作品は一つも取り上げていません。
ざっと見渡してみれば、ラヴェルにドビュッシーのフランス印象派、バルトーク、シェーンベルグ、ショスタコーヴィチなどの20世紀の音楽、そして、ホルストやレスピーギみたいな派手派手音楽などです。
二つめに不思議なのは、録音のクオリティです。
ネット上を見てみると、「冴えない録音」と言う声もあれば「ステレオ初期とは思えないほどの超優秀録音」という絶賛もあるという具合です。全く同じ録音を取り上げてそのような両極端な評価が同時に存在するのですから、本当に不思議と言わざるを得ません。
となれば、それは自分の耳で確かめるしかないと言うことで、これまた最近お得意の「集中試聴」をしてみました。
その結論はと言えば、やはり実にもって不思議な感覚におそわれたと言わざるを得ませんでした。
しかし、いつまでも不思議だ不思議だとばかりは言っていられませんので、じっくりと考えてみて、ふと一つのことに思い至りました。
それは、ひと言で言えば「実験」と言うことです。
これら一連の録音を聞いてみて、まず最初に気づかされるのは、個々の楽器の分離の良さです。
例えば、シェーンベルグの「浄められた夜」なんかでは、いささか厚めの弦楽合奏をバックにヴァイオリンの独奏ソロが鮮やかに浮かび上がってきたりします。その鮮やかさは実演では絶対に聞こえてこないような類のものです。
それ以外にも、これはと思えるような旋律があると、それが笑ってしまうほどに鮮やかに浮かび上がってきます。
そして、そんな録音を次々に聞いているうちに、これは「ステレオ録音」と言う新しい技術を使う事で、エンターテイメントとしてどれくらい魅力的なパフォーマンスを披露できるのかと、芸人ストコフスキーが嬉々として実験しているんではないだろうかと思うようになってきたのです。
ところが、これもまた聞いてみればすぐに分かるのですが、そう言う極めて分離のよい高解像度な録音でとらえられた肝心の演奏の方が、極めて「緩いアンサンブル」なのです。ですから、独奏楽器の響きは極めてクリアにとらえられているのに、そのバックのオケの響きが何となく混濁して聞こえるのです。また、響き自体もどこか軟体動物のようで、背中に一本筋が通った「しゃきっとした風情」が希薄なのも不満が残るところです。
結果として、何とも言えず不思議なテイストの録音に仕上がっているというわけです。
ですから、個々のクリアな独奏楽器の響きに耳がいけば「超優秀録音」のような気もするし、音楽全体を概観する人は「冴えない録音」だと辛口になると言うことなのでしょう。
しかし、それもまた彼の実験精神のなせる技なのでしょう。
「ステレオ効果」がもたらす新しい響きに夢中になって、そう言う煩わしいこと(アンサンブルを整える・・・など)には無頓着になってしまったのでしょう。
そして、そう思えば、これら一連の録音で取り上げた作品の「偏り」にも納得がいきます。
つまりは、彼はそう言う「実験」に相応しい作品を選んだのだと思えば、ベートーベンやブラームス、モーツァルトにハイドンなどを取り上げなかったのは全く持って当然のことだったわけです。
やはり、ストコフスキーに求めるのは、芸人の「芸」なのでしょう。
そう思って聞けば、これら一連の録音は素晴らしいまでのエンターテイメントに仕上がっています。時にはこういう「お楽しみ」もあってもいいのではないでしょうか。
この演奏を評価してください。
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