Home|
セル(George Szell)|モーツァルト:交響曲第33番 変ロ長調 K.319
モーツァルト:交響曲第33番 変ロ長調 K.319
セル指揮 クリーブランド管弦楽団 1962年10月26録音
Mozart:Symphony No.33 in B-flat major, K.319 [1.Allegro assai]
Mozart:Symphony No.33 in B-flat major, K.319 [2.Andante moderato]
Mozart:Symphony No.33 in B-flat major, K.319 [3.Menuetto]
Mozart:Symphony No.33 in B-flat major, K.319 [4.Finale. Allegro assai]
モーツァルトの田園交響曲

モーツァルトの最後のザルツブルグ時代に残した3曲のシンフォニーの一つです。
この3曲は似たような構成を持ちながら、性格は全く異なります。
それがモーツァルトのモーツァルトらしいところなのですが、32番の劇的な性格、34番の壮麗な音楽とくらべると一番こぢんまりした印象を与えるのがこの33番のシンフォニーです。編成もトランペットとティンパニーが省かれているためそう言う印象がより強くなります。
このシンフォニーの何よりもの特徴はその牧歌的な明るさです。有名なモーツァルト研究家は「奴隷的なザルツブルグでの拘束の中においても、モーツァルトが明るく満ち足りた時間を過ごした事を示す」とも書いています。まさに、モーツァルトの田園交響曲と言っていい作品です。
抑えに抑えた表現の中から立ち上る華の美しさ
吉田秀和氏はセルとクリーブランド管のコンビを宋時代の白磁にたとえられました。そして、その事を受けて「50年代後半の響きは「白磁」とは少し違うように思います。白磁なら落とせば割れてしまいますが、50年代のこのコンビの響きはその様な脆さや弱さとは無縁です。」と書いたことがあります。
この60年に録音されたモーツァルトの39番は、まさにそのような境目に位置する録音のように聞こえます。
この録音を聞けば、セルがオケを強引ドライブし、オケもそれに必死でついていくような「凄まじさ」はなくなっています。言葉をかえれば、クリーブランドのオケは、セルがそれほど必死で引っ張らないでも、彼を満足させるレベルの響きを出すようになっていました。
この事を、誰かが「セルがクリーブランドのオケに包摂された」と表現された人がいました。まさに言い得て妙で、その結果としてオケの響きからは思い詰めたような必死さが姿を消して、かわりに「落とせば割れるが故の白磁の美しさ」が前面に出てきました。
セルのモーツァルトというのは、下手な再生システムで聞くとキンキンとした金属的な響きが強くて聞いていられませんが、しっかりとしたシステムで再生すると、おそらくモダンオケを使ったモーツァルトとしては極上の響きが楽しめます。
とりわけ、このコンビの代表的な録音とも言うべきト短調のシンフォニーなどはその典型で、あの録音を聞いてファーストヴァイオリンの響きが金属的で聞いていられないと思う人は再生システムを見直すべきです。
セルのモーツァルトは外見だけを見るときわめて端正で人の心をぐっと引き寄せるロマン的な身振りなどは全くありません。しかし、その端正な表現の中で間違いなく熱い心が燃えています。そして、一番凄いのは、オケのプレーヤー全員がその熱い心を持ちながら、響きはどこまでも端正で誰一人突出することなくまさに白磁のごときつややかな響きを保持していることです。
この抑えに抑えた表現の中から立ち上る華の美しさこそが、セルのモーツァルトの最良の魅力なのでしょう。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
2352 Rating: 4.9/10 (190 votes cast)
よせられたコメント
2023-01-26:koinu
- 私はこの音楽の本質を突いたすばらしい演奏と思いました。
締まりすぎているというか、厳しいというかそういう雰囲気がよろしくないというご意見もあろうかと思いますが、この演奏のモーツァルトの透明感、そこから醸し出される美しさと優しさは素晴らしいと思いました。
【最近の更新(10件)】
[2025-08-14]

ワーグナー:「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲&第3幕への前奏曲~従弟たちの踊りと親方達の入場(Wagner:Die Meistersinger Von Nurnberg Prelude&Prelude To Act3,Dance Of The Apprentices)
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)
[2025-08-11]

エルガー:行進曲「威風堂々」第4番(Elgar:Pomp And Circumstance Marches, Op. 39 [No. 4 In G Major])
サー・ジョン・バルビローリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1962年8月28日~29日録音(Sir John Barbirolli:Philharmonia Orchestra Recorded on August 28-29, 1962)
[2025-08-09]

バッハ:前奏曲とフーガ ホ短調 BWV.533(Bach:Prelude and Fugue in E minor, BWV 533)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)
[2025-08-07]

ベートーベン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93(Beethoven:Symphony No.8 in F major , Op.93)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽楽団 1958年録音(Joseph Keilberth:Hamburg Philharmonic Orchestra Recorded on 1958)
[2025-08-05]

ブラームス:クラリネット五重奏曲 ロ短調 Op. 115(Brahms:Clarinet Quintet in B Minor, Op.115)
(Clarinet)カール・ライスター:アマデウス四重奏団 1967年3月録音(Karl Leister:Amadeus Quartet Recorded on March, 1967)
[2025-08-03]

コダーイ: マロシュセーク舞曲(Zoltan Kodaly:Dances of Marosszek)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1962年11月15日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on November 15, 1962)
[2025-08-01]

ヨハン・シュトラウス2世:喜歌劇「こうもり」序曲(Johann Strauss:Die Fledermaus Overture)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 ロンドン新交響楽団 1961年録音(Rene Leibowitz:New Symphony Orchestra Of London Recorded 1961)
[2025-07-30]

エルガー:行進曲「威風堂々」第3番(Elgar:Pomp And Circumstance Marches, Op. 39 [No. 3 in C Minor])
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1966年7月14日~16日録音(Sir John Barbirolli:New Philharmonia Orchestra Recorded on July 14-16, 1966)
[2025-07-28]

バッハ:前奏曲とフーガ ハ長調 BWV.545(Bach:Prelude and Fugue in C major, BWV 545)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)
[2025-07-26]

ベートーベン:交響曲第7番 イ長調 作品92(Beethoven:Symphony No.7 in A major ,Op.92)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ベルリン・フィルハーモニ管弦楽団 1959年録音(Joseph Keilberth:Berlin Philharmonic Orchestra Recorded on 1959)