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ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」

トスカニーニ指揮 NBC交響楽団 1953年2月2日録音




望郷の歌

ドヴォルザークが、ニューヨーク国民音楽院院長としてアメリカ滞在中に作曲した作品で、「新世界より」の副題がドヴォルザーク自身によって添えられています。

この作品はその副題が示すように、新世界、つまりアメリカから彼のふるさとであるボヘミアにあてて書かれた「望郷の歌」です。

この作品についてドヴォルザークは次のように語っています。
「もしアメリカを訪ねなかったとしたら、こうした作品は書けなかっただろう。」
「この曲はボヘミヤの郷愁を歌った音楽であると同時にアメリカの息吹に触れることによってのみ生まれた作品である」

その言葉に通りに、ボヘミヤ国民楽派としてのドヴォルザークとアメリカ的な語法が結びついて一体化したところにこの作品の一番の魅力があるといえます。
さらに、過去の2作がかなりロマン派的な傾向を強めていたのに対して、この9番は古典的できっちりとしたたたずまいを見せていることも、分かりやすさと親しみやすさを増しているようです。

初演は1883年、ドヴォルザークのアメリカでの第一作として広範な注目を集め、アントン・ザイドル指揮のニューヨーク・フィルの演奏で空前の大成功を収めました。

鋼鉄の響き


トップページで新世界よりのアンケートをしている最中にこういう録音をアップするのはもしかしたら「反則」なのかもしれません。
実は、このアンケートに誰をノミネートしようかと考えているときに、最後の最後まで悩んだのがトスカニーニでした。何故ならば、トスカニーニが最晩年に録音したレスピーギの3部作やメンデルスゾーンのイタリアなどは「絶対的名演」として君臨しているのに、同時期に録音されたこの「新世界より」は世間的にはあまり評価が高くないからです。
これは実に不思議なことで、トスカニーニにとって「新世界より」は若い時代から積極的に取り上げていた作品でもあり、NBC交響楽団ともコンサートでも何回も取り上げている(識者によると5回とか・・・)得意レパートリーだったからです。
しかし、世間の評判はいまいち芳しくありません。

そんなわけで、取り上げるべきか否か、久しぶりに聴き直してみました。
そして、結論から言えば、やはり素晴らしい!と思うと同時に、嫌いな人は嫌いだろうな・・・とも納得した次第です。
この録音には土の香りは全く存在しません。
その意味ではセルなどに代表されるコスモポリタンな演奏なのですが、その徹底ぶりはセル以上です。そして、何よりも一番の違いは、オケの響きがセルは陶磁器だとすればこれはまさに鋼鉄だと言うことです。
非情な近代社会としての「新世界より」の便りは聞きたくないという人にとってはお気に召さないことは明らかです。

さて、ここからはユング君の全くの独断による話です。
もしも、この作品にセルのようなアプローチを求める人ならこの録音は二重丸のはずです。しかし、セルの新世界よりを評価している人でも、このトスカニーニの録音に言及している人は多くはありません。
これは考えてみると実に不思議なことなのですが、その最大の原因はかつてのトスカニーニ盤のお粗末きわまる復刻に起因しています。
おそらくかつてのお粗末な復刻盤で聞くと、「骸骨のダンス」と揶揄されたギスギスした音楽に聞こえたはずです。例えば、私の手もとにシベリウスの2番の古い国内盤のレコードがあります。これこそまさに骸骨のダンスと言うべき代物で、とてもじゃないが心穏やかに聞けるものではありません。おそらく、かつての新世界よりのレコードも似たような悲惨な状態だったはずです。

しかし、90年代の終わりにまとまった形でかなり良質な復刻がリリースされたことでトスカニーニの再評価が加速しました。それらのシリーズでは骸骨のダンスと思えた音楽の上にうっすらと筋肉がついていて、音楽の姿は見違えるほど生気に満ちたモノとなっていました。
しかし、かつてが遺骨のダンスを聞かされた人にしてみれば、もう一度大枚はたいて新しい復刻盤を聴き直す気にはなれず、トスカニーニに対する評価も改善されることもなかったのではないでしょうか。
ですから、かつてのあの粗悪な復刻盤を作って売り続けてきた連中の罪は万死に値します。と、同時に、この辺が、すでに物故していて実演でその真価を確かめる術のない人を評価するときの悩ましい問題だといえます。
<追記>
日本ビクターはこの年末に「XRCD24」のシリーズとしてこの録音を復刻する予定のようです。骸骨の上に筋肉がうっすらとつくだけで音楽の印象がかくも大きく変わったのですから、本来の姿にほぼ等しい状態の筋肉をまとえば、どれほど素晴らしいモノとなるのかと今から楽しみなのです。
しかし、今になってやれるなら、最初からもう少しまともな状態でリリースできなかったのかと恨み言の一つも言いたくなります。


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