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Home|セル(George Szell)|シューマン:交響曲第4番

シューマン:交響曲第4番

セル指揮 クリーブランド管弦楽団 1947年11月26日録音



Schumann:交響曲第4番 「第1楽章」

Schumann:交響曲第4番 「第2楽章」

Schumann:交響曲第4番 「第3楽章」

Schumann:交響曲第4番 「第4楽章」


マーラーへとつながっていく作品なのでしょうか?

シューマンのシンフォニーというのは年代的に見ればベートーベンとブラームスの中間に位置します。ですから、交響曲の系譜がベートーベン-シューマン-ブラームスと引き継がれてきたのかと言えば、それはちょっと違うようです。
ロマン派の時代にあってはメロディとそれをより豊かに彩る和声に重点が置かれていて、そのことは交響曲のような形式とはあまり相性がよいとは言い難いものでした。そのことは、リストによる交響詩の創作にも見られるように、構築物として音楽を仕上げるよりは物語として仕上げることに向いた仕様だったといえます。
こういう書き方をすると誤解を招くかもしれませんが、シューマンの交響曲を聴いていると、それはベートーベンから受け継いだものをブラームスへと受け継いでいくような存在ではなくて、ベートーベンで行き着いた袋小路から枝分かれしていった一つの枝のような存在であり、それがリストに代表される交響詩へと成長していったと把握した方が実態に近いのではないかと思います。
とりわけこの第4番の交響曲を聴くと、それはベートーベン的な構築物よりは、交響詩の世界の方により近いことを実感させられます。
事実、シューマン自身もこの作品を当初は「交響的幻想曲」とよんでいました。

この作品は番号は4番となっていますが、作曲されたのは第1番と同じ1841年です。当初はその作曲順の通りに第2番とされていて、同じ年に初演もされています。
しかし、第1番と違って初演の評判は芳しくなく、そのためにシューマンは出版を見あわせてしまいます。そのために、5年後に作曲された交響曲が第2番と名付けられることになりました。
その後この作品はシューマン自身によって金管楽器などの扱いに手直しが加えられて、1853年にようやくにして出版されることになります。
シューマンの音楽というのはどこか内へ内へと沈み込んでいくような雰囲気があるのですが、4曲ある交響曲の中でもその様な雰囲気がもっとも色濃く表面にでているのがこの第4番の交響曲です。そして、こういう作品をフルトヴェングラーのような演奏で聞くと、「そうか、これはリストではなくてマーラーにつながっていくんだ」と気づかされたりする作品です。第3楽章から第4楽章につながっていく部分は誰かが「まるでベートーベンの運命のパロディのようだ!」と書いていましたが、そういう部分にもシューマンの狂気のようなのぞいているような気がします。


リストラ

セルは全権を掌握することを条件に田舎の二流オケにすぎなかったクリーブランド管のシェフに就任しました。
ヨーロッパ時代には順調にキャリアを重ね、第2次世界大戦でアメリカでの活動を余儀なくされたときもメトやニューヨークフィルを相手に華々しく活躍していたセルにとって、それは明らかにキャリアダウンのように思われました。しかし、セルはその様な目の前のキャリアアップなどには何の興味もなかったようで、彼が目指したのは、オケの全権を掌握することで、全てをゼロからスタートさせて自らが理想とするオケを作り出すことでした。

セルがクリーブランドのオケと初めて出会ったのは1940年のことだと言われています。彼はその時の印象を規律に満ちた素晴らしいオケであると述べています。しかし、1944年に初めて客演したときにはその様な規律は全く消え失せていたようで、昔の素晴らしい規律と秩序を一刻も早く取り戻さなければいけないと感じたそうです。
つまり、セルはクリーブランドのオケに自らの理想を実現できる可能性を見いだしていたのです。
1946年に彼がクリーブランドに乗り込んで真っ先にやったことは自分の指示に追随できないメンバーの大量解雇でした。
その意味でこの1947年に録音されたシューマンの4番は興味深い演奏です。この47年の4番は大量解雇の恐怖の中でメンバー全員が必死にセルの棒に食らいついていく事で成り立っている録音です。
そう言えば、この大量解雇の時代にセルはシューマンやハイドンなんかをたくさん録音しています。これって考えてみれば凄いことです。とにかくオケのメンバーの性能試験をする上でこれほどピッタリの作曲家は他には思い当たりませんからね。

それにしても、これを聞く限りではクリーブランドのオケはセルの棒にしっかりと食らいついているように聞こえます。演奏そのものも十分に完成度は高いように思えるのですが、それでもなお、この録音に参加したメンバーのかなりの部分がその後解雇されたのです。
おそらくオケのメンバーにとっては地獄のような日々の中での録音だったでしょう。そして、その様な地獄を演出してでも己の理想を実現しようとしたセルという男のファナティックな横顔が浮き彫りになった録音だと言えます。

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