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モントゥー(Pierre Monteux)|リムスキー=コルサコフ:音画「サトコ」 作品5
リムスキー=コルサコフ:音画「サトコ」 作品5
ピエール・モントゥー指揮 サンフランシスコ交響楽団 1945年3月3日録音
Rimsky-Korsakov:Sadko, Op.5
スラブ民族主義が高揚する時代にあっては魅力的な素材だったのでしょう

「サトコ」などというタイトルを見ると、19世紀後半にヨーロッパで巻き起こった「ジャポニズム」の影響を受けた作品かと思うのですが、実はノブゴロドの古い伝説をもとにした音楽です。
さらに、この管弦楽曲の要素は、後に歌劇「サトコ」にも活用されました。
ただし、その両者の関係は音画「サトコ」をもとにして歌劇「サトコ」が成立したのではなく、歌劇「サトコ」を作曲していく過程でかつて書いた音画「サトコ」の旋律を借用したというのが正しいようです。
ですから、この「音画」と歌劇は全く無関係ではないのですが、基本的には別個の作品と見た方がいいようです。
「サトコ」というのはグースリというロシアに伝わる伝統的な弦楽器の奏者だった男の冒険物語です。
サトコが演奏するグースリの響きに魅了された海の王の娘ヴァルホヴァの助けを得て世界の海へと乗り出して大金持ちになるのですが、やがて海の王の怒りにふれて海底の世界へと沈んでいきます。
しかし、ヴァルホヴァの取りなしで王の怒りも静まり、サトコはヴァルホヴァと結婚することになります。しかし、その祝宴が最高潮に達したときに聖なる神が現れ、サトコにノブゴロドに帰ることを、そして王の娘にはノブゴロドの美しい流れとなることを命じます。
そして二人は神の命じるままに海の王国を去りノブゴロドに戻り、ヴァルホヴァは美しい流れとなり、サトコは懐かしい妻の歌声に我に返ります。
やがて。サトコの船団も無事にノブゴロドに戻り、町はますます栄えます。
ざっとこういうストーリーのようなのですが、それではヴァルホヴァの立場はどうなるんだという気もするのですが、それでもスラブ民族主義が高揚する時代にあっては魅力的な素材だったのでしょう。
オケというのは不思議な存在です
モントゥは1935年から1953年までのおよそ20年近い歳月をサンフランシスコ交響楽団とすごします。そして、初期の録音を聞く限りでは、サンフランシスコ交響楽団は本当に田舎のオケで、「下手くそなオケ」であったことは否定できません。
確かに、やけに元気はいいもののかなり荒い演奏です。しかし、そう言う40年代の一連の録音を聞き直してみて、かなり面白く聞くことができたことも申し述べておかなければなりません。
感じたことは以下の2点です。
まずは「やけに元気はいい」演奏という点なのですが、そこには地方の小さな田舎オケにRCAというメジャー・レーベルからの録音のオファーがあったことによる驚きと喜び、そして強い意気込みが溢れた結果だと言うことに気づかざるを得ませんでした。おそらく、彼らにとっては、喜びに満ちた時間であり、己の持てる力を最大限に発揮してモントゥの棒に応えようとしていることがひしひしと伝わってきます。
その姿勢はある意味ではアマチュアのオケが持っている情熱にどこか通ずるものがあります。
アマチュアのオケが情熱を込めて為し得た演奏は至らぬ部分が多々あっても、上手なオケがルーティンワークとしてキッチリと仕上げた演奏をはるかにうわ回る感銘を与えてくれることがあるのです。それとよく似た雰囲気が彼らの40年代の録音にも感じられます。
しかし、それだけではプロのオケとしてはいささか情けないと言うことになってしまいます。
二つめに指摘しておきたいのは、彼らの40年代の録音には指揮者であるモントゥが持つ「色香」のようなものが漂っていることです。
吉田秀和は「彼はまた『より美しい性』からもたっぷり愛され、彼自身も、女性たちやよい食事、よいワイン、そうしてよい音楽を存分に愛する人間に属していた」と書いていました。
そう言えば、ムラヴィンスキーは「アトモスフェア」と言うことを大事にしました。「アトモスフェア」とは日本語に翻訳しにくい言葉なのですが、ムラヴィンスキー的に言えば、取り上げる作品が決まった時点から己の生活をその作品が持つ世界に添うように染め上げてしまうことが大切だと言うことです。
つまりは己の生活をその作品世界に染み込ませ、その世界にオケもひたらせてしまう事こそが大切だと言うのです。
そして、モントゥという人は常に華やかな色香に溢れた人生をおくった人であり、その雰囲気が彼が指揮する全ての音楽に通底しているのです。
もしかしたら、40年代のサンフランシスコ響は下手くそ故にモントゥの棒にしがみつき、そのおかげでモントゥが持つ色香がよくあらわれているような気がするのです。
オケというのは不思議な存在です。
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