クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|スワロフスキー(Hans Swarowsky)|ヨハン・シュトラウス II:皇帝円舞曲, Op.437

ヨハン・シュトラウス II:皇帝円舞曲, Op.437

ハンス・スワロフスキー指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団 1951年録音



Johann Strauss:Kaiser-Walzer Op.437


社交の音楽から芸術作品へ

父は音楽家のヨハン・シュトラウスで、音楽家の厳しさを知る彼は、息子が音楽家になることを強く反対したことは有名なエピソードです。そして、そんなシュトラウスにこっそりと音楽の勉強が出来るように手助けをしたのが母のアンナだと言われています。後年、彼が作曲したアンネンポルカはそんな母に対する感謝と愛情の表れでした。
やがて、父も彼が音楽家となることを渋々認めるのですが、彼が1844年からは15人からなる自らの楽団を組織して好評を博するようになると父の楽団と競合するようになり再び不和となります。しかし、それも46年には和解し、さらに49年の父の死後は二つの楽団を合併させてヨーロッパ各地へ演奏活動を展開するようになる。
彼の膨大なワルツやポルカはその様な演奏活動の中で生み出されたものでした。そんな彼におくられた称号が「ワルツ王」です。
たんなる社交場の音楽にしかすぎなかったワルツを、素晴らしい表現力を兼ね備えた音楽へと成長させた功績は偉大なものがあります。

皇帝円舞曲 作品437


この作品を聞くと、確かに「皇帝」と言う名にふさわしい堂々たる音楽になっています。そして、それはもはや舞踏会でのダンスのための実用的な音楽という枠をはるかに超えて、完全にコンサート会場において「聞く」ための音楽になっています。

しかしながら、この作品は最初は「Kaiser-Walzer」ではなくて、「Hand in Hand」となっていました。
もともとが、新しくプロイセンの皇帝に即位したヴィルヘルム2世を、オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフが表敬訪問するために作曲されたものでした。かつて干戈を交え、緊張関係にある両国の関係を緩和するためにこの表敬訪問はきわめて大きな政治的意味を持ち、そのためにフランツ・ヨーゼフの座右の銘「Viribus Unitis(一致団結)」を意識したものだと言われます。

しかし、最後の最後の土壇場で、出版社が「Hand in Hand」ではなくて「Kaiser-Walzer」の方が相応しいだろうと言うことで、この名前が用いられるようになりました。
確かに冒頭の行進曲風のはじまり方が、この二国間の過去をかすかに思い起こさせてドキッとするのですが、それに続くチェロの美しい独奏によってその一瞬の緊張感は一掃されます。そして、その後に美しくも華やか5つのワルツが連なります。このあたりの手際は実に見事なものです。
そして最後はトランペットのファンファーレで華々しいコーダに突入します。

おそらく、この「序奏ーワルツーコーダ」というスタイルが、実用的な舞踏音楽からコンサート音楽へとワルツを引き上げるためのシュトラウスが編み出したスタイルだったようです。


スワロフスキーならではの歌い回し

ハンス・スワロフスキーと言えば指揮法の名教師でありながら指揮者としては今ひとつというのが常識でした。
「音楽は楷書的でしっかりしたものではあったが、あまり面白いものではなかった。」とか「尋常でないほど音楽の運びがぎくしゃくしがちな指揮者」などと言われたものでした。

しかしながら、例えばシューベルトの「未完成」などを聞くと、推進力にあふれた直線的な造形でありながら、いわゆるアメリカ的なザッハリヒカイトな演奏とは少し雰囲気が違うなと言うことでした。
非常に手堅い指揮ぶりで、一見すると何もしていないように見えながら、聞き進んでいくうちにジワジワと盛り上がってくるような雰囲気があって、それはまさにアバドの演奏と非常によく似ているなと思いました。

しかし、そう言うスタイルで、例えばヨハン・シュトラウスのような作品を演奏すればどうなるのかは考えてみればすぐに想像がつきます。ウィンナー・ワルツを楽譜通りに端正にスッキリと仕上げただけでは面白いはずもなく、聞くだけ時間の無駄と言わざるを得ません。
ですから、最初はスワロフスキーのウィンナーワルツか・・・と言う感じだったのですが、実際に聞いてみればその予想はいい方に見事に裏切られました。
確かに、響きはスッキリとしていてその面では楷書的なのですが、その歌い回しは実に見事なもので、それはスワロフスキーならではの独自性を持ったものでした。

スワロフスキーはハンガリー出身ですが、その人生の大半はウィーンですごしています。シェーンベルクに作曲を習い、ワインガルトナーに指揮法を学び、指揮者としてもウィーン響の首席指揮者やウィーン国立歌劇場の指揮者も務めた人物です。まさにウィーンの体現者のような人物なのですが、その歌い回しはクレメンス・クラウスやボスコフスキーなどとはまた異なった歌い回しです。

出来れば。スワロフスキーのウィンナーワルツという看板を見てパスしたくなる人もいるでしょうが、まあ一度は聞く価値はあるかと思います。「古き良き昔の時代」のものとはどこか異なった魅力があります。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



4946 Rating: 4.9/10 (96 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント




【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-10-14]

ワーグナー;神々の黄昏 第3幕(Wagner:Gotterdammerung Act3)
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)

[2025-10-13]

ワーグナー;神々の黄昏 第2幕(Wagner:Gotterdammerung Act2)
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)

[2025-10-12]

ワーグナー;神々の黄昏 第1幕(Wagner:Gotterdammerung Act1)
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)

[2025-10-11]

ワーグナー;神々の黄昏 プロローグ(Wagner:Gotterdammerung Prologue )
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)

[2025-10-08]

ベートーベン:交響曲第5番 ハ短調 「運命」 作品67(Beethoven:Symphony No.5 in C minor, Op.67)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年8月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on August, 1961)

[2025-10-06]

エルガー:交響的習作「フォルスタッフ」, Op.68(Elgar:Falstaff Symphonic Study, Op.66)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1964年6月1日録音(Sir John Barbirolli:Halle Orchestra Recorded on June 1, 1964)

[2025-10-04]

ブラームス:弦楽四重奏曲 第3番 変ロ長調 Op.67(Brahms:String Quartet No.3 in B-flat major, Op.67)
アマデウス弦楽四重奏団 1957年4月11日録音(Amadeus String Quartet:Recorde in April 11, 1957)

[2025-10-02]

J.S.バッハ:幻想曲 ハ短調 BWV.562(Bach:Fantasia and Fugue in C minor, BWV 562)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)

[2025-09-30]

ベートーベン:合唱幻想曲 ハ短調 Op.80(Beethoven:Fantasia in C minor for Piano, Chorus and Orchestra, Op.80)
(P)ハンス・リヒター=ハーザー カール・ベーム指揮 ウィーン交響楽団 ウィーン国立歌劇場合唱団 (S)テレサ・シュティヒ=ランダル (A)ヒルデ・レッセル=マイダン (T)アントン・デルモータ (Br)パウル・シェフラ 1957年6月録音(Hans Richter-Haaser:(Con)Karl Bohm Wiener Wiener Symphoniker Staatsopernchor (S)Teresa Stich-Randall (A)Hilde Rossel-Majdan (T)Anton Dermota (Br)Paul Schoffler Recorded on June, 1957)

[2025-09-28]

エルガー:コケイン序曲 Op.40(Elgar:Cockaigne Overture, Op.40)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1962年5月9日&8月27日録音(Sir John Barbirolli:The Philharmonia Orchestra Recorded on May 9&August 27, 1962)