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ベートーベン:交響曲第5番「運命」

メンゲルベルグ指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1940年4月18日録音



Beethoven:交響曲第5番「運命」「第1楽章」

Beethoven:交響曲第5番「運命」「第2楽章」

Beethoven:交響曲第5番「運命」「第3・4楽章」


極限まで無駄をそぎ落とした音楽

今更何も言う必要がないほどの有名な作品です。
クラシック音楽に何の興味がない人でも、この作品の冒頭を知らない人はないでしょう。

交響曲と言えば「運命」、クラシック音楽と言えば「運命」です。

この作品は第3番の交響曲「エロイカ」が完成したすぐあとに着手されています。スケッチにまでさかのぼるとエロイカの創作時期とも重なると言われます。(1803年にこの作品のスケッチと思われる物があるそうです。ちなみにエロイカは1803〜4年にかけて創作されています。)

しかし、ベートーベンはこの作品の創作を一時的に中断をして第4番の交響曲を作曲しています。これには、とある伯爵未亡人との恋愛が関係していると言われています。
そして幸か不幸か、この恋愛が破局に向かう中でベートーベンはこの運命の創作活動に舞い戻ってきます。

そういう意味では、本格的に創作活動に着手されたのは1807年で、完成はその翌年ですが、全体を見渡してみると完成までにかなりの年月を要した作品だと言えます。そして、ベートーベンは決して筆の早い人ではなかったのですが、これほどまでに時間を要した作品は数えるほどです。

その理由は、この作品の特徴となっている緊密きわまる構成とその無駄のなさにあります。
エロイカと比べてみるとその違いは歴然としています。もっとも、その整理しきれない部分が渾然として存在しているところにエロイカの魅力があるのですが、運命の魅力は極限にまで整理され尽くしたところにあると言えます。
それだけに、創作には多大な苦労と時間を要したのでしょう。

それ以後の時代を眺めてみても、これほどまでに無駄の少ない作品は新ウィーン楽派と言われたベルクやウェーベルンが登場するまではちょっと思い当たりません。(多少方向性は異なるでしょうが、・・・だいぶ違うかな?)

それから、それまでの交響曲と比べると楽器が増やされている点も重要です。
その増やされた楽器は第4楽章で一気に登場して、音色においても音量においても今までにない幅の広がりをもたらして、絶大な効果をあげています。
これもまたこの作品が広く愛される一因ともなっています。


ナチス侵攻前のベートーベン・チクルス

メンゲルベルグという人は二つの顔を持っていました。(・・・その様に私には見えます)

一つはポルタメントを多用して濃厚な表情をつけ、テンポも大きく揺らして(崩して?)演奏するメンゲルベルグです。一般的にメンゲルベルグといってイメージされるのはこのタイプの演奏です。
しかし、彼の録音をあれこれと聞いていくと、もう一つの顔に行き当たります。それは、早めのテンポをしっかりと維持しながら、強めにアタックをつけて迫力満点に演奏をするメンゲルベルグです。

そして、崩しの達人のように言われるメンゲルベルグなのですが、実際に聞いてみると後者のような演奏の方が多いことに気づかされます。とりわけ、ここでお聞きいただいているベートーベンチクルスの録音は、後者のメンゲルベルグの特徴がよくあらわれた演奏だと言えます。
もちろん、4番や7番の第2楽章のように濃厚な表情をつけているところもありますが、全体としてみれば至極まっとうな演奏のように聞こえます。(この二つの楽章は、さすがメンゲルベルグ!!と思わせるほどに魅力的です。特に4番の第2楽章は素晴らしい!!)
また、部分的にはピチカートをつけているのではないかと言うほどに強くアクセントをつけて、作品が持つ推進力をよりいっそう際だたせようとしています。そのために、非常に健康的なベートーベンと聞かせてもらったという感想が残ります。ただし、そういうベートーベンならば代替品はいくらでもありますから、4番や7番の第2楽章意外はレア物としての価値は低いと言わざるを得ません。

しかし、やはりメンゲルベルグですから、強めのアタックとたたみかけるような迫力だけで作品全体を押し切ってはいません。
それは、あちこちですでに書いているのですが、細部優先という彼の本性です。ですから、彼が「素敵だ!」と思う細部に行き当たると、それをどうしても聞き手に対して提示したくなってしまう「欲望」を抑え切れず、突然にテンポを落としたり、彼ならではの表情をつけたりしてしまうのです。

問題はそれをどのように評価するかです。
メンゲルベルグをこよなく愛する人たちは、そこにこそ彼の魅力があるといいます。
確かに、それが一発勝負のライブならば十分に魅力的で説得力もあっただろう思われます。その意味では、メンゲルベルグという人は基本的には劇場の人だったといえるのでしょう。
しかし、録音されたものとして何度も聞き返してみると、突然のテンポの変化や濃厚な表情付けは恣意的なものに聞こえ、煩わしささえ覚えてしまうことも否定できません。全体としてみれば、快調なテンポで順調に事は運んでいるのに、なぜに突然その様な異物が挟み込まれるのかが理解できないのです。

では、お前はどうなんだ?と聞かれれば、残念ながら後者の立場であることを告白せざるを得ません。
しかし、一部の根強いメンゲルベルグのファンからは「是非とも9番だけでなく、残りの作品もアップしてほしい」という要望がありますし、1番、2番、7番あたりはけっこういいのではないかと思う面もありますので、意を決して(^^;残りの全曲をアップすることにしました。
しかし、クラシック音楽初心者で、初めてそれらの作品を聞くと言うときにはあまり適した演奏ではないということは理解しておいて下さい。

なお、このベートーベンチクスルがどのような経緯で計画されたのかは、あれこれ調べてみたのですがよく分かりませんでした。演奏会のプログラムは以下の通りなのですが、これらは全て録音されることを前提としていたようで、1・2・7・9番のように、うまくいった物は(?)、この時代のもとしてはかなり良質な音質で楽しむことが出来ます。
しかし、第3番に関しては、録音時に何らかの事故があった模様で、ノイズが盛大に入り込んでいます。また、4番も冒頭部分の音質が芳しくありません。(3分程度でしょうか)また、5番・6番・8番に関しても、ドア一枚隔てて聞いているようなこもった音質なのも残念です。

ちなみに、最後の第9の演奏会がナチス侵攻前の最後の演奏会となっていますから、かなりの緊迫感の中で行われた演奏会であり録音だったことはうかがわれます。

1940年4月14日
交響曲第1番 ハ長調
交響曲第3番 変ホ長調<英雄>
1940年4月18日
交響曲第5番 ハ短調<運命>
交響曲第8番 ヘ長調
ヴァイオリン協奏曲 ニ長調
1940年4月21日
交響曲第2番 ニ長調
交響曲第6番 ヘ長調<田園>
1940年4月25日
交響曲第4番 変ロ長調
交響曲第7番 イ長調
1940年5月2日
交響曲第9番 ニ短調<合唱付>

ナチスはこの最後の演奏会の8日後の5月10日に空挺部隊をオランダ各地に降下させて侵略を開始します。13日にはオランダの王室と政府はロンドンに逃れ、15日にオランダはドイツに降伏します。
そして、政治音痴のメンゲルベルグはゲッペルスの要請を受けて、ドイツ支配下における指揮活動をベルリンフィルへの客演で再スタートします。
オランダにとっては宝とも言うべきメンゲルベルグが、ナチスドイツの首都であるベルリンで演奏会を行うと言うことが、どのようなメッセージを世界を発信するかを彼は最後まで理解できなかったようです。フルトヴェングラーは、ナチスが侵略した国では絶対に指揮活動を行いませんでしたが、その辺の政治的無頓着さが戦後の二人の運命を分かつことになったのかもしれません。

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