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アタウルフォ・アルヘンタ(Ataulfo Argenta)|グラナドス:アンダルーサ(スペイン舞曲第5番)
グラナドス:アンダルーサ(スペイン舞曲第5番)
アタウルフォ・アルヘンタ指揮 ロンドン交響楽団 1957年1月録音
Granados:Andaluza(Doce danzas espanolas No.5)
管弦楽編曲されたこの作品が飛び抜けて有名

この時代のヨーロッパでは、とりわけパリでは「スペイン風」が流行していたようです。すでに紹介しているモシュコフスキのスペイン舞曲やシャブリエの狂詩曲「スペイン」、リムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」など、スペイン人ではない作曲家によってスペイン情緒を想起させる作品が多く書かれました。極めつけは、ラロのスペイン交響曲で、よく間違われるのですがラロはスペイン人ではなくてフランス人であり、さらには旅行でさえもスペインを訪れたことがなかったのです。
そんな風潮の中で、「スペイン風」ではなくて、スペイン人による本当の「スペインの音楽」を書こうという気運が盛り上がってきます。そう言う動きの旗手となったのがファリャやグラナドスでした。
このグラナドスの「スペイン舞曲集」も、ファリャの「スペインの庭の夜」と同じように民族音楽への傾斜が影響しています。全体は12曲からなっているのですが、各々3曲から成る4つの曲集により構成されています。
そして、グラナドスはこの作品集の第1集(第1番~第3番) をバルセロナにて行った自身初の公開演奏会で披露することで、有名ピアニストとしの第一歩としてだけでなく、作曲家としての評価も受けることになります。
そう言えば、同時代のフランスの作曲家ジュール・マスネがこの作品の楽譜を見てグラナドスを「スペインのグリーグ」と賞賛したそうなのですが、フランスにおいても「スペイン風」ではなくて、スペインの民族音楽に基盤を持った「スペイン音楽」が待たれていたのでしょう。
なお、この全12曲には1曲ずつにタイトルが付けられていますが、グラナドス自身が付けたものは4 曲目の「ビリャネスカ」と7曲目の「バレンシアーナまたはカレセーラ」のみだそうです。
他の曲のタイトルは全て出版社が勝手に付けたものだそうです。
ちなみに、そのタイトルは日本語で紹介しておいた方が親切でしょう。
第1集
- 第1番 ガランテ または メヌエット
- 第2番 オリエンタル
- 第3番 ファンダンゴ または ガリシア舞曲
第2集
- 第4番 ビリャネスカ
- 第5番 アンダルーサ または 祈り
- 第6番 ロンダーリャ・アラゴネーサ
第3集
- 第7番 ヴァレンシアーナ または カレセーラ
- 第8番 サルダーナ
- 第9番 マズルカ または ロマンティカ
第4集
- 第10番 悲しき舞曲 または メランコリカ
- 第11番 ザンブラ
- 第12番 アラベスカ
なお、この中で飛び抜けて有名なのが第5曲の「アンダルーサ(祈り)」です。この作品は管弦楽編曲もされていて、オーケストラのアンコールピースとしてはピッタリの音楽に仕上がっています。
また、作品全体がギターにも合うので、ピアノではなくてギターで演奏されることも多いようです。
思いっきりスペインの側にふれた演奏
アタウルフォ・アルヘンタの名前も聞くことは少なくなってきたのですが、未だに一部では根強い支持者がいるようです。それは、若くして不幸な死を迎えたアルヘンタへの思いがあるからでもあり、さらに言えば、彼の最後の年となった1957年から58年にかけての演奏と録音が素晴らしかったからです。
とりわけ、「Espana!(エスパーニャ)」と題されたアルバムには以下の4曲が収録されていて、その思いっきりスペインの側に振り切れた演奏は今も名盤として名高い一枚となっています。
- グラナドス:アンダルーサ(スペイン舞曲第5番)
- シャブリエ:狂詩曲「スペイン」
- モシュコフスキ:スペイン舞曲第I巻 Op.12
- リムスキー・コルサコフ:スペイン奇想曲, Op.34
このうちグラナドスだけがスペイン人なのですが、それ以外は全て外国人によるスペイン風の音楽が選ばれています。さらに言えば、グラナドスもまたカタルーニャ地方の出身ですから、スペインの中では独自の文化持った地域にルーツを持っています。
ですから、それらの作品はあくまでも「スペイン風」であって、その作品の根っこにはそれぞれの母国の血のようなものが流れています。
確認するまでもないかもしれませんが、シャブリエはフランス、モシュコフスキはポーランド、そしてリムスキー・コルサコフは言うまでもなくロシアです。
この中でも、リムスキー・コルサコフのスペイン奇想曲は「スペイン」と名前はついていても根深くロシアの憂愁みたいなものがつきまとう作品です。しかし、アルヘンタはそう言うものは全て投げ捨てて、明るく弾むようなスペインの音楽として聞き手に提示してくれています。それはもう、爽快という一言に尽きます。
しかしながら、この少し前までは、アルヘンタはこういう人ではありませんでした。
切っ掛けは、1956年に結核のために長く指揮活動を中断しなければいけなかったことです。もともと病弱だったと伝えられているアルヘンタですから、それは彼に大きな衝撃と同時に、自分の音楽をもう一度見つめ直す機会を与えたのかもしれません。
それだけに、1958年1月に、車のエンジンを切らずに眠り込んでしまい、一酸化炭素中毒で急逝したのは実に惜しまれる話です。
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