クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~



AmazonでCDをさがすAmazonでクレメンス・クラウス(Clemens Krauss)のCDをさがす
Home|クレメンス・クラウス(Clemens Krauss)|ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 作品68

ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 作品68

クレメンス・クラウス指揮:ブレーメン・フィルハーモニー管弦楽団 1952年3月13日



Brahms:Symphony No.1 in C Minor, Op. 68 [1.Un poco sostenuto - Allegro]

Brahms:Symphony No.1 in C Minor, Op. 68 [2.Andante sostenuto]

Brahms:Symphony No.1 in C Minor, Op. 68 [3.Un poco allegretto e grazioso]

Brahms:Symphony No.1 in C Minor, Op. 68 [4.Piu andante - Allegro non troppo, ma con brio - Piu allegro]


ベートーヴェンの影を乗り越えて

ブラームスにとって交響曲を作曲するということは、ベートーヴェンの影を乗り越えることを意味していました。それだけに、この第1番の完成までには大変な時間を要しています。

彼がこの作品に着手してから完成までに要した20年の歳月は、言葉を変えればベートーヴェンの影がいかに大きかったかを示しています。そうして完成したこの第1交響曲は、古典的なたたずまいをみせながら、その内容においては疑いもなく新しい時代の音楽となっています。

の交響曲は、初演のときから第4楽章のテーマが、ベートーヴェンの第9と似通っていることが指摘されていました。それに対して、ブラームスは、「そんなことは、聞けば豚でも分かる!」と言って、きわめて不機嫌だったようです。

確かにこの作品には色濃くベートーヴェンの姿が影を落としています。最終楽章の音楽の流れなんかも第9とそっくりです。姿・形も古典派の交響曲によく似ています。
しかし、ここに聞ける音楽は疑いもなくロマン派の音楽そのものです。

彼がここで問題にしているのは一人の人間です。人類や神のような大きな問題ではなく、個人に属するレベルでの人間の問題です。
音楽はもはや神をたたるものでなく、人類の偉大さをたたえるものでもなく、一人の人間を見つめるものへと変化していった時代の交響曲です。

しかし、この作品好き嫌いが多いようですね。
嫌いだと言う人は、この異常に気合の入った、力みかえったような音楽が鬱陶しく感じるようです。
好きだと言う人は、この同じ音楽に、青春と言うものがもつ、ある種思いつめたような緊張感に魅力を感じるようです。

私は、若いときは大好きでした。
そして、もはや若いとはいえなくなった昨今は、正直言って少し鬱陶しく感じてきています。(^^;;
かつて、吉田秀和氏が、力みかえった青春の澱のようなものを感じると書いていて、大変な反発を感じたものですが、最近はこの言葉に幾ばくかの共感を感じます。
それだけ年をとったということでしょうか。

なんだか、リトマス試験紙みたいな音楽です。


何とも言えず不思議な演奏

録音クレジットを見ればモーツァルトのジュピターと同じですから、この2曲は当日のプログラムだったのでしょう。そして、レーベルの宣伝文を読んでみると、このブラームスの1番を「暴演」と評しています。
しかしながら、聞き始めてみると、これのどこが「暴演」なのかと不思議に感じてきます。

確かに、当日のジュピターと同じようにかなり自由に旋律を歌わせていますが、それは決して恣意性を感じさせないものであり、逆にクラウスのそれらの作品への深い理解と愛情を感じさせるものです。もしも「暴演」と言うなれば、40年代にウィーン・フィルと録音した「ジュピター」こそがその名にふさわしいでしょう。

さらに、感心するのはブレーメン・フィルが紡ぎ出す響きの美しさです。
これは、クラウスのバンベルグ響との録音の時にも感じたことなのですが、クラウスという人が求める響きは常にウィーン・フィルを連想させます。クラウスという人は見かけによらずしつこくリハーサルを行う人だったようで、自分が求める響きが実現するまで諦めない人だったのでしょう。ですから、例えばこのブラームスの1番の第2楽章における弦楽器の響きの美しさなどは、実に見事なものです。

ところがなのです。
そんな風にブレーメン・フィルなのかウィーン・フィルなのか区別がつきにくいほどに美しくブラームスを演奏しながら、何故か第4楽章の、あのベートーベンの第9を思わせる有名なテーマが登場すると急にテンポが速くなってしまうのです。おそらく、このギア・チェンジはリハーサルの時にはなかったものであることは明らかです。
何故ならば、それを切っ掛けに明らかにオケは混乱に陥っています。

おそらくは「約束が違うじゃない、リハーサルは何だったの?」などと思いながらも、今は指揮棒に着いていくしかないのですからアンサンブルが混乱に陥るのは当然です。まあ、オケにしてみれば必死という感じでしょう。

そう言えば、クラウスが唯一、言うことを聞いた存在であったリヒャルト・シュトラウスは、オペラの上演中に今のテンポでは約束をしていたカードゲームの時間に間に合わないことに気づいて一気にテンポを上げて約束の時間に間に合わせたというエピソードが残っています。
まあ、真偽のほどは定かではありませんが、カードゲームが何よりも好きだったシュトラウスならばそんな事もあるだろうと思わせるエピソードです。

しかし、クラウスの気質から言えば己の趣味を満足させるために音楽を犠牲にするなどと言うことは考えられませんし、いくら尊敬すべき存在であるシュトラウスといえども、そんなところを真似る人とも言えません。
まさかオシッコがもれそうになったとか言う生理的問題が原因だったのでしょうか(^^;

まあ、何とも言えず不思議な演奏であることは間違いありません。

Youtubeチャンネル登録

古い録音が中心ですがYoutubeでもアップしていますので、是非チャンネル登録してください。

関連コンテンツ

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



4641 Rating: 4.0/10 (28 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント

2021-06-21:joshua


2021-06-28:アドラー





【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2023-05-30]

リスト:ハンガリー狂詩曲第13番~第15番(Liszt:Hungarian Rhapsody No.13 in A minor/Hungarian Rhapsody No.14 in F minor/Hungarian Rhapsody No.15 in A minor)
(P)サンソン・フランソワ:1953年10月2日,8日&11月16日,26日&12月13日 1954年1月15日&3月29日~30日録音(Samson Francois:Recorded on October 2,26&November 16,26&December 13, 1953 and January 15&& March 29-30, 1954)

[2023-05-29]

ショパン:ワルツ(第5番) 変イ長調, Op.42(Chopin:Waltzes No.5 In A-Flat, Op 42)
(P)アルトゥール・ルービンシュタイン:1963年3月25日録音(Arthur Rubinstein:Recorded on June 25, 1963)

[2023-05-29]

ショパン:3つのワルツ(第6番~第8番), Op.64 (Chopin:Waltzes, Op.64)
(P)アルトゥール・ルービンシュタイン:1963年3月25日録音(Arthur Rubinstein:Recorded on June 25, 1963)

[2023-05-28]

ベルリオーズ:幻想交響曲 作品14(Berlioz:Symphonie fantastique in C minor, H 48)
ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック 1957年2月14日録音(Dimitris Mitropoulos:New York Philharmonic Recorded on February 14, 1957)

[2023-05-27]

モーツァルト:交響曲第40番 ト短調, K.550(Mozart:Symphony No.40 in G minor, K.550)
ハンス・クナッパーツブッシュ指揮:ウィーン・フィルハーモニ管弦楽団 1941年11月9日録音(Hans Knappertsbusch:Vienna Philharmonic Orchestrar Recorded on November 9, 1941)

[2023-05-26]

ロッシーニ:歌劇「アルジェのイタリア女」序曲(Rossini:l`italiana In Algeri Overture)
ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団 1967年5月5日録音(George Szell:Cleveland Orchestra Recorded on May 5, 1967)

[2023-05-25]

ベートーヴェン:魔笛の主題による7つの変奏曲, WoO 46(Beethoven:Variations in E-Flat Major on Bei Mannern, welche Liebe fuhlen from Mozart's Die Zauberflote, WoO 46)
(Cell)ルートヴィヒ・ヘルシャー:(P)エリー・ナイ 1956年録音(Ludwig Hoelscher:(P)Elly Ney Recorded on 1956)

[2023-05-24]

バッハ :平均律クラヴィーア曲集 第1巻, BWV 858‐BWV 863(Bach:The Well-Tempered Clavier Book1, BWV 858‐BWV 863)
(Cembalo)ラルフ・カークパトリック:1962年5月15日~7日&6月15日~27日録音(Ralph Kirkpatrick:Recorded on May 12-26 & June 15-27, 1962)

[2023-05-23]

ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58(Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58)
(P)ギオマール・ノヴァエス:オットー・クレンペラー指揮 ウィーン交響楽団 1951年6月9日~11日録音(Guiomar Novaes:(Con)Otto Klemperer Vienna Symphony Orchestra Published in June 9-11, 1951)

[2023-05-22]

リヒャルト.シュトラウス:メタモルフォーゼン(Richard Strauss:Metamorphosen, Studie fur 23 Solostreicher)
ヤッシャ・ホーレンシュタイン指揮 フランス国立放送管弦楽団 1964年4月録音(Jascha Horenstein:Orchestre national de la radiodiffusion Francaise Recorded on April, 1964)