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クレメンス・クラウス(Clemens Krauss)|ハイドン:交響曲第31番「ホルン信号」 ニ長調 Hob.I:31
ハイドン:交響曲第31番「ホルン信号」 ニ長調 Hob.I:31
クレメンス・クラウス指揮:ウィーン交響楽団 1929年録音
Haydn:Symphony No.31 in D major "Hornsignal", Hob.I:31 [1.Allegro]
Haydn:Symphony No.31 in D major "Hornsignal", Hob.I:31 [2.Adagio]
Haydn:Symphony No.31 in D major "Hornsignal", Hob.I:31 [.Minuet - Trio]
Haydn:Symphony No.31 in D major "Hornsignal", Hob.I:31 [4.Finale. Moderato molto with 7 variations - Presto]
新しいホルン奏者が就任したことを歓迎
![](../Jacket_record/Clemens_Krauss/Clemens_Krauss_1.jpg)
この作品はエステルハージ家のオーケストラに新しいホルン奏者が就任したことを歓迎するために作曲されたものと考えられています。どういう理由によるのかは分かりませんが、その時オーケストラには4人のホルン奏者がいたことになるそうです。
とは言っても、まさか4冠編成のオーケストラになるはずはないので、今の感覚からすればこぢんまりとしたオーケストラの中にホルン奏者だけが4人も存在したのです。
ただし、そう言う「異常?」な編成は少しの間だけだったのですが、その異常な状態を上手く利用してその限られた期間に4本のホルンを必要とする作品をハイドンは書いています。その中でも特筆すべきがこの「ホルン信号」という「あだ名」がついている31番の交響曲です。言うまでもないことですが、この「ホルン信号」というタイトルはハイドン自身にはあずかり知らぬもので、19世紀に入ってからいつの間にかこの呼び名が流布したようです。
第1楽章は新しく就任したホルン奏者の腕前を披露すべく4本のホルンの響きで始まります。その後も、至るところでホルンのソロが用意されているので、いってみれば協奏交響曲のような雰囲気になっています。
さらに言えば、すでにオーケストラのメンバーとなっている奏者の腕前も披露するために終楽章は変奏曲形式を用いて、そこで多くの楽器のソロが披露できるようにもしています。
まさにエステルハージ家の楽長としてのハイドンの気配りと実力が遺憾なく発揮された作品だと言えます。
今の時代においても全く古さを感じさせない
1929年の録音と言えばまさに「化石時代」の録音です。しかし、これが聞いてみると、実に良好な音質であり、音楽を楽しむには何の問題もないレベルなので驚かされます。
そして、そう言う音質で「古き良き」時代の響きが堪能できるのですからこれほど嬉しいことはありません。
そして同時に、それまではニューイヤー・コンサートでのシュトラウス作品くらいでしかクレメンス・クラウスという指揮者を認識していた先入観を根本から改めなければいけないことにも気づかされました。それは、余り大きな期待も抱かずに、いってみれば資料を確認するようにして聴いた彼のベートーベンの田園を聞いたときにも感じたのですが、その時の直感は決して間違いではなかったことに少しずつ確信が持ててきました。
クレメンス・クラウスと言えば常に「貴族的指揮者」というイメージがつきまといます。
確かに彼は、バレエ・ダンサーである母親と、恐れを知らない奔放な騎手を父として生まれました。そして、その母の父親は著名な外交官であり、父方もまた有名な資産家でした。つまりは極めて恵まれた環境の中で自由に育った両親の間に生まれたのがクラウスだったのです。そう言う環境で育ったからでしょうか、彼は自分の信念というものを絶対に曲げない人物だったそうです。
そして、その態度は例え高い地位にある人物であっても全く変わることはなかったので、それへの中傷として彼の秀でた容姿や育ちなどをあげつらって「貴族的な自惚れ」と批判され、その事が大きな要因となって負の意味も込めて「貴族的指揮者」というイメージが一人歩きしてしまったようなのです。
しかし、そう言う一面はあったものの、それはあくまでも音楽への誠実さのあらわれであり、その証拠として彼のリハーサルは常に入念をきわめたことは余り知られていません。そして、その「入念」さが時には軋轢を生じることもあって、それが上で述べたような中傷にもつながったようなのです。
とは言え、彼は間違っても雰囲気だけで音楽を流す人ではありませんでした。それは、この29年の録音が良好なこともあって、リズムの処理や声部のバランスなどが完璧にコントロールされていることがよく分かります。そして、そこにウィーン・フィルやウィーン響の持つ響きの美質を最大限にひきだしているのです。
戦後になると、かなり自由な雰囲気で演奏することもあったようなのですが、戦前の若き時代は形式感と勢いを見事にバランスさせた、今の時代においても全く古さを感じさせない音楽を演奏した人だったようです。
なお、ハイドンの交響曲第31番「ホルン信号」 には2カ所ほど大きく音が歪む部分があるのですが、音楽的には非常に魅力のある響きなので残念と言えば残念です。
この演奏を評価してください。
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- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
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よせられたコメント
2021-06-21:コタロー
- この曲のファースト・コンタクトは中3の頃でした。ひょんなことから「ホルン音楽の魅力」(タイトルの記憶は定かではありませんが)のようなレコードを購入して、そのA面にこの曲が入っていたのです。今となっては指揮者名も忘れてしまいましたが、結構面白い音楽だと感じて聴いていました。
ひるがえって、このサイトでゴバーマンのハイドンの一連の交響曲がアップされたとき、この曲は残念ながらアップされませんでした。
半ば諦めかけたときに、何とクラウス指揮の90年以上も前の録音がアップされたのです。
大きなノイズが入る部分がありますが、音質は総じて明瞭です。何といっても当時のホルンの古色蒼然とした音色が満喫できるのが魅力です。クラウスの指揮は思いのほか颯爽とした仕上がりですね。
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