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ミュンシュ(Charles Munch)|プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」 Op.64(第1組曲~第3曲より抜粋)
プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」 Op.64(第1組曲~第3曲より抜粋)
シャルル・ミュンシュ指揮:ボストン交響楽団 1957年2月11日,13日録音
Prokofiev:Romeo and Juliet(from Suites1~Suites3) [1.Suite1,No.2:Scene]
Prokofiev:Romeo and Juliet(from Suites1~Suites3) [2.Suite3,No.2:Morning Dance ]
Prokofiev:Romeo and Juliet(from Suites1~Suites3) [3.Suite2,No.2:The Young Juliet
Prokofiev:Romeo and Juliet(from Suites1~Suites3) [4.Suite1,No.5:Masks]
Prokofiev:Romeo and Juliet(from Suites1~Suites3) [5.Suite2,No.1:The Montagues and Capulets]
Prokofiev:Romeo and Juliet(from Suites1~Suites3) [6.Suite2,No.4:Dance]
Prokofiev:Romeo and Juliet(from Suites1~Suites3) [7.Suite2,No.3:Friar Laurence]
Prokofiev:Romeo and Juliet(from Suites1~Suites3) [8.Suite1,No.7:Death of Tybal
Prokofiev:Romeo and Juliet(from Suites1~Suites3) [9.Suite2,No.5:Romeo and Juliet Before Parting
Prokofiev:Romeo and Juliet(from Suites1~Suites3) [10.Suite3,No.5:Morning Serenad
Prokofiev:Romeo and Juliet(from Suites1~Suites3) [11.Suite2,No.7/Suite3,No.6:Romeo at Juliet's Grave/The Death of Juliet]
ロマンティシズムに回帰した深い叙情性は際だっている

シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」は彼の初期作品であり、その後の作品と較べてみれば人間の本質に深く切り込んでいくような深みはないかもしれません。しかし、作品が持つ分かりやすい悲劇性と叙情性が多くの作曲家の創作意欲をかき立てるようで、実に多くの作品化が為されています。
当然の事ながら、多くのオペラ作品としても取り上げられていますし、交響曲や管弦楽曲としても数多く取り上げられています。説くに有名なのはベルリオーズの劇的交響曲「ロメオとジュリエット」やチャイコフスキーの幻想序曲「ロメオとジュリエット」あたりでしょうか。しかし、そう言う「ロミオとジュリエット」関連作品の中でまず第一に指を折らなければいけないのはこのプロコフィエフによるバレエ音楽「ロミオとジュリエット」でしょう。
まず作品の規模が大きいと言うだけでも凄いのですが、モダニズムを捨ててロマンティシズムに回帰したプロコフィエフならではの深い叙情性は際だっています。
そして。この作品はプロコフィエフの大きな転換点に位置しているということでも大きな意味を持っています。
ロシア革命によって祖国を離れたプロコフィエフですが、アメリカからパリへと活動の拠点を移しながら、ついにはそう言う生活に倦んだのかどうかは分かりませんが祖国への復帰を決意します。そして、その事はモダニズムを捨ててと言うか、精算してと言うか、誰の耳にも分かりやすいロマンティックな作風へと回帰することを意味しました。
もちろん、そう言う回帰を否定的にとらえる人も多いのですが、その転換点に位置するこのバレエ音楽「ロミオとジュリエット」を聞けば、そんなに簡単に否定できないこともまた事実です。
ここではロメオとジュリエットの控えめで慎ましい愛と、それとは対照的な中世的なしがらみが持つ深い闇とが描き出されています。
そして、とりわけ注目すべきはおどおどとした幼い少女だったジュリエットが、やがては愛のためには死をも恐れぬ情熱的で強い女性へと変貌していく姿が描かれていることです。そして、その様なジュリエットが中世の底知れぬ深い闇に取り囲まれていることを見事に描き出さしています。
なお、作品は以下の場面で構成されています。
第1幕
前奏曲
- 第1場:ヴェロナの町の広場
- 間奏曲
- 第2場:キャピレット家のジュリエットの控えの間
- 第3場:キャピレット家の外
- 第4場キャピレット家の舞踏会場
- 第5場ジュリエットのバルコニー
第2幕
- 第1場:ヴェロナの町の広場
- 第2場:教会
- 第3場:街の広場
- 第2幕の終曲
第3幕
- 前奏曲
- 第1場:ヴェロナの町の広場
- 第2場:ジュリエットの寝室
- 間奏曲
- 第3場:教会
第4幕
- エピローグ:キャピレット家の地下墓室
なお、作曲家自身によって3つの組曲が編纂されています。そこに収録されている音楽は以下の通りです。
ロメオとジュリエット組曲 第1番 作品64a
- 第1曲:群衆の踊り
- 第2曲:ある場面
- 第3曲:マドリガル
- 第4曲:メヌエット
- 第5曲:仮面
- 第6曲:ロメオとジュリエット
- 第7曲:タイボルトの死
ロメオとジュリエット組曲 第2番 作品64b
- 第1曲:モンターギュー家とキャピュレット家
- 第2曲:少女ジュリエット
- 第3曲:僧ローレンス
- 第4曲:踊り
- 第5曲:別れの前のロメオとジュリエット
- 第6曲:アンティル諸島から来た娘たちの踊り
- 第7曲:ジュリエットの墓の前のロメオ
ロメオとジュリエット組曲 第3番 作品64c
- 第1曲:噴水の前のロメオ
- 第2曲:朝の踊り
- 第3曲:ジュリエット
- 第4曲:乳母
- 第5曲:朝の歌
- 第6曲:ジュリエットの死
ミンシュ自身が選び出した「新しい組曲」になっている
ミンシュとプロコフィエフとの交流については一度ふれたことがあります。
意外と知られていないのですが、若いころのミンシュは積極的に同時代の音楽を取り上げていました。ルーセル、オネゲル、ミヨーというフランス人作曲家の作品だけでなく、プロコフィエフの作品も良く取り上げていました。例えば、このヴァイオリン協奏曲の第2番も1936年にソータンのヴァイオリンで演奏しています。それはスペインで行われた初演に次ぐ演奏であり、言うまでもなく、フランスにおける初演でした。
それ以外にも、1945年にモスクワで交響曲第5番が初演されたときに、それを演奏したい旨の手紙をソ連にいるプロコフィエフに送っています。そして、プロコフィエフもまたすぐにコピー譜を作ってミンシュのもとに送り届けています。
しかしながら、ボストン時代のミンシュがプロコフィエフの作品を取り上げた回数は多くありません。
もっとも有名なのはハイフェッツをソリストに迎えたヴァイオリン協奏曲第2番だと思うのですが、主役はあくまでもハイフェッツであり、ミンシュはサポート役に徹しています。
そう言う意味では、このバレエ音楽の「ロメオとジュリエット」は注目すべき録音です。
そして、何よりも注目したいのが、この組曲版は作曲家自身が編纂した3つの組曲からミンシュ自身が選び出した「新しい組曲」になっている事です。
録音クレジットには「Excerpt(抜粋)」と記されていることが多いのですが、聞けば分かるように作品全体を俯瞰できるように実に理路整然とした配列になっています。
本質的にはミンシュ編纂による「新しい組曲」と見なしてもよいものだと思われます。
ミンシュが新しく選び出した曲とその配列は以下の通りです。
- 情景(第1組曲、第2曲)
- 朝の踊り(第3組曲 第2曲)
- 少女ジュリエット(第2組曲 第2曲)
- 無言劇(第1組曲 第5曲)
- モンタギュー家とキャプレット家(第2組曲 第1曲)
- 踊り(第2組曲 第4曲)
- 僧ローレンス(第2組曲 第3曲)
- タイボルトの死(第1組曲 第7曲)
- 別れの前のロメオとジュリエット(第2曲 第5曲)
- 朝の歌(第3組曲 第5曲)
- ジュリエットの墓の前のロメオとジュリエットの死(第2組曲 第7曲/第3組曲 第6曲)
そして、演奏もまたロマンティシズムへの回帰を目指した作品に相応しくボストン響のヨーロッパ的な響きを生かして、実に重厚に、そしてこの作品が持つ悲劇性を描き出していきます。
全曲を聴き通すにはかなりの時間を要しますから、作品の概観を把握するにはピッタリの演奏です。
この演奏を評価してください。
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よせられたコメント
2021-02-07:コタロー
- 待望のプロコフィエフ「ロメオとジュリエット」の登場です。個人的には、プロコフィエフの曲はあまり得意ではありませんが、この曲は傑作だと思います。
ミュンシュのプロコフィエフは初めて聴きますが、全体に活気が漲っていて、とても良い演奏です。録音もRCAのものだけに、この時期としては優秀です。
ただ、このバレエ音楽のハイライトのひとつである、二人の深い愛を描いた「バルコニーの情景」が割愛されているのが玉にキズですね。
でも楽しく聴かせてもらいました。アップありがとうございました。
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