クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|ライナー(Fritz Reiner)|モーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」

モーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」

ライナー指揮 ピッツバーグ交響楽団 1946年録音



Mozart:交響曲第35番「第1楽章」

Mozart:交響曲第35番「第2楽章」

Mozart:交響曲第35番「第3楽章」

Mozart:交響曲第35番「第4楽章」


悩ましい問題の多い作品です。

一般的に後期六大交響曲と言われる作品の中で、一番問題が多いのがこの35番「ハフナー」です。

よく知られているように、この作品はザルツブルグの元市長の息子であり、モーツァルト自身にとっても幼なじみであったジークムント・ハフナーが貴族に列せられるに際して注文を受けたことが作曲のきっかけとなっています。
ただし、ウィーンにおいて「後宮からの誘拐」の改訂作業に没頭していた時期であり、また爵位授与式までの日数もあまりなかったこともあり、モーツァルトといえどもかなり厳しい仕事ではあったようです。そして、モーツァルトは一つの楽章が完成する度に馬車でザルツブルグに送ったようですが、かんじんの授与式にはどうやら間に合わなかったようです。(授与式は7月29日だが、最後の発送は8月6日となっている)

それでも、最終楽章が到着するとザルツブルグにおいて初演が行われたようで、作品は好評を持って迎えられました。
さて問題はここからです。
よく知られているように、ハフナー家に納品(?)した作品は純粋な交響曲ではなく7楽章+行進曲からなる祝典音楽でした。その事を持って、この作品を「ハフナーセレナード」と呼ぶこともあります。しかし、モーツァルト自身はこの作品を「シンフォニー」と呼んでいますから、祝典用の特殊な交響曲ととらえた方が実態に近いのかもしれません。実際、初演後日をおかずして、この中から3楽章を選んで交響曲として演奏された形跡があります。

そして、このあとウィーンでの演奏会において交響曲を用意する必要が生じ、そのためにこの作品を再利用したことが問題をややこしくしました。
馬車でザルツブルグに送り届けた楽譜を、今度は馬車でウィーンに送り返してもらうことになります。しかし、楽譜は既にハフナー家に納められているので、レオポルドはそれを取り戻してくるのにかなりの苦労をしたようです。さらに、7楽章の中から交響曲に必要な4楽章を選択したのはどうやら父であるレオポルドのようです。

こうしてレオポルドのチョイスによる4楽章で交響曲として仕立て直しを行ってウィーンでのコンサートで演奏されました。ところが、後になって楽器編成にフルートとクラリネットを追加された形での注文が入ったようで、時期は不明ですがさらなる改訂が行われ、これが現在のハフナー交響曲の最終の形となっています。
つまりこの作品は一つの素材を元にして4通りの形(7楽章+行進曲・3楽章の交響曲・4楽章の交響曲・フルート・クラリネットが追加された4楽章の交響曲)を持っているわけす。
一昔前なら、最後の形式で演奏することに何の躊躇もなかったでしょうが、古楽器ムーブメントの中で、このような問題はきわめてデリケートな問題となってきています。とりわけ、フルートとクラリネットを含まない方に「この曲にぼくは全く興奮させられました。それでぼくは、これについてなんら言う言葉も知りません。」と言うコメントをモーツァルト自身が残しているのに対して、フルートとクラリネットありの方には何のコメントも残っていないことがこの問題をさらにデリケートにしています。

やはり今後はフルートとクラリネットを入れることにはためらいが出てくるかもしれません。


何も足さない、何も引かない

ライナーとモーツァルトというのはミスマッチなような気がするのですが、これは実に立派な演奏です。とにかく音の輪郭線が明確でクリアです。
昔ウィスキーのコマーシャルで、「何も足さない、何も引かない」というキャッチコピーがありましたが、まさにその言葉ピッタリの演奏です。

実はモーツァルトというのは意外とストライクゾーンの狭い作曲家です。彼自身は自由闊達にふるまっていながら、独自のスタイルは絶対に崩しません。ですから、作品に漂う自由さにつられて少しでも恣意的なふるまいをすると、とたんに音楽全体が台無しになってしまう怖さを持っています。

モーツァルトをこのように演奏できる人はそういるものではありません。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



43 Rating: 4.4/10 (207 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント




【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-10-14]

ワーグナー;神々の黄昏 第3幕(Wagner:Gotterdammerung Act3)
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)

[2025-10-13]

ワーグナー;神々の黄昏 第2幕(Wagner:Gotterdammerung Act2)
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)

[2025-10-12]

ワーグナー;神々の黄昏 第1幕(Wagner:Gotterdammerung Act1)
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)

[2025-10-11]

ワーグナー;神々の黄昏 プロローグ(Wagner:Gotterdammerung Prologue )
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)

[2025-10-08]

ベートーベン:交響曲第5番 ハ短調 「運命」 作品67(Beethoven:Symphony No.5 in C minor, Op.67)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年8月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on August, 1961)

[2025-10-06]

エルガー:交響的習作「フォルスタッフ」, Op.68(Elgar:Falstaff Symphonic Study, Op.66)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1964年6月1日録音(Sir John Barbirolli:Halle Orchestra Recorded on June 1, 1964)

[2025-10-04]

ブラームス:弦楽四重奏曲 第3番 変ロ長調 Op.67(Brahms:String Quartet No.3 in B-flat major, Op.67)
アマデウス弦楽四重奏団 1957年4月11日録音(Amadeus String Quartet:Recorde in April 11, 1957)

[2025-10-02]

J.S.バッハ:幻想曲 ハ短調 BWV.562(Bach:Fantasia and Fugue in C minor, BWV 562)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)

[2025-09-30]

ベートーベン:合唱幻想曲 ハ短調 Op.80(Beethoven:Fantasia in C minor for Piano, Chorus and Orchestra, Op.80)
(P)ハンス・リヒター=ハーザー カール・ベーム指揮 ウィーン交響楽団 ウィーン国立歌劇場合唱団 (S)テレサ・シュティヒ=ランダル (A)ヒルデ・レッセル=マイダン (T)アントン・デルモータ (Br)パウル・シェフラ 1957年6月録音(Hans Richter-Haaser:(Con)Karl Bohm Wiener Wiener Symphoniker Staatsopernchor (S)Teresa Stich-Randall (A)Hilde Rossel-Majdan (T)Anton Dermota (Br)Paul Schoffler Recorded on June, 1957)

[2025-09-28]

エルガー:コケイン序曲 Op.40(Elgar:Cockaigne Overture, Op.40)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1962年5月9日&8月27日録音(Sir John Barbirolli:The Philharmonia Orchestra Recorded on May 9&August 27, 1962)