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ビゼー:「アルルの女」第1組曲&ファランドール(第2組曲)

ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団 1966年1月25日~26日録音



Bizet:L'Arlesienne Suite No.1 [1.Prelude]

Bizet:L'Arlesienne Suite No.1 [2.Menuet]

Bizet:L'Arlesienne Suite No.1 [3.Adagietto]

Bizet:L'Arlesienne Suite No.1 [4.Carillon]

Bizet:L'Arlesienne Suite No.2 [5.Farandole]


編成を変えて大成功

この作品はアルフォンス・ドーテの戯曲「アルルの女」の劇附随音楽として作曲されました。戯曲の方は大成功を収めアルフォンス・ドーテの名声を不動のものにしたそうです。残念ながらフランス文学には至って暗いので、アルフォンス・ドーテという名を聞かされても全くピントこないのですが、そちらの世界ではなかなかに有名な人らしいです。
ただ、ビゼーが必死の思いで作曲した方の音楽はあまり評判がよくなかったという話が伝わっています。

理由ははっきり分からないのですが、どうも「アルルの女」を上演した劇場のオーケストラが小編成で技術的にも問題があったのではないかと推測されています。
しかし、作曲をしたビゼーの方はこの作品に絶対の自信を持っていたようで、全27曲の中からお気に入りの4曲を選んで演奏会用の組曲に仕立て直しました。これがアルルの女の第1組曲です。劇判音楽の方はいびつな小編成のオケを前提としていましたが、組曲の方は通常の2巻編成のオケを前提として編曲がなされています。
そして、ビゼーの死後、親友のギローが新たに4曲を選んで(有名な第3曲のメヌエットは「美しいパースの女」からの転用)組曲にしたのが第2組曲です。
この組曲の方はビゼーの死後に発表されて大好評を博しました。
<第1組曲>

  1. 第1曲:「前奏曲」

  2. 第2曲:「メヌエット」

  3. 第3曲:「アダージェット」

  4. 第4曲:「カリヨン」


<第2組曲>

  1. 第1曲「パストラール」

  2. 第2曲「間奏曲」

  3. 第3曲「メヌエット」

  4. 第4曲「ファランドール」




このコンビが成し遂げた偉業の凄みをひしひしと感じてしまう

このグリーグの「ペール・ギュント組曲」とビゼーの「アルルの女組曲」もすでにパブリック・ドメインになっていました。1966年に「Two Favorite Suites」というタイトルのアルバムがリリースされていました。
しかし、この2つの組曲の選曲の仕方がいささか変わっています。

まずはグリーグの方なのですが以下のようになっています。

  1. 前奏曲「朝の気分」 第4幕の前奏曲(No.13)

  2. 「オーゼの死」 第3幕前奏曲・第3幕第4場(No.12)

  3. 「アニトラの踊り」 第4幕第6場(No.16)

  4. 「ソルヴェイグの歌」 第5幕第5場(No.23)[第2組曲より]

  5. 「山の魔王の宮殿にて」 第2幕第6場の開始(No.8)


つまりは、第1組曲の「アニトラの踊り」と「山の魔王の宮殿にて」の間に、第2組曲に含まれる「ソルヴェイグの歌」を挟み込んでいるのです。
ビゼーの「アルルの女組曲」も同じようにいささか変則的で、第1組曲の最後に第2組曲の最終曲である「ファランドール」を追加しているのです。

  1. 前奏曲

  2. メヌエット

  3. アダージェット

  4. カリヨン

  5. ファランドール(第2組曲)


つまりは、両方ともに第1組曲をベースにしながら、第2組曲に含まれる「一番美味しいところ」を入れ込んでいるのです。
グリーグの「ペール・ギュント組曲」は言うまでもないことですが、ビゼーの「アルルの女第1組曲」もまた作曲家自身が組曲に仕立て上げたものですから、これは明らかに「原典尊重」という大義名分から言えば明らかに逸脱行為です。そして、セルと言えば「原典尊重の鬼」みたいに言われるのですが、そう言う決めつけ方がいかに安直なものかがよく分かります。

セルにとって「原典」を尊重して完璧な演奏を目指すのはそれによってお客が喜ぶからであって、その逆ではないのです。そして、おそらくはグリーグもビゼーも第1組曲だけでは物足りなさを聞き手が感じるとセルは思ったが故に、第2組曲から美味しいところを追加したのでしょう。

そして、久しぶりにこの二つの録音を聞いてみて、60年代の後半に入るにつれて少しずつセルのスタンスに変化が起きてきたことを痛感させられました。
おかしな喩えになるのですが、この作品はフィギア・スケートに例えるならば基礎点が高い難度の高い技ではありません。おそらくは、スピンやステップのような地味な技かもしれません。
しかし、どれほど難度の高いジャンプを決めても、スピンやステップのような基本的な技を完璧にこなして加点をしていかなければ高得点は期待できません。つまりは4回転ジャンプやトリプル・アクセルだけが全てではないのです。

そして、ここでのセル&クリーブランド管による演奏は、そう言う基本的な部分が驚くほどの完成度で仕上げられているのです。それは、指の先までと言う以上に、まさにその先の爪の先まで集中力が行き届いているという感じです。それは、下手をすれば簡単に弾きとばしてしまいそうな叙情的な旋律においてこそ、その最大限の集中力が発揮されています。
そして、驚くべきは、その極限ともいえるような集中力がセルという指揮者のコントロール下のもとで為されているのではなくて、まるでクリーブランド管のメンバー一人ひとりの自主性によって成し遂げられているように聞こえることです。

もちろん、だからといってセルが何もしていないわけではありません。おそらくは、定期演奏会と、そのあとに行われたであろうこの録音のために入念なリハーサルは繰り返されたはずです。にも関わらず、クリーブランド管はその驚くほどの完成度の高い演奏を自らの意志によって成し遂げているように錯覚させるまでの完成度に達しているのです。

そして、こういうグリーグやビゼーの作品を「何ということもない小品」と言えば失礼だとは思うのですが、それ故にこそこのコンビが成し遂げた偉業の凄みをひしひしと感じてしまうのです。

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