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シルヴェストリ(Constantin Silvestri) |リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲 Op.34
リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲 Op.34
コンスタンティン・シルヴェストリ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1959年2月17日,18日&20日~23日録音
R_Korsakov:Capriccio espagnol in A major, Op.34 [1.Alborada]
R_Korsakov:Capriccio espagnol in A major, Op.34 [2.Variazioni]
R_Korsakov:Capriccio espagnol in A major, Op.34 [3.Alborada
R_Korsakov:Capriccio espagnol in A major, Op.34 [4.Scena e canto gitano]
R_Korsakov:Capriccio espagnol in A major, Op.34 [5.Fandango asturiano]
古今東西の数ある管弦楽曲の中の最高傑作の一つ
もともとはヴァイオリンのコンチェルト風の音楽として着想された作品ですが、最終的にはヴァイオリン独奏をふんだんに盛り込んだ輝かしいオーケストラ曲として完成されました。構成上は5楽章からなるんですが、連続して演奏されるために単一の管弦楽曲のように聞こえます。ただ、それぞれの楽章はホセ・インセンガなる人の手になるスペイン民謡集から主題が借用されていて(手を加えることもなく、そっくりそのまま!!)、その主題をコルサコフが自由に展開して仕上げる形をとっていますので、5楽章というのはそれなりに意味を持っていると言えます。
第1楽章:アルポラーダ(朝のセレナード)::スペインの輝かしい朝を思わせる派手な音楽です。
第2楽章:変奏曲(夕べの踊り)::第1楽章とは対照的な夕べの穏やかな雰囲気がただよう音楽です。
第3楽章:アルボラーダ::第1楽章と同じ主題ですが、半音高い変ロ長調で演奏され、オーケストレーションも変えられています。(ヴァイオリンとクラリネットが入れ替わっている・・・等)
第4楽章:ジプシーの歌::小太鼓の連打にヴァイオリンの技巧的な独奏とジプシー情緒満点の音楽です。
第5楽章:ファンダンゴ::カスタネットやタンブリンの打楽器のリズムに乗って情熱的な踊りが展開されます。フィナーレはまさに血管ブチ切れの迫力です。
おそらく、古今東西の数ある管弦楽曲の中の最高傑作の一つでしょう。この曲の初演に当たって、練習中の楽団員からたびたび拍手がわき起こってなかなか練習が進まなかったというエピソードも残っているほどです。
チャイコフスキーもこの作品を取り上げて「作曲者自身が現代一流の音楽家であると自認して良いほどの素晴らしい管弦楽法を見せる」と絶賛しています。
こういう作品を前にすると「精神性云々・・・」という言葉は虚しく聞こえるほどです。クラシック音楽を聞く楽しみの一つがこういう作品にもあることをマニアックなクラシック音楽ファンも確認する必要があるでしょう。
オケの流れに対して絶対にさからわない
シルヴェストリという指揮者は1963年にイギリスのボーンマス交響楽団の首席指揮者に就任するまではこれと言ったポジションを手に入れることは出来ませんでした。にも関わらず、50年代から60年代にかけてかなり多くの録音を残しています。そして、その録音の相手はウィーンフィルやフィルハーモニア管などと言う極めてメジャーなオケを相手にしたものでした。
また、コンセルヴァトワールとの録音も多く、そこもまた色々と問題はあってもフランスではトップのオーケストラであったことは間違いありません。
これだけのオケを相手に録音を任されたというのは、指揮者としての能力をレーベルが認めていたと言うことです。
しかしながら、その担当した作品を眺めてみると、レーベル側にとってはカタログの欠落を補うために「便利」に利用した雰囲気は拭いきれません。彼が、任される作品はドイツ・オーストリア系のメジャーな作品ではなく、取りらかと言えばレーベルの看板となっているマエストロたちがあまりやりたがらないような作品が中心なのです。
そして、彼が便利に重用された理由として、そう言うメジャーなオーケストラが持っているプライドのようなものを悪戯に刺激しないというスタイルを持っていたことも重要なポイントだったのかもしれません。
そう言うシルヴェストリの特徴がよくあらわれているのが、ともに1959年にウィーンフィルと録音したラヴェルの「スペイン狂詩曲」とリムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」です。
率直に言ってこの二つの演奏は対照的です。
リムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」の方は、率直に言ってかなり変です。この作品に関して言えば、ドラティ&ロンドン交響楽団による1959年盤かセル&クリーブランド管弦楽団による1958年盤あたりが最もスコアに忠実でスタンダードな演奏だと言っていいでしょう。とりわけドラティ盤は数あるMercury録音の中でも特筆ものの優秀さですから、そう言う録音とこのウィーンフィルとの録音を聞き比べてみれば、独奏ヴァイオリンにも癖がありますし、金管群は好き勝手に鳴っているように聞こえますし、演奏全体が妙にノリが良くてリズムなんかも好き勝手な感じがします。
しかし、それはシルヴェストリの指揮に問題があるのではなくて、こういう東欧やロシアのスラブ系の音楽を演奏するときのウィーンフィルの「癖」みたいなものがまともに出てしまっているように思われるのです。通常の指揮者ならば、そう言う好き勝手に対してある程度はコントロールを効かせようとするのですが、シルヴェストリはそう言うオケの流れに対して絶対に否定的な態度は取らず、その流れの中で最善を尽くします。
おそらく、そう言う姿勢故に、便利な指揮者としてレーベルから重宝されたのかもしれません。
しかし、変な話ですが、オケがここまで好き勝手をやっていながら、全体としては極めてノリがよい音楽としてまとめしまうのは並大抵のスキルではありません。
そして、一転して作品がラヴェルの「スペイン狂詩曲」になると、今日はシルヴェストリに協力してやろうかという雰囲気がただよいます。詳しく調べたわけではないのですが、ウィーンフィルによるラヴェル作品というと90年代にマゼールと録音したものくらいしか思い浮かびません。それから、調べるとフルトヴェングラーと1951年に「スペイン狂詩曲」を演奏していました。
とにかく、ウィーンフィルにとってはあまり経験のある作品ではないので、基本的にはシルヴェストリの指揮に追随しているのです。そうなれば、彼はウィーンフィルの魅力的な音色をフルに活用して、この上もなく色気ただよう真っ当な音楽に仕立て上げてしまうのです。おそらく、ラヴェルの管弦楽曲というのは精緻に出来ているので、その精緻さに焦点を当てて、結果としてあまり面白くない音楽になってしまうことが多いのですが、これはそう言うスカスカ感は微塵もありません。
そして、きっとこの日もシルヴェストリはウィーンフィルには自由にやらせているように振る舞いながら、決めるべきところは決めて自分がイメージする理想的なラヴェル像を描き出しているのです。
それにしても、これだけの高い能力を持った指揮者が1963年になるまで特定のポストを持てなかったというのは、実にもって不思議な話です。それとも、そう言う特定のポストを彼は意図的に避けていたのでしょうか。その辺のところは私には分からないのですが、実にもっておかしな話です。
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